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カノン  作者: しき
第5.5話
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風音ワングランプリ? 四日目乃参


 とか言っている内に、セッティングから発動まで全部終わったようだ。相変わらず早い。


レスタ「よし、じゃあこの機械の内容の説明をしますね。風音さんは「料理は愛情」みたいな言葉って、聞いた事がありませんか?」


 風音の頭に付いた配線を外しながら問う。


風音「よく言うね。僕の国でも普通にある言葉だけど、メリオエレナでもそういう言葉があるんだ?」


 メリオエレナとは、レスタとルミナの姉弟と、あと今この場には居ないがカノンの乗組員である神楽歌縫かぐらかぬいの故郷である星の名前だ。


レスタ「僕の星だけじゃなく、不思議な事にこの言葉はいろんな星に元々存在します」


風音「へぇ・・・面白いね」


 宇宙あるあるみたいな? トリビアともいうのか?


レスタ「それでですね。この作品は脳の味を判断する部分に作用し・・・」


風音「ちょっと待って? 味を感じるのって脳だっけ? 舌じゃないの?」


アリエイラ「そりゃ味を感じるのは舌ですよ。レスタ君が言っているのは判断の話です。 食べたものを美味しいかどうか判断するのは脳です。ですからこんな事は言うまでもない事ですが、強い刺激物など脳が判断するよりも先に舌が拒否反応を示す様な一部の例外を除き、基本的に好き嫌いは舌ではなく脳が判断しています。舌は感じた情報をありのまま伝える器官です」


 笑顔のまま、何を当然の事を聞いているのですか?・・・と言うような口調で説明するアリエイラ。


風音「そうなんだ。あ、どうぞ続けて?」


レスタ「はい。要は舌で美味しいかどうか感じる云々うんぬんより、脳がこの味を好きだと思えば、それはその人にとって美味しいという事です。 この作品は、全ての料理をそういう風に感じるようにする機械です」


風音「何だろう・・・暴力的な話を聞いてる気がする・・・」


 脳に働きかけて錯覚さっかくさせたら勝ち、みたいな話?

 ただまぁ、やはりレスタというか。

 他二人とは違って、どう転んでも害の無さそうな内容だった。


 作品内容を聞いて、ルミナがこらえ切れずに吹き出す。


ルミナ「ぷっ・・・ぅふっ。 いや・・・失礼」


アリエイラ「こらこらルミナ。気持ちは分かりますが、吹き出して笑うのは失礼ですよ。私の様に心の中で嘲笑ちょうしょうするにとどめておくのが礼儀です。ねぇ息吹?」


息吹「はい。少々失礼かと。 初日の主の作品であるポンコツ製造機。人をポンコツにしてしまうという内容はともかく、あれは被験者ひけんしゃにとって凄まじい変化がある事は確かです。そしてルミナさんの、好きな夢を見る機械。あらゆる面で非常に高い水準であり、純粋に凄かったです。 それらに対して今日の作品の・・・「この機械は凄いよ~、料理が美味しくなるねんで~」・・・っていう、その素朴そぼくさに笑ってらっしゃるのですよね?」


ルミナ「ふっ・・・! ご、ごめん・・・ふふっ。 説明しないで息吹・・・素朴さとか・・・言わないで・・・」


 口を押さえて必死で笑いを堪えるルミナ。


 ここで急に息吹がジェスチャーではしを持って、何かを食べるような動作。


 そして何かに気付いたように、ハッとした表情を作る。


息吹「機械のおかげでひじきが・・・バリ美味しい・・・!」


ルミナ「ぶふっ・・・!!!」


 堪え切れなくなって吹き出すルミナ。


 レスタが顔面を紅潮こうちょうさせてプルプル震えている。

 そんなレスタに対して。


風音「ははっ。耐えて耐えて。 これがさっきのあおりの返礼へんれいだよ。 真面目な話をすると、僕は目の付け所は良いと思ってるよ。要は三大欲求の満足度を上げようって事でしょ? 睡眠中に楽しもうっていう作品だったルミナと、食事を昇華しょうかさせようっていうレスタの作品な訳だ」


 降臨こうりんした女神にすがる様に、キラキラした目で風音を見るレスタ。


レスタ「その通りです。 ありがとうございます・・・。 本当にもう・・・この場でまともな人は風音さんだけだと思ってますよ。 で、基本的には何でも美味しいと感じるようになる訳ですが、一応オプションがあるんです。最初に言った「料理は愛情」っていうやつです」


風音「愛情がこもっている料理ほど、更に美味しくなるとか?」


レスタ「そう・・・なんですけど、正直作られた料理から愛情を検知するのは無理でした。その料理に愛情が込められているかどうかなんて、料理を見ただけで分かる訳が無いですし。たとえ冷凍食品ばかりしか入っていない弁当でも、親が子供の為に仕事で忙しい中頑張って作ってあげたなら、十分愛情が入っている訳です。 料理の手が込んでいるか、綺麗に整っているかそうでないか・・・そういった情報だけで愛情を数値化するのは無理ですよね」


風音「確かにね。これは愛情が無いな・・・って一目で分かる弁当の方が珍しいし。じゃあ愛情がこもっているかどうかの判断って?」


 何を基準に決めるのだろうか?


レスタ「口にする料理を、「自分以外の誰かが自分の為に作った」という事を風音さんが認識すれば、その幸福感に反応して何でも格段に美味しくなります」


風音「なるほどね」


 その料理に対する自分の感情が基準か。まぁ大雑把おおざっぱだけど、基準としては間違ってないか。


 しかしルミナはまた吹き出す。


ルミナ「ぷっ・・・基準が・・・雑っ・・・・ふ、くっ・・・」


 実はさっきレスタが「愛情を食事から検知するのは無理でした」って白旗を挙げた時からずっと、必死で笑いを堪えていた。

 もう敗北宣言してるよウチの弟! っていうワードが頭の中を駆け巡りだしたらもう、全身震えて我慢できなくなってきた。


アリエイラ「ちょっと笑い過ぎですよルミナ。・・・ところで、息吹は私が愛情を込めて作ったのですけど、食べたら美味しいと感じるのでしょうか?」


ルミナ「ぶふっ・・・・アリちゃ・・・もう・・・やめてあげて・・・」


 ちょっと涙を流しているルミナ。


レスタ「くっ・・・」


 茶化ちゃかされたレスタが再び耐える。


 アリエイラがあおり合戦とはいえ冗談を言っているのは珍しいので、風音も乗ってあげる。


風音「じゃあちょっと息吹をかじってみる?」


 息吹の目がキラリと光る。


 息吹が風音の前に移動し、風音の顔面の前に自分の顔を差し出す。


息吹「どうぞ」


 息吹はマジでやっているようだ。


風音「いやまぁ冗談だけどね」


 目の前にある息吹の頭をポンポンと撫でておく。


息吹「そうですか・・・」


 残念そうに元の位置に戻る息吹。


風音「じゃあ結果報告は明日でいいかな。朝ご飯まだだし、早速食べに行ってみようかな」


 レスタの対戦相手であるルミナとアリエイラからの評価は散々だったようだが、風音としては楽しみでもある。

 作品の凄さとかそういうのじゃなく、単純に考えようよ。

 これから食べる料理が美味しくなるなんて、凄く素敵な事じゃないかな。


 今食堂では癒々ゆゆさんが、カノンの全員分の料理を作って用意してくれているはずだ。

 他人が自分の為に作った料理なら格段に美味しい、とか言われたら楽しみにもなるだろう。


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