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4.聞き込み①

 1階の管理人室を訪ねると、50代くらいのガタイのいい男性が現れた。


 「このマンションの管理人の上野です。なんでしょうか?」


油断をするとイリスが出しゃばりそうなので慌てて俺が警察手帳を見せながら


「警察の者ですが、ちょっとお話いいですか?」


と言った。イリスは後ろでふくれっ面になっている。


 「先ほど刑事さんに色々話しましたが・・・。」


「すみません。改めて、今朝のことを聴きたくて。」


「はあ。わかりました。

 朝・・・といっても夜中ですね3時くらいでした。寝ていた私のところに、506号室の川村さんが訪ねてきて。そりゃあもうすごい慌てていましたよ。『505号室の山下さんが死んでいるかもしれない!』って、インターホンも鳴らしていましたし、ドアもどんどんノックしていて、飛び起きましたよ。」


「ちょっと待ってください。夜中3時に管理人さんのところに訪ねてって・・・。ここに住んでいるんですか?」


「ええ。私がこのマンションを経営していますが、他に家もないので、この管理人室に住んでいるんですよ。」


 管理人室は狭い部屋ではなく、他の部屋と同等の広さらしい。


 「なるほど。すみません。続けてください。」


 「突然起こされたものですから、びっくりはしましたけど、まさかと思っていましたよ。でも、川村さんの慌て方も尋常じゃなくて、それで505号室の山下さんの部屋を訪ねました。最初はインターホン鳴らしていたのですが、返事はありませんでした。『やっぱり朝になってからでも』と提案したのですが、『私の気分が悪いんです』と言ってきかなくて・・・。とにかく鍵で部屋を開けて確かめてくれって言われちゃって。開けて部屋に入ったらびっくりしましたよ。山下さんが首を吊って本当に亡くなっていたんですから。」


「なるほど。発見した後警察に連絡したのはあなたですか?」


「ええ。川村さんは本当に具合が悪そうだったので・・・。私が電話しました。あとは警察の方に任せました。」


 「そうですか。」


と言ったところでイリスが突然―


「上野さんはどこで通報したんですか?山下さんの部屋から出ましたか?」


「私ですか?いえ・・・。怖かったので、部屋から出て電話しようと思ったのですが、ドア付近には川村さんが具合悪そうにうずくまっていましたので、通れませんでした。なので、部屋の中で通報しました。」


「なるほどー。」


何か考えているような上の空の返事をした。


すると今度は上野さんから聞いてきた。


「これって殺人ではないですよね?」


殺人事件説を提唱しているイリスは黙っている。


「といいますと?」


「いや、自殺なら505号室だけが事故物件になりますが、万が一殺人だとしたら犯人がこの辺にいて、それを恐れて住人が引っ越してしまう恐れがあるんですよ。それは困るなあって・・・。私は30過ぎでこの町に越してきて、借金をしてこのマンションを建てて、やっと安定してきたんです。何としてもここを手放すようなことにはしたくない・・・。」


「現時点では何とも言えませんね。」


「私は警察に通報後、玄関にある靴箱の上に鍵があったのを見たんです。殺人はありえないですよね?密室になってしまいますから!」


確かにそうだが、ここまで念を押して確認するほどか?それより、505号室の鍵は玄関に置かれていたのか。ますます完璧な密室になってきたな―。


 「あなたが犯人なら可能ですよね?」


「ちょっ。イリス!お前なんてこと。」


「だってそうですよね?部屋の鍵は閉まっていて、鍵は部屋の中にあった。でも、合鍵を持っている管理人の上野さん。あなたなら505号室から出た後に鍵を閉めることは可能ですよね?」


「わ、私が犯人?合鍵を持っていたそれだけの理由で犯人にしないでくれ!だ、第一まだ殺人と決まったわけじゃないんでしょう?自殺の可能性がた、高いはずだ!首を吊っていたんだから!」


 イリスは慌てる上野さんを見てニヤニヤしている。


 「すみません。こいつが余計なことを言いました。ほら、もう行くぞ!失礼しました。ご迷惑をおかけしました!」


そう言って退散した。


 「上野さんが怒ってしまったじゃないか!」


「カマをかけてみただけですよー」


「これで次に話を聴きたいときに話をしてくれなかったらどうするんだ!?」


「もう上野さんに聴きたいことはないですよー。さあ、次に行きますよ!次は203号室に住んでいるという職場の後輩さんです!今ちょうど8時。もう仕事に行ってしまうかもしれないので急ぎましょー!」


「どうして上野さんに聴きたいことがもうないと言えるんだ!」


と聴きながら小走りで向かうイリスを追いかけた。


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