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5.修学旅行にて

高校生の時、修学旅行先での初日の夜。

まだ始まったばかりなのに早朝からの集団行動で楽しくもあったが、長時間のバス移動など精神的にも疲れた私は隣の部屋に集まるという誘いを断った。


「ごめん。やっぱ先寝る。明日はその分夜更かしするよ」

「私も~」

「えーなおも?」

「ちな~」


ちなが友達に半開きのドアから呼ばれたので、行ってと促した。


「行きなよ」

「じゃあ行ってくる」

「うん、お休みー」


大部屋は私となおの二人だけになり一気に静かになった。なおは、直ぐに敷かれた布団を整え準備をして立ち上がって私に聞いてきた。


「私、明るいと寝れないんだよね。電気消していい?」

「うん」


私も暗いほうが寝やすいから頷いた。

なおが、おばあちゃん家で見たような電気から伸びている紐を引っ張りながら、私に寝る宣言をした。


「お休み」

「…お休み」


外の明かり以外はなく、真っ暗になる。

私は、イヤホンを耳にして何か聴きながら寝ることにした。普段は寝る前なんて聴かないけれど、この静けさが、いつもと違う夜がなんだか落ち着かなかった。


馴染みのある曲を耳にしていると段々と眠くなってきた。うつらうつらしながら、どうせなら海外がよかったよ。今時海外だよなぁ。心の中で愚痴り、それも過ぎると本格的に眠くなってきた。


そんな時、なんだか隣の部屋が急に騒がしくなった。どうしたんだろう?なんだか盛り上がっているという感じじゃない様子だ。でも、もう眠い。


「「ねぇ!!大丈夫?!」」


バタバタと数人の足音と同時にドアが開けられ友達が声をあげているようだ。

その時、私は聴いている音量をかなり上げていたし、なにより起きて会話するのが面倒だった。


私は寝たふりをした。友達のなおも寝たのか起き上がった気配はない。


「あれ?寝てる?」

「嘘?!」


そんなような言葉を拾いつつも私は寝落ちた。

そして次の朝、昨夜の騒ぎの原因を知った。


「昨日夜、呼んだでしょ?窓から。大丈夫だった?」

「昨日?呼んでないよ?」

「…助けてってずっと叫んでいる声がしたんだよ!ね?」

「そうそう!確かにルーの声だったよ!」


皆が口々にしゃべりだす。私となおは、皆が隣に遊びに行った後蒲団から出てない。私は、不満そうなちなに、聞いてみた。


「それって、夜なんか騒いでたやつ?」

「そうだよ!助けてって。ルーこそ凄い声だしてたよ!だから心配になって、皆で部屋行ったら二人とも寝てるし」


窓なんて開けてすらない。なおと首を傾げてしまう。


「でも、隣だから窓から顔出したら見えるんじゃないの?」

「だから開けてって叫んだよ! でもいなかったんだよ」


そりゃあ寝てたし。

私は、なんとなく窓に近づき鍵を開けて外を見た。まだ早朝だけど、今日は天気がよくなりそうな空。


でも、視線を移動させたら。

私は、ちなを呼んだ。


「…ちな、見て」

「何? ってうわっ!」


──下はお墓が広がっていた。

昨日旅館に着いたのは夜で、遠くに見えた夜景しか気にしていなかった。


「本当に私の声?」

「…うん。間違いない」


ちなは、そういう嘘はつかない。

他の昨夜同室だった友達も皆真面目な子ばかりだった。その証拠に窓に寄ってきた皆も下に広がる沢山のお墓を見て怯えていた。


なんで私の声だったんだろう?


あの時は皆がいたし、朝だったから怖くなかった。でも後から思い返すとなんともいえない気持ちになる。



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