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「大歓迎だな」



 斑鳩(いかるが)(とおる)に見せるようにドアを大きく開け放った。


 屋上の空間ほとんどを埋めつくすほどの『それ』らがいた。


 玄関口で見たときと同じ、いやそれ以上の数の『それ』らがふたりを待ち構えている。


 その数はあまりにも多く、屋上は闇よりも暗い黒で染まっていた。

 雲で覆われた夜空が明るく見えるほどだ。



「…こんなに……」



「邪魔するのなら倒せばいい」



 ふっと笑みを浮かべ、斑鳩はかたわらの壁に手をついた。



「基準の九」



 とたんに屋上一帯に巨大なコンクリートの刃が出現した。


 屋上はたちまち針山のようにせりあがる。


 もうもうと立ち上がる煙を見て、竜はやったと思った。

 だが煙が晴れると同時に、それはぬか喜びであることを知った。


『それ』らはまだほとんどが生きていた。



「ちっ、学習したか」



 予測範囲内だったのか、斑鳩は大してショックを受けた様子もなく舌打ちした。



「二十九。範囲は九」



 ふたたび壁に手をつけた。針のようにせりあがった屋上の突起からさらに鋭い刃が無数に突き出す。


 さしもの『それ』も予想外だったのか、いくつもの声があがり、砕け散った。

 だがそれでも『それ』らの数は減ったように見えなかった。


 数が多すぎるのだ。


 いくら斑鳩が強くとも、これだけの『それ』ら相手には分が悪いような気がした。



 駄目かもしれない。



『それ』らの数を減らすために次々と攻撃を仕掛けていく斑鳩の後姿を見ながら、竜は諦念を抱いた。



 斑鳩は目にも留まらぬ素早さで『それ』を倒していった。

 武器の刃が闇のように(こご)る『それ』らの中で銀色の光を放って一閃する。


 斑鳩の動きの全ては見えなかった。型のようなものはない、自由な動きだった。細い体がしなやかに伸び、まるでダンスを踊っているかのように見える。


 けれどそんなふうに幾ら倒しても『それ』の数は尽きることはなかった。黒い霞が間を置いて消え失せ、再び染まる。



 埒があかない。



 竜が感じたそのとき、目の前で黄色い光がはじけた。



「何……だ?」



 目を細める竜のかたわらで、斑鳩が武器を閃かせながら怒鳴っている。



「遅い! こっちはもう混戦状態になってるんだぞ。もっとはやくに結界を張れ!」



 云いながら、斑鳩はまたよくわからない呪文を唱えて『それ』らを蹴散らすと、竜の腕をつかみ、屋上の中心へと歩いていった。

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