6.ついてくる
「ただいま~」
「お帰り。遅かったね」
「ごめんなさい」
その日、小学生だった私は、友達と少し遠く迄行き過ぎて帰りが遅くなった。おばあちゃんは、怒ると凄く怖いから靴を脱ぎながら顔色を見たら、なんだか怒っているとは違う、でも不機嫌な顔をしていて。
そして聞かれた。
「今日、何処で遊んできたんだい?」
この時、遠く迄行った事を言ったら怒られると思った。でも、真っ直ぐみてくるおばちゃんの目に嘘はつけなくて。
「…きりどおし」
家から出て坂をひたすら上がった先に暗い山道があり、そこは切通しと言われていて、ずっと歩くと隣の市迄つづいていた。
この道は、獣道に近く、進んで行くと人が並んで通れないような場所もあった。
けれど日当たりのよい場所もあり、下には線路が見え電車が通り季節になると菜の花も沢山咲き、人があまり通らないこの場所はお気に入りだった。私は、そこは暗くなると危ないからと注意されるのかと思っていた。
だけど違っていた。
「──そこで何をして遊んだ?」
何を。
「…なみちゃんとお花を大きな石の台の上にお供えした」
その道には途中で開けた場所がかる。
山の木の葉のせいなのか、そこはいつも真っ昼間でも暗く、そこには大きな石、大人の人よりも、もっと大きい長くて平べったい石が置かれていて、私となみちゃんは、そこはお墓なのかなと思って摘んだ綺麗なお花を台のようになっている石の上に置いた。でも何も、よじ登ったり、ゴミを捨てたりとかもちろんしていない。
悪い事なんてしてないのに。
「手を合わせたね」
「…うん」
おばあちゃんは怒っていて、しばらく睨まれた後、ため息をついた。
「不用意に手を合わせるんじゃないよ。あと可哀想と思ってもいけない」
「…なんで?」
「ついてくるからさ」
「つく?」
「わかったかい?」
「…はい」
何も言わせないような口調に、私は渋々返事をした。
「早くお入り。手を洗いなさい」
おばあちゃんは、この話はおしまいだと言うように背を向けて部屋に行ってしまった。
あれから何年かしてお母さんと話をした時、ふと思い出しておばあちゃんに言われた事を話してみた。
「あそこ嫌だよね。散歩で犬は行きたがるけど行きたくないのよねー」
おばあちゃんといい、お母さんといい、二人は何を感じるのか。なんとなく仲間はずれな、でも仲間外れでもいいかもと私は思った。