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決戦 VSミザリー

ーーー9時20分


ーーービー!ビー!ビー!


 きたわね……

 可愛いユリウスを出迎えるため、私は小走りで管制塔へ急ぐ。ああ、早く絶望に満ちたユリウスの顔が見たいわ。


 しかし、私が予想していた展開とは異なる事実がオペレーターより告げられた。


「報告! ヱラウルフ、それに正体不明のクライドンがこちらに急速接近中!」

「全艦! 照準ロック警報発令します!」


 ソキンシップの管制塔が騒がしくなる。

 ロックオンされているですって?

 あれに乗っているのはサッチモではない?

 それに追随するアールの新型……まさか!?

 私はヱラウルフとあの純白の機体に乗っている人物が誰なのか、一応ではあるが確かめる。


「ヱラウルフと新型に通信は可能か」


「だめです! 通信シャットアウトしてます!」

「そう……」


 部下の報告に思わず舌打ちをする。

 

 ヱラウルフに乗っているのはほぼユリウスで間違いわないでしょうね……

 そしてあの新型は誰? まさかアールと手を組んだ!?


 私は瞬時に作戦を練り全艦へ向け通達する。


「全艦! 第三種戦闘配備! 各艦隊は全クライドンを持って迎撃せよ!」


「全艦ですか? それにこの宙域での戦闘行為はユグド条例違反です!」

「二度は言わん!」


 馬鹿なオペレーターに声を荒げる。

 理由は、そう、最後の通信ではヱラウルフはサッチモが搭乗していた。


 確か「ミツバを人質に取った」という報告だったはずだ。そして、それ以降通信が何故か途絶えている。


 となればあの新型はヱラウルフと交戦していたはずと推測される。そして視認する限りあの白い機体には傷跡が1つもない。

 更に言うなれば、サッチモであれば私に反旗を翻すはずはなく、通信を切っている理由がアレにはない…


「チッ! サッチモめ……しくじったわねッ! それに、アールの新型を止めることも出来なかったか」

 

 私はこの短時間で二度目の舌打ちをする。事実詳細は分からないが、新型両機が敵意を持っている事実が若干の焦りとして私を包む。


 しょうがないわね、私が出るしかないか…


「私もアイリスで出る。クライドンは私の指揮下に入れ! 艦隊指揮は貴様に預ける!」

「了解しました!」


 名前すらよく覚えていない側近に指揮権を預ける。フフフ、どうか死ななようにね。

 アイリス搭乗のため、デッキに向かう途中、私はカルーセ整備長を呼び出した。念には念を入れないとね。


「珍しいわね。何かようなワケ?」

「カルーセ整備長、あのね……」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 短い会話を交わし終えた私はデッキへ到着し、アイリスへ乗り込む。目を閉じ、この後自分の玩具となるであろうユリウスをどう調教するかを妄想し1人ほくそ笑んだ。


「フフ、あの子……得意の戦闘で負けたら一体どんな顔を見せてくれるのかしら」


 実際、最悪はユリウスと交戦することも視野には入れていた。サッチモにアールの新型が止められなかったのは少々誤算ではあるが…


 そうこう思索しているとハッチが開き発進許可ランプが点灯する。私は期待に胸を膨らませユリウスの元へと向かう。


「ミザリー、アイリスッ! 出るぞッ!」

「ご武運を!」


ーーーバシュウゥゥゥウウン!


 ミザリーは呟く、彼女はまだ知らない。ジャルールとヱラウルフの強さを。


「何があろうと、私は『許す』わよユリウス。フフ……あなたはもうすぐ私のもの」


 そして、自身の命があと数分で終わることを、彼女はまだ知らない


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ソキンシップ各艦より続々とクライドンが出撃する。先頭にはミザリーの乗るアイリスが立ち、その周りを扇状に囲むように計15機のクライドンが並んでいる。


 後方には5隻の戦艦が一定の距離を保ちつつ前進する。


 ミザリーが搭乗する『アイリス』は他のクライドンとは違い、自身の美を強調する真紅のボディであり、手は鉤爪のようになっている。


 更に大きく異なるのは背中に背負っている薄紫色の大きく開いた『花』のような武装である。その花びらは5枚あり、まるでそれ自身に生命が宿っているかのようにグネグネと脈動している。

 

 綺麗な隊列で前進する彼女等はまるで巨大な蕾のような形状となりユリウス達を出迎えようとしていた。


「私は単独でヱラウルフを討つ! 各機はあの新型の相手をせよ!」

「「「「了解ッ!」」」」


 ミザリーの号令に隊員達は応える。

 その時、桁違いのエネルギー反応がアールの新型から検知された。


 ゾクッ! 思わずミザリーは一瞬言葉を失う。ミザリーとて戦場で確かな戦果を挙げている実力はある。そして、目の前のソレは自身が一度も感じた事がない強烈なプレッシャーを放っていた。


 ミザリーはすぐに自身の立場を思い出し命令する。


「全員! 急速散開! あれはきけ……」


 1手遅かった。

ーーギャァァアアアアアアアアアアアン


 全てを包み込む真っ白で無慈悲な光の塊がミザリー達を襲う。彼女を狙ったソレではあるが、必死の回避行動、更に背中の大きな花弁で自身を包む防御行動を取ることで彼女は死なずに済んでいた。


 ミザリーは状況確認の為辺りを見渡す。そこにはクライドン4機と戦艦が3隻しか残されていなかった。


「な、なんてッ! 出鱈目だわッ!!」


 その光に包まれた者たちは、きっと何が起きたか分からぬまま消えていった。

 一瞬で戦艦2隻とクライドン11機を失ったミザリー達は『撤退』の2文字に舵を取るかの選択を迫られた。が、彼女のプライドがそれを許さなかった。


「貴様等うろたえるな! あれはそう何発も撃てないはずだ! たった2機に我が軍が尻尾を巻くことなど許されないと思え!」

「「「り、了解ッ!」」」


 もう何度目だろうか、ミザリーは舌打ちをする。発破をかけたつもりでいたが、事態が大きすぎる。普通であれば一旦態勢を立て直す必要があるが、ヱラウルフがそれを許さなかった。


 高速でミザリーへ接近したユリウスは、瞬時に懐に飛び込み、横一閃ミザリーを斬る。


ーーキィィイッッ


 自身の鉤爪でユリウスのブレードを押さえ込み防御する。と同時に通信が入った。


「ミザリー……何故ミツバを殺した!?」

「あらやっぱりユリウスじゃない。一体どういうつもりかしら?」


「質問を……質問で返すな!」

 

 更に幾度か切り刻もうとするが、すんでのところでミザリーの鉤爪に弾かれる。再度鍔迫り合いの形となったところでミザリーは応える。


「言ったじゃない、あなたは私のものって。それが誰かのものになるなんて、そんな事! そんな事ッ! 許されると思ってるのかしらッ!!!」

「この……下種がッ!」


 ユリウスはミザリーに完全たる殺意を向ける。

 この女だけは許してはいけないと本能として悟っていた。


「あら、余所見してていいのかしら?」

「何!?」


 アイリスの左肩より、花弁の先端がグイっとユリウスへ向かれる、その先端より光線が射出された


ーーバシィイッ!

 

 咄嗟の切り払いで直撃は避けたが、その反動で距離が離れてしまった。そこを、残ったクライドンが追撃する。しかし


「サンド! 今よ!」

「この野郎ォッ!」


 クリスの叫びより前に装備を剣状にしたジャルールが一刀両断にする。その光景にミザリー驚愕した。


『まだ残量があると言うの! 底なしか!? コイツ!』


「残りは撤退せよ!」


 これ以上は分が悪いと判断したミザリーは撤退を指示する。ジャルールは追いかける素振りを見せたが、それをクリスに静止された。


「だめよサンドッ! 約束でしょ!」

「分かってる!」


 敵意を向けた相手には容赦はしない、だが、無抵抗や撤退の姿勢を持った者への攻撃はしない。

 この戦闘前に置けるサンドとクリスとの約束であった。


「だが、コイツだけはッ!」


 ジャルールはアイリスに斬りかかる!だが、ヱラウルフ同様全てを弾かれる。


『剣術は大したことないわね……』


 そう判断したミザリーは撤退するにせよ、何とか情報を持ち帰ろうとジャルールへ通信を入れる。


「随分と綺麗な機体ね……なんて言う名前なのかしら?」

「ジャルールよ! 私が作ったんだから綺麗に決まってるでしょ!」


 少し高慢な少女が応じた。『私が作った』という言葉の真意を汲み取りミザリーは言う


「あら、乗っているお嬢さんも綺麗そうね、どう? 解放軍に入る気はない?」

「入る訳ないじゃない! アンタ馬鹿!?」


 って言うかねぇ! とクリスは続ける。


「私の大好きなユグドラシルをあんなチンケな薬に変える連中がまともなワケないじゃないッ! 使うアンタもどうかしてるわ!」

「流石ねぇお嬢さん。まさか『アンブレラ』にまで辿り着くなんて」


「あんぶれら? 兎に角ねぇ、人殺しのアンタなんかこのジャルールがやっつけてやるんだから!

ていうか何よ!『アンブレラ』って!

 ちょっとかっこいいじゃない! ますます気に食わないわ!」

「クリス……論点ガズレテマス」


『余計なことを言ってしまったかしら……』

 ただ、1つ確かなことがある。ミザリーは数分前に決めた覚悟を再び決め直す必要があった。


「アンブレラが知られている以上、あなた達は生かしてはおけないわね。残念だわユリウス……死んで頂戴」

「「こっちの台詞だぁッ!」」


 左右よりミザリーに挟撃を仕掛ける。ジャルールは七色の剣を、一方ヱラウルフは連撃出来るよう二刀流でアイリスに斬りかかる。


ーーガキン! ガン! キーンッ!………


 ミザリーは器用にアイリスの花弁と鉤爪で攻撃を弾いていく。ユリウスは奇妙な感覚に襲われているのを隠せなかった。


『サンドには……悪いが』


 ユリウスはそう前置きした上で考える。彼は自身の剣術に圧倒的自負がある。ミザリーについては噂でしか聞いたことは無いが、自分を含めた挟撃を抑えられるとは思えなかった。


 そして、何とも言えぬ違和感が自分を包み込む。この気持ち悪さはなんだろうか?ユリウスは答えが出ぬまま、連撃を仕掛けていた。


「そろそろ気づいたかしら?」

「!?」


 強烈なプレッシャーがサンドとユリウスを襲う! 何かが来るッ! 直感でそう感じた二人は堪らず距離を取った。

 ただ、それこそがミザリーの術中だった。


「いい子ね! これで終わりよッ!」


 アイリスの背にある花弁が機体全体を包む、花開く直前の姿となったアイリスは集束と拡散を混ぜ合わせたエネルギー砲撃を放つッ!


ーーギュウウウウウイイイイイイン


「こんなもの!」

「……無駄だッ」


 しかし直後、二人はこの違和感の正体に否応なく気付く。


「「!!!!」」


『機体が……鈍いッ!』


「集まれッ!」

「……うぉおおおお!」


「サンドッ! 一個はユリウスさんにッ!」


ーーズシャアアアアアアアアン


「「ぐあああああ!!」」


 ーー両機は閃光に包まれた

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