2.死神
「ねぇ、またあの話して。白いやつ」
「しつこいねぇ。わかったわかった」
私のしつこさに負けて、おばあちゃんが話しだした。
「子供の頃に外に出ていた、確かおつかいの帰りだったかね」
「うんうん」
私はわくわくしながら洗濯物をたたむおばあちゃんの近くに座り込む。
「家の近くまで来たとき、前から何かがきたんだ。それは足がなかった」
私は何回も聞いているのに飽きもせず質問をする。
「目は?」
「目はなかった」
「んー、じゃあ手!」
「手もなかったよ」
「白くて、こんなだっけ?」
私は、チラシを1枚とボールペンを持ってきて書いて見せた。
「いや、こうだよ」
おばあちゃんが私の書いた絵の隣に書いた。
「ねー、やっぱり変な形!」
それは足のないスルメにそっくりだった。
頭は三角で下は広がっている。おばあちゃんが言ったように、目も手も口もない。
「地面から浮いていていて白くてね。それがこっちに向かってきて、私は、ぞうりを脱いで逃げたよ」
おばあちゃんの顔は無表情だ。
「怖かった?」
「──ああ。凄く怖かった」
いつの間にか止まっていたおばあちゃんの手は動きだし服をたたみ、靴下をまとめる。
「何処に行っちゃったのかな」
「さあ。スーっとまっすぐどこかへ向かっていったよ」
たたみ終わった洗濯物をかかえよいしょと立ち上がり、私を見て言った。
「あれは死神さ」
祖母が亡くなり何年も経ちますが、いまだに覚えているお話です。何であんなに何回も聞きたかったのか今では謎です。
嘘か本当か分かりませんが、何故か祖母は季節柄夏に放送される心霊特集などのテレビをものすごく嫌がり、怖いもの見たさの小学生だった私はよく本気で怒られました。
不思議な事が1つ2つあってもよいのかなと思いこのお話を。
読んで頂きありがとうございました。




