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見上げてごらん

ーーーーミュール宙域


 ジョージの乗る汎用クライドンに似た機体と、ミーカの乗る小型の輸送機が猛スピードでミュールへと近づいている。


「ミーカ、本当にこんな腐星にターゲットは居るのか?」

「問題無いわジョージ。もし居なくてもピラミッドとか言うのには財宝がたんまりあるはずよ」


「本当か? カルーセもそれを見越して……」

「ええ、ヱラウルフの奪還が最優先だけれど、資金稼ぎも並行しなきゃならないわ」


「何にせよ、この『ロード』が居るんだ。貧乏シーフとはおさらばしたいな」

「そうね。カルーセには感謝ね」


 超極貧で知られている8等星『パーチ』出身のジョージとミーカは表向きはジャンク屋であるが、裏では小型輸送機とオンボロクライドンで、宇宙盗賊を生業としていた。


 あの日、決戦前に脱出していたカルーセの小型船を襲った際に、彼女は協力体制を提案してきた。


「そのオンボロクライドンを最高の機体にしてあげるワケ。その代わり私とチームを組むワケ」


 金の在り処も教えるとも付け加えたカルーセの提案は魅力的だったため、二人は快く了承した。

 

 早速カルーセは少ない手持ちでクライドンの改造に着手する。

 ヱラウルフに搭載予定だったオプションパーツを付ける程度であるが、梔子色へカラーリングしたソレは見違えるような機体へと変貌した。


 腕にはガトリング砲が装着され、機体の修復スピードも段違いの性能となった。


「まだ、ヱラウルフはこんなもんじゃ無いワケ。資金と物資が調達次第もっとこの子は強くなるワケ」


 その未完成な機体は「ロード」と名付け、現在ジョージが乗っているのである。

 カルーセはその後、『パーチ』へと向かい、彼らの帰りを待っている。


ーーーー数時間後


「おい、ミーカッ! なんだあの白いアメイジングな奴は!?」

「ジャルールって言う上位等星の新型よ!」


 ピラミッドに近寄った瞬間にジャルールとロードは触発した。

 冷たい殺意を持ったジャルールにジョージは戦慄し、ミーカに後ろに下がるよう通信を入れる。


「新型だからって! こっちもニュータイプなんだよ!」


ーーーーズガガガガ!


 腕に付けたガトリング砲をジャルールに向け発射する。

 しかし、ジャルールはマナを前方へ五角形に展開しシールドを展開してコレを難なく防ぐ。


 その後、マナを剣状に変えたジャルールはロードに斬りかかる。


ーーーーギィィイイ!!


 咄嗟の攻撃に避けられないと悟ったロードは斧状武器にてジャルールの斬撃をかろうじて防ぐ。


「嘘だろ! あんなマナの使い方……クレイジーすぎるぞ!」


 それでもなお、ジョージは己のプライドでジャルールに挑む。

 斧を振りかぶりジャルールに接近するが、その直後には剣状のマナの塊が眼前に迫ってきた!


「な、投げるだって! うわあ!」


 直撃をかろうじて防いだが、これ以上の戦闘行為は無意味であるとジョージとミーカは悟ってしまった。


「ジョージ! 私達がどうこう出来る相手じゃないわッ! 撤退するわよ!」

「く、くっそぉおおおお!!」


 半ばパニックに見える形で敗走していくロード。その様子を見たジャルールはただ何もせず沈黙を貫いていた。


 その姿こそが、ジョージのプライドをズタボロに傷付けた事も知らずに…


「絶対……絶対に! 貴様にリベンジしてやるからな! ジャルールゥッッ!」

「ジョージうるさい! 早く逃げるのよ!」


 こうして二人は緊急にミュールを脱出し、カルーセの元へ帰っていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「すげえなこの機体。扱えるサンドもすげえが……」

「ああいや、と言うかあいつ弱すぎたな」


 サンドの後ろにいるレオーネは素直にその才能を賞賛する。


『これは巫女様に献上すれば喜ばれるかな』


 レオーネはサンドと教会に向かう際ジャルールの存在を語り始めた為に好奇心から見せて貰っていた。

 偶然にもその時、正体不明の機体が接近してきたので、迎撃に向かったのが現在こうなった運びである。

  

「サンド、とりあえず教会に行こう!」

「そうだな、俺も早く巫女様に会いたいぜ」


 こうして二人は皆の迷惑にならぬよう、ゆっくりとジャルールを発進させ教会へ向かっていった。


ーーーー教会


「どうかなされましたかな? 巫女様」

「……ヒース神父ですか」


 疲れた顔をしていたのか、神父は巫女に声をかけた。


「私は、一体いつまでこのような生活を続けるのでしょう」

「気にする事はありません。全て上の意思決定に従えば良いのです」


「それでも、もう何人も死んでしまいました……」

「『それでも』でございます。巫女」


 ため息を吐きつつ今日のお勤めへ向かう巫女。それとは対照的に、夜空には満点の星空が彼女達を見守っていた。


『私はもういっそのこと』


 巫女の願いは流れ星によってかき消されたように見えた。


ーーーー教会裏側


「さぁ着いた着いた」

「うえぇえっぷ! サンド、お前良く酔わないな」


「早く巫女様の声を聞きたいなー」

「サンド……うぅっぷ……巫女様は俺んだ……ぜ」


 サンドはジャルールを昨日と同じ様に配置する。

 酔って上手く動けないレオーネを介抱しながら降りると、二人は突然背後より襲撃された。


「「!!!!!」」


「うグッ! 何する……」

「いてぇええ、なんだこいつ! 離れ……」


 サンドは薬品を染み込ませた布を口に押し付けられ、数十秒後に眠りに落ちた。

 方やレオーネは何かのメカに突然アイアンクローをされている。

 顔全体を爪のような脚でガッチリとホールドされ、顔中央部に吹きかけられた液体を吸い込んだレオーネは、意識を飛ばした。


「ヒヤヒヤシマスネ」

「私も、こっち側だったのだな」


 地面に寝転ぶ二人を見て、チャムとブローノは呟く。ブローノに至っては、自分が異常だった側に居たのを再確認しているようだ。


 今は巫女に余計な情報を与えてはならない。二人はそう考え、サンドとクリスを拘束している。

 ちなみにクリスはブローノの家で縛られ寝ている。


 明日の朝になれば、必ずピラミッドへ向かうのでそれまでの辛抱である。


 チャムはジャルールの中に入り、自身に使う予定であったヱラウルフのパーツをブローノへ渡す。

 そのパーツは既にクリスが解毒剤用に加工してあった。


「クリスは……天才だな。凄いなこれは」

「当然デス。私モ、ユグドラシルデスカラ」


 ひと目見て、そのユグドラシルの加工の素晴らしさ、いや、まるで生命を宿らせたような美しさにブローノは感嘆する。


「必ず私が皆を救って見せる。そしてフェルミナ……皆、もう少しだ。もう少しで全て終わるわ」

「タノミマスヨ、ブローノ」


『クリスが託した意思を無駄にはしない』


 明日に向けた決着の時を思い…

 満点の星空を見上げ、ブローノは覚悟を決める。

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