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カノン  作者: しき
第8話
200/206

聖蝶 44


 核爆発が起きた?

 核兵器は鞍馬たちが処理したんじゃなかったのか。


風音「いやいやいや・・・まだ核兵器あったの? トラスさん。過去に行ってミスルさんが核を積んでるところ見てきたんだよね? ミスルさんって核兵器を二個積んでたの?」


トラス「いや・・・大きな包みが一つでしたけど。 でも最新の小型核兵器がどれだけコンパクト化しているのか分かりませんしね・・・。 あの包みに二つ入っていたのかな・・・でも土地の核汚染が目的なら、確かに鞍馬さん達が乗る宇宙船だけじゃなくその場所にも仕掛けて当然か。むしろ土地に仕掛ける方が本命って言ってもいいですよね」


 宇宙船に仕掛けられた爆弾が発動後十秒程度で爆破と聞いていたので、地上には仕掛ける必要が無いと勝手に思い込んでいた。

 が、風音は首をひねる。


風音「そうかな・・・? 宇宙船が動いてから十秒で爆発するなら、一個で十分な気もするけど。地上に仕掛けてるのと変わんないでしょ。 二個も仕掛けるなんて・・・」


トラス「治安組織職員なんて、慎重な性格の人が多いですからね。石橋を叩きまくるって事もあるかもしれないですよ? それともそんな首をひねるほど、何か引っかかるような根拠とかがあります?」


風音「いやだって核爆弾なんて高額たっかいでしょ。もったいないじゃない」


 一個で済むなら一個でいいだろ。経費削減という観点から見ても。


トラス「・・・そんな庶民目線で疑問を持ってたんですね。人道的な観点から核なんてポンポン使おうとしないだろうとか、そういう意見でも出るのかと思ったのに」


風音「シエロ関係者は人道的な観点なんて持ってないから、むしろポンポン使おうとする事には何の疑問も無いよ」


ランザ「言いたい放題だな貴様」


 シエロ所属のランザとしては、ずいぶん勝手な偏見を目の前で言われて少々ご立腹だ。


風音「むしろお金の方が気にならない? だってたった七千円を払うのをケチる奴がトップ層に君臨くんりんしてる組織で、核兵器一個を無駄に使うかね?」


 そして個人攻撃を仕掛ける風音に。


ランザ「言いたい放題だな貴様」


 鞘を構えるランザ。

 それをトラスが、落ち着いて落ち着いてと手を振って止める。


風音「まぁ冗談はこの辺にして。 でも・・・その爆弾って何がきっかけで発動したんだろうね? もう関係者全員地球に帰ってきてるのに。 やっぱり時限式だったのかな。でも危なくない? 核爆弾の時限式って」


トラス「時限・・・の可能性が高いですけど、核ですからね。 間違っても仕掛けた自分がその場にいる間は、爆発させたくなかったでしょうし・・・。 例えばミスルの乗った宇宙船が飛び立ってから、数時間後に爆発とか?」


 暗い場所では動かないが、日光に当てると作動するとかいう凄く単純な構造だったり。

 それを自分の宇宙船の下に設置し、飛び立って日に当たると起動し始めるとか。そうして時限装置が起動して、数時間後に爆発。


風音「あぁ。 仕掛けた時点で時限発動じゃなく、発動方法を別で事前に決めておく時限式爆弾ね。多分鞍馬たちの船に仕掛けられたのも、それに近い形式だもんね。 で、気を失ってるミスルさんの代わりに、ランザさんがミスルさんの宇宙船を自動運転で帰還させたから、今発動したと」


 二人がランザに注目する。


ランザ「いやそんな・・・私が原因みたいに言われてもな。 他星に治安組織の宇宙船を放置するわけにいかんだろう。あの状況だと、自動帰還させるのは義務だ」


 風音がブンブンと手を振る。


風音「違う違う。そういうつもりで言ってませんて。ランザさんが原因だなんて思ってないから。ランザさんは間違った事は何もしてませんよ。 いや素晴らしい、超筋肉からくる判断力の高さがえげつない! 肩の筋肉が凄すぎて、肩にちっちゃいジープが乗ってるのかと思ったよ!」


 筋肉を褒めると上機嫌になるみたいだから、大袈裟に褒めておく。


トラス「いやそれはもはや誉め言葉ではないのでは?」


 ジープって。


ランザ「いやいや・・・/// 褒めすぎ褒めすぎ///」


 喜んだようだ。


トラス「え・・・? 筋肉って知性を奪うの・・・?」


 トラスも脳筋の怖さに気付き始めたようだ。


 そして改めて携帯を見ながら頭を抱えるランザ。


ランザ「ふぅ・・・。でもこれで真実が遠のいたね・・・。 ただトラスがシエロに切られたのかどうか判断するのは簡単だ。 今後本部から今まで通り私経由でトラスに指令があるならトラスの敵はシエロ内のほんの一部で、本部はまだトラスを味方だと思っているという事だ。 それが無く掃除屋が送られてくるなら、切られたという事だな」


トラス「いやいやそんなの逃げるよ。 指令やランザの確認を待ってて掃除屋が来たら、僕の人生詰むでしょ。 僕からシエロにコンタクトを取ったら、敵だった場合騙し討ちを喰らいそうだし」


ランザ「・・・ふぅ。私としては、トラスに治安組織に残ってほしいけどね。メンバーを変えて、今まで通り世界の為に頑張ってほしい」


 トラスにしか捕まえる事の出来ない犯罪者や、解明できない不正なんていくらでもある。

 その被害者たちの為にも、トラスには頑張ってほしいが。


トラス「でも残ろうとして連絡を待ってる時に掃除屋が襲ってきても、ランザは護ってくれないんでしょ?」


ランザ「それは護らないよ。 彼らも与えられた仕事を全うしようとしているだけだから。 でもそうならない様に、出来るだけ早めに私が本部に確認する」


トラス「今から電話で、って事?」


ランザ「いやこの件は、本部の上層部の複数の職員から聞き取りが必要な件だからな。 本部に行って話を付けないといけない事案だ。 電話では無理だな」


トラス「ランザが本部に行ってる間に掃除屋が来たらどうなるの?」


ランザ「ふぅ・・・。 別にそれは質問するほどの事でもないだろう。 その辺にトラスの死体が転がるだけだ」


トラス「・・・じゃあもう私の事は放っておいて、その無駄に付いた腕の筋肉とでも喋ってて?」


ランザ「無駄に付いた筋肉って・・・///」


 照れているランザ。


風音「いや・・・真実は知る事が出来そうだよ」


 二人の会話中に携帯に連絡があったので、携帯を見ながら言う風音。


ランザ「どうやって?」


風音「盗聴防止の為に、さっきと同じでトラスさんの方の携帯に繋いでもらおうか」


 風音が携帯をいじってから、しばらくしてトラスの携帯が鳴る。

 その電話にトラスが出て映像通話にして、三人に映像が見えるように携帯を机に置く。


 そこには鞍馬が映っている。


鞍馬「お疲れ様です艦長」


風音「いやごめんね鞍馬。鞍馬と零武の体を犠牲にするような仕事を頼んでしまって・・・」


鞍馬「いえいえオリジナルはこの通り無事ですから気にしないでください。ほら、零武も」


 鞍馬に腕を引かれるようにして画面に映る零武。


零武「零武は元気です。気にしてませんから」


風音「あ、やっぱり二人ともそっちがオリジナルの体なんだね」


鞍馬「あら? 自動運転中の私がそう言ってませんでしたか?」


風音「あっちの鞍馬が、この体はオリジナルかもしれない。この体が無くなると今まで体に刻まれた歴史が無くなってしまう。とか、なんかそんな事を言ってたからさ」


鞍馬「それは本当に私が言ったのですか? 私はそんな嘘を言いませんが・・・」


風音「だからもう一度歴史を体に刻むために、もう一回PV出演の時にやった赤ちゃんプレイをしてくれとか言ってたよ」


鞍馬「・・・・・・」


 少しの間があってから、鞍馬の返答が帰ってくる。


鞍馬「あら・・・? そう言われると記憶がはっきりしませんね・・・私のオリジナルの体は核と共に散った可能性が出てきました。 そうなるとこの体には艦長との思い出が無いという事になる・・・これは由々しき事態ですよ。すぐにでもやり直しを希望します」


 堂々と嘘を吐く鞍馬と。


零武「そういう事なら、私の体は間違いなく爆発した方がオリジナルだった。だから今まででてもらった分を全部、もう一回撫でてもらわないと割に合わない。撫でてもらった記憶だけで体が体験してないなんて、言うなれば詐欺みたいなこと。艦長が詐欺師だと言いふらされたくなければ、今日中に撫でに来てください」


 詐欺師呼ばわりまでしてきた零武。


風音「そういう事なら、て。 もう嘘を隠そうともしてないじゃないか」


 ふぅ・・・とため息を吐くランザ。


ランザ「部下から愛されているようで何よりだ。 それよりこの二人が真実を知っているというのか?」


 風音に尋ねたが、鞍馬が答える。


鞍馬「ええ。 千丸さんはまだ寝ていますが、私もフォトマットで過去を見てきましたので。全部覚えていますよ」


ランザ「過去を見た・・・?」


 どうやって・・・? と少し考えて。


ランザ「まさかトラスの姿をした琴千丸は、トラスの能力を使えるのか?」


 そうとしか考えられない。


鞍馬「ええ。すみません隠していて。 あの時点ではまだランザ氏がトラス氏の敵か味方か不明でした。ですのでそれは隠して事情を説明させて頂きました。 艦長? 今こうしてその秘密を明かし一緒に通話をしているという事は、取り敢えず彼女は味方であると判断していいのでしょうか?」


風音「うーーーん・・・とね。本人の前で言うのもアレだけど、それはまだ分かんない。僕にとっては味方でも敵でもないとは思うし、個人的には凄く良い人だと思ってるけどさ。 でもトラスさんの敵である可能性はまだあるかもって感じ。 でも千丸と鞍馬と零武が無事に戻れたんなら、もうランザさんがトラスさんの敵であってもこっちでどうにかするから」


 ここまで必死でそれを隠していたのは、ランザが敵だった場合バレたら無防備な三人が襲われる可能性があったからだ。

 その三人がもう無事にカノンに帰ったなら、ランザが敵か味方かを考える事に時間を割くより、起こった事実を伝えてもらうのを優先でいいだろうという判断だ。


鞍馬「そうですか。 では見た事を全て伝えますね。一言一句違わず正確に再現できますので。 まずはトラスさんの父が「こんな森の奥で事件が起こったのか?」とハセイ氏とニュクス氏とヒナバ氏という三人に話しかけました。 そして―――」


 フォトマットの過去で見てきたほんの数分の出来事を、二十分くらいかけて説明する。

 表情や動作など、細かい部分の説明も入れるとどうしても長くなる。


鞍馬「・・・という所でしょうか」


 話が終わって。


トラス「・・・・・・」


ランザ「ふぅ・・・」


 特に二人が何も言わないので、風音が反応しておく。

 

風音「ありがとね鞍馬。 なるほどねぇ。でも残念ながらその情報だけじゃトラスさんの敵がシエロ全体なのか、シエロの一部の人だけなのかが分かんないね。 ただシエロ全体かあるいは一部の人がトラスさんの能力を使って、星の解析実験を続けようとしていると。 これが知られたくなかった事だろうね。 これさえ知られなければトラスさんが解析実験の真実を知ってしまっても、ランザさんが言ったように「現在は解析実験は凍結して生物学として調べている」っていう方便で誤魔化せるから」


 フォトマットの過去を聞いて分かったのは、トラスの父を殺したのはニュクスとハセイとヒナバという三人組だった事。

 父はその能力を使い過去を見る事で星の解析をしていた。解析した星を意のままに操る(言うなれば星全体の奴隷化)実験と分かっていて、星の解析に協力していた事も明らかになった。

 しかしそんな非人道的な実験に協力した理由は、全宇宙を飛び回り数千億にも及ぶ数の人類を殺してきた怪物を倒す為だった事。

 そして父が殺された理由。そんな実験を、その怪物を倒した後も続けようとしている奴がいる事を知って、約束が違うとして離反りはんしようとしたから。

 これらがトラスと風音に関係のある事柄だ。


 風音達に直接関係が無いものとしては、その過去での掃除屋の三人の行動の数々。

 ハセイが何の関係も無い一般人を三人殺した事。

 ニュクスが上司を二人殺害しようとしていた事。

 ヒナバは父を殺した仇ではあるものの、他の二人よりは少しまともな人物。ぐらいか。


 風音がトラスに気を遣って声をかける。


風音「トラスさん、大丈夫?」


トラス「・・・ええ。今は自分でも自分の感情が分からないって感じですね。父は全世界の為に。父を殺した掃除屋は組織の為に。自分の手を汚しながら、ただ実直に自分がやるべき仕事をした。 第三者から見ればそう映るのでしょうね。私は今・・・この話の何に、どこからどこまでに憤りを感じているんでしょうね」


 風音がランザを見る。


風音「ちなみにランザさんは・・・」


ランザ「シエロもしくはシエロの一部職員が、今も星の解析実験を続けようとしている事か? もちろん初耳だ。 実験は星の子討伐後に凍結されたと聞いている。さっき我々聖蝶軍はシエロで起こる全ての事柄を知っていると言ったが、それは下の者では知り得ない通達も全て受け取る事が出来るという意味だ。 組織内で秘密裏に行われている事などは、秘密にしている者が口を割らない限り私に伝わる訳が無い」


 嘘を言っているようには見えないので、肯定して続きを促す。


風音「そりゃそうだね。 その上で、今の話をどう思ってるのかを聞きたいですね」


ランザ「ノーコメントとしておく。 そもそも全宇宙の支配というのも、ニュクスが予想で言っただけだろう? 今のところ、どこまでが事実なのかが判断できない。 貴様やトラスの立場であれば自分が思うように判断すればいいが、私は聖蝶軍という地位に居る。 組織が関わる事に軽はずみな発言は出来ない」


風音「なるほど。 じゃあトラスさんはこれを聞いてどうするのかな?」


 もはや怒りを通り越して、うすら笑いを浮かべているトラス。


トラス「言うまでもないでしょう。 シエロとはこっちから手を切ります。宇宙の支配でしたっけ? その野望がシエロという組織の野望なのであれば、呆れてものも言えません。 仮に一部の者の馬鹿げた思想だとしても、そいつに私の能力が利用されるのはゴメンです」


 もしシエロ自体はトラスの味方だとしても、現状暗躍している者を抑える事が出来ていないという事になる。

 なら組織が味方だからといって、今後も協力しましょうとはならない。


風音「じゃあすぐにでも中央に行く感じ?」


トラス「そうですね。そうしましょう。 ランザ、悪いけど私はあなた達と一緒に仕事は出来ない。 今までありがとうね」


 頭を抱え、ため息のように大きく息を吐くランザ。


ランザ「ふぅ・・・。 そうか。寂しくなるね」


 ランザがトラスに向かって拳を上げると。


トラス「うん。じゃあね」


 トラスがその拳の背面に向かって、ポンと自分の拳の背面をぶつける。

 その行動が風音には理解できなかったが、たぶん別れの挨拶みたいなものだったのだろう。


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