3.写真
「外でて写真でもとろーよ!」
「えー」
「いいじゃん」
「賛成~。行こ!」
「撮って~」
「え~、私も写りたいんだけど!」
その日、学校の帰りに5、6人が家に寄った。普段、私は大人数で遊ぶタイプではなく、せいぜい三人くらいのはずなのに何故かその日は多かった。私達は、確か中三くらいだっただろうか。
「これ、火つけていい~?」
「え、うん…」
外で写真をとる前は、私の部屋に皆いた。
人数が多いと、徐々にだらけて各々漫画や雑誌を読んだりとまとまりがなくなってきたころ、そのうちの1人が、飾ってあった2つの蝋燭を指差し私に聞いてきた。
私は、本当は火をつけたくなかった。
その蝋燭は、部活、美術部で作った物だった。私は幽霊部員で友達とさぼりにさぼっていたなか、後から先生に呼ばれ友達と参加し作った物で綺麗なキューブ状の蝋を紙コップにいれ、そこに溶かした透明な蝋を注ぎ固めた物だった。
その頃の私はやる気というものが全くなく、授業はでていたけれど、本や漫画を読む以外には興味がなかった。
そんな私だったが、簡単な物だけど自分でキューブの色を真剣に選び作ったこれらの蝋燭はとても気に入っていたのに。
私は、断ることができず蝋燭を透明な小さなガラスの台にのせ火をつけた。
「へ~けっこうキレイじゃん!」
「かわいい~」
「なんか、火、強くない?」
皆それぞれ声をあげていた。
私だけは溶けていく蝋を見て悲しくなり、直ぐ消したくてどうしようかと思っていた時、誰かが言ったのだ。「写真を撮ろうよ」と。
「はい!いくよ~」
「あっ、変な顔になった!もう一枚!」
「ちょっとぉ~」
最初は真面目にそろって撮っていたけど、やっぱりだんだんふざけてきて、走りながらじゃれて蝋燭は残念だったけど、まあ楽しく遊んだ。
それから暫くして、使い捨てカメラを使いきり現像に出し、写真となり手元にきた。
その中には、皆で家の前で撮った写真も入っていたのだが、その中の1枚に違和感を感じ、原因に気がついた私は、怖くなり仕事から帰り疲れているお母さんに興奮し話しかけた。
「お、お母さん、これっおかしくない?!」
「そうなの?不思議だね」
皆で写った写真のなかで、その1枚は珍しく私が中央の真ん中あたりにいた。その時、私は火を消した蝋燭を持っていたのに。
──写真には、ガラスの台しか写っていなかったのだ。
母は、強いというか滅多に怖がらないから私が騒いでも、驚きもしなかったが、私は母とは逆に怖がりなので、その時は怖くてたまらなかった。
あの写真は今どこにあるんだろう?
もう1つの蝋燭は何処にやってしまったのか?
そんな事をふと思い出した夜。