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「随分と素直なのね。あの西天王の親友とは思えないわ」



 目の前に現れた女はすでに簡装状態だった。

 密度の濃い理子(りし)が華奢な体の周りを覆っているのがはっきりとわかる。


 周囲に無数の刃を漂わせた女を見ながら、逆らわなくて良かったと心の底から安堵した。



「わたくしは南天八将の一、ロスワイセ-222123。一応確認するけど、あなたはジェダ-282154ということでよろしいかしら?」



 おもむろにうなずくと、女はいびつな笑みを浮かべた。



「つがいと元恋人が犯罪者だなんて憐れなレンリーズ」



「レーイ? ……それはどういう意味ですか?」



「こちらのことよ」ロスワイセは薄く笑って、顔を階上へと向けた。「ゼロはいずこにおいでかしら」



 ゼロはエンセライのIDの通り名だ。


 聞いた瞬間、背筋に震えがはしった。



「エンセ? 何故――」



「北天王ロデルフォは西天での内乱に関与した罪に問われ、天の火により浄化された。西天筆頭楽師アルダとそのつがいセインにも同等の罪が科せられている。けれど慈悲深き天は現世の命をもってしてその罪をあがない、転生を許された」



 すでにある文章を読み上げるような淡々とした口調でロスワイセは告げた。



「これが今回の制裁の火が落とされた理由よ。楽師夫妻の長子であるあなたやこの騒動の発端となった西天王は今後アズライールからの思考調査が入る予定。関与が疑われでもすれば最適化行きでしょうね」



 ではやはり西天王推挙の件が原因で天の火が落ちたのだ。


 ロスワイセの言葉を聞きながら、どこかひどく遠い場所でガラガラと何かが崩れていくような感覚をおぼえた。



「上層はそんなことよりも、信じて預けた下層の民が天の火の浄化対象になるという此度の事態を非常に憂いておいでなの。だから上はかねてからの予定を早めてすぐにでもゼロを上層送致するよう指示を出した――」



「――だから今日シュカが来たの?」



 階上から呆然としたような声が降ってきた。



「エンセ? 来るな! 下がっていろ!」



 思わず振り返りかけた咽喉に冷たい刃が食い込む。



「動くな」凍りつくように冷え切った声が耳元に響く。「次に動けば容赦なく切る」



 恐る恐る同意を告げるとロスワイセは満足したように顔をあげ、それまでの表情が幻か何かのように優美な笑みをたたえながら、エンセライにこうべを垂れた。

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