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1.迷惑な後輩刑事

 ピンポーン


 家中を響くチャイムの音で、俺は目を覚ました。

 枕元にある目覚まし時計は、セットしたアラームの1時間前を表示している。


 現在時刻:午前6時


 こんな時間に人の家を訪ねてくる非常識な知り合いは、一人しかいない。


 眠気に抗ってベッドから身体を起こした。チャイムを無視したいのだが、訪問者は起きるまでインターホンを押し続けるだろう。逃げられないのだ。


 半開きの目を擦りながら玄関に向かい、ドアを開ける。


 「おはようございます!」


まだ視界は訪問者にピントが合っていないが、元気で若い、聞き覚えのある女の声で、訪問者の正体に確証を得た。予想通りだ。


 「こんな朝早くからなんだ?まだ6時だぞ。」


 「事件ですよ!事件!ここからおよそ10km離れた場所で殺人事件がありました!なので、わたくし磐梯イリスが直々に先輩をお迎えに来ました!」


「後輩が先輩に対して“直々に”はおかしい。日本語を勉強しなおせ。」


 日本語のおかしな後輩・磐梯(ばんだい)イリス。


 明るい口調だが、元気でただの能天気だ。ショートボブの黒髪に大きな目が特徴的。身長は150cmくらいで小柄だ。


 名前で呼んでくれと言われて、断る理由もないためイリスと呼んでいる。


 去年からウチの署にいる新人刑事だが、現場を引っ掻き回し、邪魔者扱いされた結果、今年、俺のいる窓際部署に異例の最年少異動を成し遂げた。とんでもなくダメな才能の持ち主なのだ。


 「現場に行きますよ!急いで支度してください!」


「お前なあ。そもそも俺たちの部署は事件捜査しないところだぞ。現場に行ったところで追い返されるのが関の山だ。」


「その辺は、大丈夫です!課長に言ったら“OK”と返ってきました!」


なんでOKなんだよ。というか課長も早起きすぎるだろ。


「というわけで、早く支度してください!じゃないとずっとインターホンを鳴らしますよ~!」


「はあ。わかったから静かにしてくれ。ちょっと待っていろ。」


そういって一度部屋に戻った。


 あいつと玄関で話していたら近所迷惑になりそうだ・・・。


 10分ほどで身支度をし、外にでた。


 「早く行きましょうー!」


「場所はどこなんだ?」


「ここから二駅先の商店街前のマンションです!」


 「そうか。じゃあ俺の車で行くか・・・。というかイリス、お前はどうやって俺の家まで来たんだ?自転車か?」


「タクシーです!」


「タクシー!?」


「はい!ちょっと遠かったので!あ、領収書ちゃんと取りましたよ!」


「いや、現場に行くならまだしも、俺の家までのタクシーで署が領収書を受け取ってくれるわけが・・・」


「はい!そう思ったので、先輩の名前で取っておきました!先輩あとで払ってくださいね!」


そういいながらタクシーの領収書を自慢げに見せてきた。しっかり俺の名前が入っている。


「はあ?なんで俺が払わなければいけないだよ!絶対払わないからな!」


「いいじゃないですか!ケチ!」


 そんな口論をしながら俺たち二人は俺の車に乗った。


 結局タクシー代は俺が払うことになった。

 


 俺は車を現場に向かわせた。なぜかイリスは後部座席に座っている。


 「事件を知ったのは、例の能力か?」


「はい!いやあそれほどでも。」


「ほめてない・・・。」


 このイリス、というかこの街の住人の3割は、それぞれ人間離れした能力を持っている。例えば透視能力や霊能力、瞬間記憶能力があげられる。他にも、驚異的な腕力や1km先まで見ることができる視力といった身体能力を過剰にアシストするものもある。だが、人の思考を読み取るテレバシーや、人を直接傷つける様な能力は存在しないらしい。


 能力を持つ住人は昔からこの街に住んでいる人である。両親がこの街で生まれ、育っていなければ能力を持つ子供は生まれない。以前は住人の8割近くが能力者だったらしいが、ここ数十年で3割まで減った。実際、俺の祖父は能力を持っていたみたいだが、両親共にこの街出身ではない俺には何の能力もない。


 そしてこのイリスは3割に入る能力者であり、彼女の能力は人の気配を察知する能力である。大した使い道はないと思われるが、この街で人が密集している場所をリアルタイムで感じ取ることができるらしい。


 「朝5時くらいに起きた時、遠くでたくさんの人の気配がしたんですよね。そんなに朝早くから大勢の人が集まることはあまりないで、気になって署の方に電話したら、どうやら女性が部屋で亡くなっていて、現場に多くの警官や鑑識の人がいるみたいなんですよ!それで事件キター!って思って!」


「不謹慎だぞ。」


「はーい」


 「だが、そんな時間に警察が動いているってことはそれより前、つまり真夜中に部屋で亡くなっている女性が発見されたってことだよな。第一発見者は家族か?」


「そこまではわかりませーん!」


「そうか。」


事件捜査にテンションが上がっているイリスに、怒りを通り越して呆れていた。それよりも、イリスが現場で何かしでかさなかいか、それが心配だった。


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