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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Gift

作者: 朝陽乃柚子

息も絶え絶えになっていた。まる1日以上の激痛に耐え、カーペットにその跡が刻まれている。


 「どうしよう......」


 違和感を感じた時にはすでに遅かった。もう前に進むしかなかった。だがゴールへ着いた時、彼女に突きつけられた選択肢はもはや、人間を辞め、畜生へと成り下がるものしか残っていない。

 

 小さな首にゆっくりと手を乗せる。ここから少しでも力を強めれば、すぐにか弱い命の灯火は消え去るだろう。


 全てを捨てる覚悟を決め、力を込めようとした時、背後で、何かがぶつかる音がした。


 思わず手を離し背後を見ると、真っ白で大きい、藁のような素材で作られた箱が無造作に転がっていた。


 彼女が思うように動かない体で近づき箱をみると、中には小さな毛布と、その上に1枚の紙が載せられていた。


 「最も大事なものを10年間だけ、あなたの代わりに預かります。あなたの祈りによってこの中の物は生かされます」


 信じられるはずがない。が、かといって、選択肢も他にはない。どうせ地獄に落ちるのなら、せめてやれることをやろう。彼女は小さな命をそっと両手で抱き、真っ白な箱へ近づきゆっくりと横たえた。



 それから彼女は一生懸命日々を生きた。今自分に出来ることを精一杯やった。そして毎日祈りを欠かさなかった。どれほど辛く、厳しい状況に自分が追い込まれようとも、いつの日かまた償える時が来ることを信じて。





 大地が色づき、生命の息吹が躍動を始める頃。


 彼女は、待っていた。これからを共に生きて行くパートナーを。


 花びらがわずかに大地を染めるほどの時間が経った頃、後ろから声がかかった。


 振り向くと、長身で細身の体つきの男性が立っていた。


 私が選んだ相手だ。


そしてその横で手を握り小動物のような大きい目をした少女が、彼女を見ていた。


 同じ目線まで腰をおろし、声をかける。


 「初めまして」


 すると少女は、つぼみから咲き誇る花のように笑顔になり、こう言った。


 「初めてじゃないよ。久しぶり、お母さん」

 


 

 


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― 新着の感想 ―
[一言]  不思議な雰囲気にひたれて読めてよかったです〜。  色々、読者に考える余地があるのも、いいと思いました。
[良い点] あえて詳しく描写せずに読者に想像させられる、ちょうどいい描写のバランスが良いと思いました。 [一言] ハッピーエンドともバッドエンドとも違う、たしかに先は読めるけども退屈でもない、まとま…
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