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おそろしい衝撃が全身を駆け巡った。
感電したような衝撃についでしびれが体を貫く。
「拒絶反応だ! これだから強制離脱は嫌なんだ。ララのやつ、下手打ちやがって! ああ、もう! どうしてこういうときにザードもロデューもいないんだよ!」
誰かが叫んでいる声がすぐ側で聞こえた。
聞いたことのない声だ。
目を開けようとするが、瞼が異様に重く力が入らない。
体も自分のものではないかのように指の先一つ動かせなかった。
「誰でもいい、誰かベレトを呼び出してくれ! さっき書いた譜の対象を変えるだけでいい――って、アーユス! そこの計器には触っちゃダメだ!」
ばたばたと走り回る音が何度もそばを横切る。
何人もの人間の声が入り乱れ、ひどく騒がしい。
「くそ! どうしてシオンのやつ、こういうときに限っていないんだ! ――誰か! アーユスをそこの機士様から離してくれ!」
隣に誰かいるのだろうか。
子供じみた物言いの声とそれをたしなめる女性や男性の声が聞こえる。
瞼にあけようと力を入れると、ほんの少しだけ持ち上がった。
けれど本当にわずかなスペースのため、視界は白濁していて全く見えない。
「――わかったアーユ、ちょっとの間でいいから静かにしていてくれ。機士様の隣にいていいから。だからそこの計器類には触るな。いいな、絶対だぞ」
足音とともに人の気配も去り、ざわめきは遠くのほうに移動した。
緊張感がなくなったのか、急に頭がぼんやりとし始めた。
「――いたいの……?」
その声は思いのほか近くに聞こえた。そしてひどく懐かしいような気がした。
誰なのだろう。
目を手でこすろうとしても、その手が自由にならなかった。
強烈なめまいが襲い、意識が急激に遠のくのを感じた。




