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B.K.B 4 life 2 ~B-Sidaz Handbook~  作者: 石丸優一
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Ridiculous Job

「あー、尋ねたいことがあるんだが」


「道案内ですか? どうぞ、おかけください」


 サウスセントラル内。それも割と治安の良いエリアにある警察署だからか、その対応も非常に丁寧だ。

 まだ要件を言う前だというのに、わざわざ椅子を勧められて若い男性警官と対面する形となった。


「それで、どちらへ行かれたいんです? あ、地図はこちらです。この近辺しか載っていなくて恐縮ですが」


 本当に準備が良いな。ちょうど、俺たちがギャングを探してるエリアも記載されているので指でなぞる。


「この辺りに知り合いの家があって向かおうと思っているんだが、以前はこのエリアの治安が良くなかったと記憶していてな。今もそういった連中が確認されているのか、先に警察で聞いておこうと思ったんだ」


「なるほど、なるほど。夜道なんかは特に心配ですもんね。ご心配なお気持ちは痛いほど分かりますよ」


「友人に訊いても最近は見ないとしか言わないから、そんな肌感覚みたいな意見よりも、実際にそういう奴らが一人残らず撲滅できたのか、警察であれば正しい情報を持っているはずだ。教えてもらえるか?」


「一人残らず、というのは判断できかねますね。ただ、その地区にいたギャングのチーム、セットと言うべきでしょうか。それは既に消滅、解散されたという話は聞いています」


 やはりそうだったか。ギャングタグも一つも見当たらなかった。


「そりゃ、数人程度の不良連中はいるでしょうが、チームの名前を持って徒党を組んでいるという事はありませんね」


「そうか。その悪ガキだったり、元ギャングメンバーたちがよく集まっている場所なんかはあるか? 念のため、その近くは避けておきたい」


 我ながら中々に上手い言い回しだな。その場所を知りたいのは事実だが、理由を真逆に仕立て上げた。


「少々お待ちを……確か、以前そこにいたギャングの連中が集まっていたのが……ありました。廃屋ですね。昔は喫茶店だった場所のようです」


「今もその建物は取り壊されずに残っているのか? エリアが全体的に綺麗な街並みに変わっているようだが」


「そうなんですよ。再開発が進みましてね。非常に住みよい街に生まれ変わったんです。それで、その廃屋ですが……あぁ、残念ながらまだ残っているようですね。どうかここには近づかないようにお願いします」


 街や警察にとっては遺恨でも、こちらにとっては朗報だ。

 俺は警官の指がさし示している地図の一点をしっかりと記憶した。


……


「収穫ありって顔だな。よくやった」


「表情で結果を言い当てるのはやめてほしいところだな。恥ずかしいだろ」


「顔に出してるてめぇが悪いんだろうが。どこに行けばいい?」


 サーガが早速、俺の仕事っぷりを理解して訊いてくる。評価はありがたいが、手放しで喜べるような言い方ではないな。いちいち嫌な気分にさせるなよ。


「昔、喫茶店だった廃屋があるらしい。案内する、出してくれ」


「了解。とりあえずはさっきのレコード屋の方面に進めるぞ」


 目的地はあのレコード屋と同じブロック内なのでそれで問題ない。しかし、綺麗な街並みの中に廃屋なんかあったら目立ちそうなもんだが、なぜ見つけれなかったんだろう。

 それは到着すると同時に理解できた。


 住宅や商店が建っている、その裏手。本来であれば傍の家の裏庭にでも使われそうなスペースにそれはあった。

 つまり東西南北、どの方角でも通りから直接はアクセスできず、いずれかの敷地内を通って入る必要がある立地だ。


 以前は四方に何もなかったのかもしれないが、現在は新しい建物が建ち並んでいるせいで、完全に道路からは見えなくなっていた。


「こりゃ盲点だったな。気づけるはずもねぇ」


「逆に、アジトとしてはかなり使い勝手がいいんじゃないか? 俺一人で見てくるよ。サーガはここにいてくれ」


「用心しろよ」


 いくらアジトだった場所とはいえ、今も不良がいるのかは分からない。それに治安の良い街だ。腰には銃もある。このくらいは一人で何とかして見せねぇとな。


 直接は入れないので、仕方なく隣接する民家の庭に足を踏み入れる。住民に気づかれたら通報されるだろうが、すぐにそこを抜け、申し訳程度の木板の柵を乗り越え、廃屋の側へとたどり着いた。


 建物は古く、窓やドアはすべてなくなっており吹き抜けだ。

 一階建ての平屋で、正面入り口に喫茶店だった頃に使われていたのであろう、くすんだ看板が掲げられていた。


 人の気配は……ない。ただ、地面には吸い殻や空き缶など、確かにゴロツキのアジトとして使われていたらしい形跡は見受けられた。


 室内へ。

 さすがにここにはギャングタグなどが書かれていた。しかし、やはり数年は経っていそうな荒れようだな。椅子やテーブルも置かれているが、埃が積もっていて最近使われたようには見えない。


「はずれ……だろうな。おっと!」


 ガサガサと音がして、そちらを驚いて見やると、鳥が巣を作って住んでいた。雛はいないようなので、寝床としてこの一羽が利用しているだけかもしれない。


 人の出入りがあるのであれば、こんな住民はいないはず。こりゃ本当に、完全に外れだな。仕方ない。

 さすがにこのエリアに見切りをつける決心がついた俺は、サーガの待つ車へと戻った。


「ダメだな。もう何年も使われていないのは確定だ。埃かぶって、鳥が住み着いてやがった」


「そうか。まだ調べるか?」


「いや、ここは諦めよう。ギャングがいないならどうしようもない。ウチと敵対してた頃の連中なんてもういないだろうしな」


 今日の目標は残り七つ。気が滅入るぜ。


……


 さらに驚きは続く。次も、その次も空振りだったのだ。隣接するエリアなので似たように治安は改善されており、住みよい街になっていた。まさか、この一帯からギャングがほとんど消滅してるんじゃねぇか?


 ただ、コンビニの店員の兄ちゃんの住んでいるエリアにはまだギャングがいるって話だった。少なくともその一つにはいるので、八つのエリアが全滅というわけではないという事だけは分かっている。


 そしてさらにその次、また次も外れ。ちょっとした不良の集まりみたいなガキ共なら居たが、ギャングはやはり解散していた。これで残りは三つ。


「サーガ。実は知ってて一日に八つも詰め込んだのか?」


「さてな。近いから一気にやろうと思っただけだ」


 俺がサーガを疑ってしまうくらい、ギャングは消え去ってしまっていた。

 ただ、もしサーガがそれを知っていたとしても、本当に敵対セットがいなくなったのかを調べるためにここへ来る必要はあったので、完全に無駄な仕事とはならない。


 そして次も外れ。ここはギャングどころか、住民もいなくなっていた。寂れたのではない。エリア全体が居住区ではなく、巨大な商業施設になっていたのだ。


 残り二つ。


 次のエリア。ようやく見つけた。ギャングタグだ。

 なんで敵対セットのタグを見つけて一安心しなきゃならねぇんだよ。


 エリアとしては今までの六つと変わらず綺麗な街並みになっていたが、一角に数棟だけ、古いままのアパートがある。そのちょっとした団地に貧困層が暮らしているようで、ギャングもそこにいるようだ。


「街は良くなってんのに、そこまでして今までの暮らしを守る必要はあるのかね」


「やりたくてやってんじゃねぇんだろう。ただ、町全体で見るとやはりこのアパート群だけは場違いだな。他の貧困層はどこに行ったのやら」


「さぁな」


「いや……他の場所で暮らしていた奴らもここに押し込められたんじゃないのか? ほら、さっきのデカい商業施設。あそこの特需でほとんどの住民が潤ったのかもしれねぇ」


 サーガの名推理が炸裂する。確かにそれなら辻褄は合うな。てことは今まで巡った全エリアの、あぶれた悪どもがここに集結かよ。

 その数こそ施設が生み出す雇用の特需とやらで減って、真面目に働いてる奴が増えたのだろうが、ギャングとしてはここに特級が集まっちまってるじゃねぇか。


「はぁ……しかし、話をしないわけにはいかねぇ。行ってくるよ」


「待て。俺も行く。ただし、手伝うわけじゃねぇからお前が仕事しろよ」


 サーガが最低限の護衛として同行を申し出る。囲まれる危険性を考慮してのことか。アパートだもんな。今までみたいに道端で話しかけるのとは違って、退路を断たれて叩かれる可能性はある。


 タグだらけでボロボロの集合住宅。ゴミなども散乱し、明らかに治安は最悪だ。一階の入口の前。見張りなどはいない。


 意外にも、小さな子供が二人で人形遊びをしていた。攫われたりはしないんだな。その辺は俺らの地元のように、ギャングが自警団のような働きも担っているのかもしれない。

 ギャングは悪ではあるが、何よりも地元と家族を愛するからな。


「やぁ。坊やたち。楽しそうじゃねぇか。それは怪獣の人形か?」


「ハイ、おじさんたち! 怪獣じゃない! 恐竜!」


 おじさんだと? まぁいい。確かに彼らにとってはうんと年上だ。サーガは既にそうだし、俺だってすぐにおじさんだからな。

 こうやってキャラクターものの見分けがつかなくなっていくのも、おじさんへの第一歩だ。嘆いても仕方ないので前向きに受け取ろう。


「恐竜か! 俺は全然恐竜に詳しくないんだが、教えてくれるか?」


「いいよ! こっちがステゴサウルス!」


「で、僕が持ってるのがトリケラトプスだよ」


 二人の子供が交互に手元の恐竜のソフトビニール人形を見せびらかしてくる。地面にもさらに二体、転がっているようだが、そっちは紹介してくれないか。


 仏頂面で黙って立っているサーガも、地面に転がってる二体の恐竜は何だとソワソワしている。気になるなら護衛ごっこはやめて訊けよな。


「……」


 無言で指だけ差す始末だ。それに気づいた子供たちが二体を拾い上げる。


「あぁ! これはブラキオサウルスだよ! で、これはプレシオサウルス!」


 一応はどれも聞いたことのある名前で安心した。恐竜と言えば、主役級のティラノサウルスがいないのは気になるが、王道すぎて遊ばなくなったのかもな。


「今日はティラノサウルスが死んじゃった世界で、ケンカが起きたっていう遊びをしてたんだよ!」


「面白れぇ。斬新なアイディアだな。確かにティラノがいないとなると、誰が一番強いのか気になる」


「うん! ティラノサウルスが無くなっちゃって!」


 なるほどな。無くした玩具を埋め合わせるための世界設定だったか。探してやりたいが、今はそんなことをしている時間はない。


「おいおいおい。どこ様の誰様のどなた様だよ、貴様ら」


 野太い声。ようやく本題のお出ましか。


 アパート入り口に、筋骨隆々のタンクトップの男が現れた。タトゥーはしていないようだが、ギャングスタで間違いないだろう。


「よう。お前らに用事がある。たまたま、ガキどもがおもちゃで遊んでたから話してた。攫うとか、悪さを働くつもりはねぇから安心しな」


「うるせぇ。ウチのシマにのこのこと入ってきやがって。生きてられると思うなよ。おい、チビども。喧嘩に巻き込まれたくなかったら家に帰ってろ」


 ここまで敵対心むき出しなのも久しぶりだな。さて、仕事だ。

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