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8.証拠探しと推理

 「それで、イリスはどこに行きたいんだ?」


「私が行きたいのは、このマンションのごみ捨て場です!こっちですね。」


 マンションの入り口から見て右側に住人がゴミ捨て場としている大きいコンテナがあった。今日はまだ回収されておらず、おそらくここあるのは最近、1、2日のゴミだろう。


 「ここで何を探すんだ?」


「証拠ですよ。証拠!証拠探しはまずゴミからっていうじゃないですか。」


初耳中の初耳だが・・・。


「何か見つからないかなーと思ったんですよ。」


 そういってイリスは手袋をはめ、捨ててあるゴミ袋をあさり始めた。


 「ここに無かったらほかのゴミ捨て場も確認しますよ。ゴミ収集車が来る前に先輩も早く手伝ってください!」


「証拠って言ったって、検討がつかないぞ?」


「証拠っぽいものはキープしてください。とにかくいろんな可能性を考えましょう!」


 一人で張り切っているが、全然ついていけない。なぜ俺はこんなことをしなくてはいけないんだ。


 心を無にし、自主禅問答をしながらとにかくゴミをあさった。今なら悟りが開けそうだ。


 15分ほどゴミをあさっていると


「先輩!これ!」


イリスが何かを見つけたらしい。そんなに簡単に見つかるものだろうか。


 「見てくださいこれ!」


意気揚々としたイリスが俺に見せたものは小さい薬のパッケージのようだ。中身は入っている。


 「・・・薬だな。」


「このパッケージ見覚えないですか?これは山下さんの部屋にあった睡眠薬ですよ。さっき私、あの部屋には睡眠薬が置かれていましたが、睡眠薬を飲んだ形跡がないといいましたよね?予想的中でした。この睡眠薬は飲まれていません。殺人で間違いなさそうですね。」


「だが、遺体からは睡眠薬を飲んだ形跡が出ているんだろ?それはどう説明する?」


「殺した人が睡眠薬を用意してそれを飲ませ、眠ったところを吊るしたんですよ。本人の睡眠薬を使ったと思わせられれば自殺と判断されることを計算してね。」


 さらにイリスは俺を指さして言った。


「私わかっちゃいました!」


「・・・何がだ?」


「この事件の犯人とその手口です!」


イリスは左手をパーにして続けた.


「この事件を組み立てるための要素は5つ。一つ目は密室は必ずしも密室ではなかったこと、二つ目は証拠隠滅の能力、三つ目はベランダで死んでいたカラス、四つ目はゴミ捨て場に捨ててあった睡眠薬、五つ目は犯人がついている大きな嘘。」


 息を大きく吸ってイリスは言った。


「事件を、再構成しました。」


 「お、おい、犯人が分かったのか?」


「はい!間違いありません!私はちょっと鑑識に用があるので、先輩は捜査一課の人たちと506号室の川村さん、管理人の上野さん、202号室の西山さん、あと元交際相手の篠原さんを505号室に集めておいてください!」


 そういってイリスは薬が出てきたゴミ袋を持って、マンションの中に向かって走り出した。


 「おい、ちょっと待て!俺が容疑者候補の人たちを集めるは100歩譲って良いとして、西山さんは出社しているぞ!」


「じゃあこの場に呼んでください!西山さんはここから15分の〇〇ビルで働いています!さっき話した時、カバンの中の入館証が見えました!」


 イリスは少し後ろに振り返り、そういってから走っていった。


 無茶苦茶な注文を告げられたが、そもそもあいつは本当に犯人がわかったのだろうか?それらしいことを言ってはいたが、それだけで犯人が分かるのか?


 とりあえず西山さんの職場を目指して歩きながら、イリスが言っていたことを頼りに俺も考えてみた。


 ・密室は必ずしも密室ではなかった

 ・証拠隠滅の能力

 ・ベランダで死んでいたカラス

 ・ゴミ捨て場に捨ててあった睡眠薬

 ・犯人がついている大きな嘘


以上が事件を解決するためのヒントだと言っていた。そして容疑者候補は、第一発見者である506号室住人の川村さんと管理人の上野さん。会社の同僚である西山さん。元交際相手の篠原さん。


 一つ目のヒントから考えるとやはり合鍵の存在だろうか?遺体発見時、505号室の部屋の鍵が玄関の靴箱の上に置かれていたことから、犯人は合鍵を持っている可能性が高い。管理人の上野さんと元交際相手の篠原さんは合鍵を持っている。しかしこの二人はこの町の出身ではなく、能力を持っていない。だが、5つ目のヒントである「犯人がついている大きな嘘」というのを考えると能力を持っているにも関わらず、能力を持っていないと嘘をついている可能性も出てくる。


 さっきまでは調べればここ出身かどうかはわかると思っていたが、「犯人がついている大きな嘘」の「大きな」という言葉を信じれば、経歴詐称ということもあり得なくはない。能力不所持の偽造が可能であれば、すでに能力を持っている506号室の川村さんを除く3人の誰もが「証拠隠滅の能力」を持ちうる。


 そして四つ目のヒントであるゴミに捨ててあった睡眠薬。これはマンションの敷地内に捨ててあったため、元交際相手の篠原さんは除外される。ということは合鍵のことも含めると消去法で犯人は管理人か?西山さんは会社関係で動機はあるかもしれないが、合鍵を持っていない。いや、犯行現場が山下さんの部屋で、マンションの敷地内だとすると篠原さんが殺害し、睡眠薬を飲んで自殺したように見せかけるために山下さんの睡眠薬を一部盗み、マンションのゴミ捨て場に廃棄した可能性もある。


 ここまで3つ目のヒントを飛ばして考えてきたが、それは「ベランダで死んでいたカラス」が最も難解だからだ。もしかしたらここに密室の謎があるのかもしれない。ベランダから侵入したとか・・・?いや、どっちにしても出る時には窓の鍵を閉めなくてはいけないし、窓が開いていたら警察だって不審に思うだろう。ダメだ。ベランダのカラスについては全くわからない。


 心理的な側面からも考えてみるか。


 手口はおそらく、睡眠薬を山下さんに飲ませ、眠ったところを吊るし、殺害したのだろう。犯行現場は山下さんの部屋。つまり、山下さんは犯人を部屋に招き入れたことになる。少なくとも心を許した相手だ。山下さんは元交際相手の篠原さんを部屋に入れるだろうか?可能性は少ないが、管理人の上野さんよりはありそうだ。


 会社の同僚である西山さんも部屋にはいれる可能性は十分にある。506号室の川村さんも女性であるため、男性よりは警戒がないだろう。隣人というのもあり、実際は交流があったのかもしれない。


 だが、この女性2人は合鍵を持っていないため、部屋に入れたとしても、殺害後に部屋から出て、鍵を閉めることは不可能だ。ここまでのことを踏まえると元交際相手の篠原さんが最も現実的か。


 そう考えているうちに西山さんが働く建物に着いた。


 面倒な役回りになってしまった・・・。


 ここから俺は1時間かけて容疑者候補と捜査一課の連中を505号室に集めた。


ここまでの話の中でヒントは全て出ました。

この作品はフェアに書いたつもりです。この次から始まる解決編では新しい情報は出てきません。

文章中に書かれていることから事件の犯人を推理してみてください。

読者への挑戦です。

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