1.ある日の法事で
何回目かになる祖母の法事の日。
家に拝みにきてもらったお坊さんがつい先程帰り、私と母と伯母の三人が仏壇の前に足をくずし座っていた。
「なんかあっという間ねぇ」
「そうね」
伯母の言葉にあいづちをうつ母。話好きの伯母に対していつも聞き役の母。
この二人が会えば、いつもと変わらぬ光景。
私は久しぶりの正座で痺れた足を行儀悪く投げ出してなんとなく二人の会話を聞いていた。だらだら話は続いていて足の痺れがとれてきた私は、とりあえず喪服を着替えようと立ち上がりかけた時。
「不思議よねぇ」
「何が?」
伯母が急に会話に入った私に顔を向けた。
「あれが同じ日なのよねぇ」
「何が同じなの?」
いつも伯母は、主語がなく結果を話すか、あれがこれがと言うのでたまにイライラする。
まあ、言葉がすぐに出てこなくて、でも早く伝えたいから、そうなっちゃうのかなと私は勝手に解釈をしている。
だけど、やっぱり聞きながらこちらが推測しないといけないから疲れるのだ。悪い人じゃないんだけどね。
「亡くなる日が同じなの」
私が苛々し始めたのを察知し母が教えてくれた。
「何十年かごとの23年ごとだったかしら。必ず同じ日に誰か亡くなるの」
「何それ? 怖いんだけど…」
私は向きをかえ仏壇に近づき中央にある厚みの細長い物、確か過去帳と呼ぶそれを畳の上に置き広げた。
普段あるのは知っていたが、見るのは初めてだ。
真新しい祖母の前は祖父の名前。
バラパラ
どんどん遡る。
「…ほんとだ」
一人や二人ならまだ偶然の話、ふ~んで済ませられるけど、これは…。
「…次は私かしら」
伯母がポツリと呟いた。
お線香と白い百合の花の放つ強い香が混じった匂い。春にしては蒸し暑かった日。
今でもふと思い出す時がある。