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B.K.B 4 life 2 ~B-Sidaz Handbook~  作者: 石丸優一
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Fool! B.K.B

「また悪戯されたのか? 困った奴だな」


「あぁ。見つけたらこっちに出頭させてくれ。サーガに伝わる前にな。今なら俺の拳骨だけで済む」


 アジトから少し離れたエリア。道端でばったり会ったウォーリアーのメンバーに俺はそうお願いした。


 俺が探しているのはご想像の通り、シザースだ。


 アイツめ、まだ根に持っているのか、今度は車に小石を投げて逃げていきやがった。むしろケガの手当てを感謝してほしいくらいなのによ。

 窓ガラスの弁償は終わり、ひと段落かと思っていたのだがこのざまだ。


 幸いにも小石はボディに当たって軽く跳ね返っただけなので傷の修理をしろとまでは言わない。

 銃だと怒られるからといって、小石なら許されるとでも思ったのかよ。どこまでも思考がガキでうんざりだ。


「いたか?」


「いいや、こっちにはいない」


 道の陰から、わらわらとガーディアンのホーミー達が歩いてきた。

 サーガへ情報が流れるのを恐れて、ウォーリアーには数人しか伝えていないが、ガーディアンはほとんど全員がシザースの狼藉を認識している。


「お前らも暇だったから良かったものを、こんなことに駆り出させてすまねぇな」


「お前が謝ることじゃねぇよ、クレイ。むしろ、最近はこの辺りが平和で良かったな。そうじゃなきゃ、俺達だってこんな鬼ごっこをしてる場合じゃなかった」


「確かにな。ただ、石ころだからって許しちゃおけねぇ。アイツが調子に乗る前にやめさせとかねぇと、次はサーガに殺されちまうぞ」


 どうして俺がアイツを守るためにアイツを追いかけなきゃならねぇんだって話だぜ。まったく。


「俺らはあっちの酒屋の方を探してみるぜ。お前はどうする、クレイ?」


「一旦、メイソンさんのところに寄ってみようと思う。アイツの事だ、匿ってくれぇ、とか言ってメイソンの兄ちゃんに泣きついてるかもしれねぇ」


「あー、そりゃあり得る話だな。歩いたら少し遠いだろう。車で行くのか? もしそうなら、また石ころ投げられんなよ」


「まぁ、大丈夫だろう」


 ホーミーたちと別れ、俺は一人、メイソンさんの整備工場へ。


 たった今忠告された通り、また車に悪戯される可能性もあるが、メイソンさんの手前でそんな真似をするほどの馬鹿でもないだろう。

 いや……アイツはそれが出来るほどの馬鹿か。そのおかげで、こんなアホらしい追いかけっこをしてるんだったな。


「おやおや、今日はお客さんが多いことだ。買い物をしない、冷やかしの方のね。バイトでもないんだろ?」


 事務所のコンテナ前にキャンプ用の折りたたみチェアを出し、ビール片手に大麻を吸っているメイソンさんが俺を出迎えた。


「チルってるとこ申し訳ないが、人探しだ。シザースの馬鹿野郎がこないだエクスプレスの窓ガラス撃ち抜いたろ。今度は石ころを投げてきやがってな。お灸をすえてやろうと思ってる」


「またかい。ガイは何て言ってるの?」


「サーガには知らせてない。知られたら多分、殺されるからな。俺の拳骨一発で手打ちにするつもりさ」


 メイソンさんは「ふぅぅ」と美味そうに煙を吐き、ビールの缶の中にジョイントの吸殻を入れ込んだ。


「殺される……ねぇ。それがアイツの判断になるなら、それだけの事をやったって話だな。連れて行け。サーガには俺から知らせるとしよう」


「えっ……?」


 俺が耳を疑っていると、事務所のコンテナの中から、ボコボコにされたシザースが引きずり出される。


「まぁ、お前が話してくれた内容、シザース本人からも聞いたからね。仕方なくこのくらいはやっておいたけど、ガイが殺すつもりならそれに従うのがギャングスタってもんだろ? 連れて行きなよ」


「いや、それは……あぁ、分かった。それじゃまたな、メイソンの兄ちゃん」


 連れて行っていいものかと一瞬戸惑う。だが、これで処罰は終わりとしてサーガには会わせず開放してやればいいだけの事だ。結局、俺はシザースを車に積み込んだ。


「皆、聞こえるか。シザースを見つけたぞ。どこかに集合しよう」


 ガーディアンが使っている回線に無線を入れる。


「本当か! さすがは俺達のクレイだぜ」


「そうか。よく大人しくついてきたな」


「大人しくついてきたというかなんというか……とにかく集合だ。場所はそうだな……他の連中に見られたくないから、俺の家でもいいか」


「了解だ」


 ガーディアンくらいであれば俺の家のリビングでも十分入る。ウォーリアーに見つからないようにそこを指定した。


……


……


「いて……ここは……」


 俺の家の中。ソファに寝かされたシザースが、目を瞬かせる。

 周りには十数人のガーディアン達。全員集合とまではいかなかったが、無線で連絡がついた連中がそこに集まってシザースを見下ろしていた。


「メイソンさんにやられたんだってな。お前がガーディアンに対して、つまり味方に対してそれほどの事をやってしまったって事、少しは理解したか?」


 みんなを代表して俺が口を開いた。


「う……るせぇよ。どうせ、全部俺が悪い。そうなんだろう……?」


「何を言ってんだ、お前」


 お前が悪いに決まってるだろう、という言葉は寸前のところで飲み込んだ。


 もう十分に痛めつけられてるんだ。別に、これ以上責めて暴れてもらう必要はないだろう。

 またコイツに対して気を遣うことになって、イラつきはするがな。被害者はこっちだってのに。


「ガーディアンからはお前に何かしようってんじゃないから、そこは安心しろ。むしろ、こうやって匿ってやってる方だ。お前、ウォーリアーに見つかったら確実にケジメ取らされるぞ」


「何がケジメだよ。サーガに殺されるってんだろ……? へっ、もうどうにでもなれだ」


「ガキみたいにいじけてんなよ。まぁ、お前はまだガキだったな」


「ガキじゃねぇ! うぉ、いて……」


 ボコボコに腫れ上がった顔を押さえながら悶絶するシザース。

 サーガほどではないにしろ、メイソンさんも結構な仕打ちをするものだ。これだからオリジナルギャングスタの、E.T.の世代の人間たちは怖い。


「まったく、お前は毎回俺らにちょっかいかけて、俺らに手当てされてるな」


 とりあえず切り傷や擦り傷はなく、腫れだけのようなので、シザースの顔面へ乱暴に湿布を貼り付けてやった。


「あ、ちょ、目に、目にかぶせて貼るなって!」


 まるで目隠しのように湿布が貼られてしまい、迷惑そうな本人の反応を見てどっと笑いが起こる。


「微調整はご自分でどうぞ。あとは、今回の悪戯の事だが、俺らと一緒にウォーリアーの誰かのところへ出頭するしかねぇぞ。一人で行けばサーガに突き出され兼ねん」


「もう好きにしろよ、めんどくせぇ」


「その前にまず、詫びくらい言ったらどうだ」


 こんなに拗ねてるガキがまず言わないだろうな、とは思いつつも謝罪を要求してみた。


「……何の詫びだよ?」


「その回答は、お前が本気で分からなくて言ってるのか、わざと突っぱねてるのかどっちかによる」


「へっ! 教えてくれたところで、詫びなんて入れねぇけどな!」


 まぁ、予想通りだな。笑っている周りのホーミー達も分かりきっていたようで、大して気にしていないようだ。


「なら忠告だ。次はもう助けてやれねぇ。おそらく死ぬぞ。俺らじゃなく、ウォーリアーの誰かに殺されると思う」


「……は? なんで? 仮にそうだとしても、サーガじゃねぇのか?」


 なるほど、本気で分からないらしい。悪戯はあくまでも悪戯。前回はサーガに、今回はメイソンさんにここまでやられてんのに、サーガ以外に殺される未来は予想できないってわけか。

 ウォーリアーだってウチに迷惑かけっぱなしじゃメンツが立たないってのに。


「理由は本人らに聞いてみるといい。とりあえず、サーガに突き出されたり、その本人がお前を弾いたりしないように口添えしてやる。行くぞ」


「おいおい、何だってんだ! 説明してくれよ!」


「しても理解できねぇからそう言ってんだよ。黙ってついてこい!」


 半ば強引にシザースを連れ出し、ガーディアンのメンバーに囲まれた状態で車に乗せる。

 数台の車でウォーリアーのいそうな所へと移動を開始した。


 B.K.Bのテリトリー内だ。適当に車を走らせているだけで、ウォーリアーやハスラーには自ずと出会う。

 この時も五分と経たずに一人のウォーリアーを発見した。


「よう、ガーディアンご一行」


「よう、調子はどうだ。アンタ、ウォーリアーだったよな」


「そうだが、何だ? あぁ、あれか。シザースを探してるって話だったら聞いてるが、俺は見てねぇぞ」


 俺は車を降り、後列のスライドドアを開け放った。

 ガーディアンのホーミーらに両サイドを抑えられたシザースが見える。さすがに騒ぎ疲れたのか、今はもう大人しい。


「いや、実はシザースを見つけてな。ほら。この通り、連れてきたんだよ」


「マジか。だったら俺がガラ抑えるぞ。OG達のとこに連れて行かねぇと」


「いや、それに俺達も同伴させてほしいんだ。このまま渡しちまうと、さらにボコられそうだしな。見てくれ、もう既に俺達の方でケジメは取らせてもらった。これ以上は手出し無用だってのを伝えたくてな」


 ウォーリアーが、腫れたシザースの顔をまじまじと見る。


「んー、どうなるかは俺も予測不能ではあるな。了解だ。案内するから俺も乗っけてくれよ」


「助かるよ」


 彼を助手席に迎え入れ、車を出す。


……


「おう、ようやく見つかったってわけか」


 ウォーリアーのOGの一人の家に入ると、そこでは三人のOG達が卓を囲んでカードによる賭けを楽しんでいるところだった。

 横にはウィスキーやビールの瓶も転がっており、盛り上がっていたようだ。


「あぁ。ある程度は痛めつけてアンタらへ引き渡しに来たんだが、もうこっちとしては許してやってる。だから命までは勘弁してやってくれ。これでも俺とは個人的な付き合いもあるガキだからよ。死なれちゃ寝覚めが悪くなる」


「それは出来ねぇ頼みだな」


「なっ……! やめろっての!」


 言ったそばから殺す気かと、俺はシザースの前に身体を割り込ませた。


「冗談だ。今回は石ころ遊びだろ? また弾いたって話なら問答無用で処刑だったが、特に俺達から言う事はねぇよ」


「やめてくれよ、心臓に悪いぜ……よかったな、シザース。無罪放免だとよ」


「ふん……何が無罪放免だよ。もう既に、コテンパンにやられてるっつーの」


 相変わらず拗ねてしまってはいるが、本当にこのくらいで済んで良かった。メイソンさんの御仕置はやりすぎだとも感じたが、こうなるって事を完全に理解した上でぶん殴ってくれたんだろうな。

 サーガと同じく、あの人にも到底敵いっこないぜ。


「また変なことしようなんて思うなよ。というか、ガーディアンの何が気に入らねぇんだよ」


「別に何も考えてねぇよ。気に食わねぇとも思ってねぇし。からかっただけじゃねぇか」


「……そうかよ。んじゃ、とりあえずシザースは置いていくからよ。これ以上、何もしないでやってほしいが、説教くらいは小一時間してやってくれ」


 びくりとシザースの肩が跳ね上がる。説教という言葉に反応したようだ。拳で痛めつけられてる奴がなんでそこにビビるんだよ。


「せ、説教……」


「ははは! シザースは説教が嫌だってよ! こりゃ効くぜ、きっと!」


「よしきた、俺がガキの頃に馬鹿な失敗をして、E.T.のマークってデカブツからボコボコにされた話でもしてやろう。それを聞いたらお前もこの程度で済んで良かったって改心するに違いねぇぞ」


 ウォーリアーのOG達が勝手に盛り上がり始め、シザースをむんずと掴んで座らせる。

 この雰囲気ならもう大丈夫だろう。彼らも先ほどの言葉通り、シザースに対して厳しい仕打ちをするとは思えない。


 ただし、説教が鉄拳以上にシザースに効くのであれば、それこそが一番の罰になるのかもしれないな。

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