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自称世界一の魔術師  作者: サバ太郎
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二人目

「っ!?」


ミラが言葉を失っている。


俺は少女を宿に連れて帰り、ミラとベルクに会わせたのだ。


「その目・・・魔障、なの?」


ミラが声を漏らした。


少女の目は、墨で塗りつぶしたように全てが黒かった。


白い部分などなく、完全な漆黒だ。


そして、その目からは強い魔力を感じる。


俺がずっと感じていたのは、この魔力だったのだ。


ミラの右腕全体に比べて眼球二つなので、その分感じる魔力も小さかったのかもしれない。


今、少女の視線はミラの右腕に注がれている。


「その手、わたしと同じ」


手袋で隠しているにも関わらず、少女はミラの魔障を見抜いた。


その言葉を聞いた瞬間、ミラは少女を抱きしめた。


「こんな酷いことされて、つらかったわね」


そう言うミラの顔が、一番辛そうに見える。


「でも、もう大丈夫よ」


そう言って、少女の体に治癒魔術をかけ始める。


ミラにとって、この少女を見るのはかなりきついだろう。


かつての自分を見ているようなものなのだ。


ミラは全身を治癒した後、シャワーを浴びせて自分の持ってきた服を着せた。


ぶかぶかだが、先ほどまでの格好よりましだ。


8歳くらいだろうか。


少女の体は痩せ細り、髪も灰色でくすんでいる。


シャワーを浴びている間に、俺は色々考えて一つの結論に達した。


「お前、これが見えるか」


俺は魔力を練り、右手に集中させた。


そして少女は俺の右手を指さした。


「そっちに集まってるのが見え、ます」


やはりか。


「お前は魔力が見えるのか。だからミラの魔障も見抜けたんだな」


この少女の目は異常だ。


明暗も、障害物も関係ないし、魔力も見えるらしい。


少女が頷いたことで、俺の考えが正しいことが証明された。


魔力が見える、か。


俺の心に灯がともる。


「素晴らしい!魔力が見えるなんて聞いたことがない。もし魔力が見えれば、魔術は飛躍的に上達する!」


この力にミラの魔術を合わせれば、最強の魔術師になれるはずだ。


相手の魔力量を目で追えるなら、相手の実力も正確に測ることができる。


この力は索敵に優れているな。


森の中でも問答無用で敵を見つけられるぞ。


俺のテンションが上昇している中で、少女は辛そうに俯いた。


「でも・・・この目じゃ、誰にも会えない」


少女の言葉に、ミラが反応した。


「そんなことない!怖がる人も多いけど、それを認めてくれる人もいる」


泣きそうな顔で俺とベルクに視線を向けた。


ミラは少女の話を聞く度、とても辛そうな顔をする。


「私たちは、あなたを怖がったり嫌ったりしないわ」


そしてまた少女を抱きしめた。


少女はどうしたらいいかわからないようで、困惑していた。


ずっと黙っていたベルクがゆっくりと立ち上がり、少女のもとに近づいた。


「なんて名前だ」


ベルクが少女を見て言った。


「・・・わからない、です」


「その取って付けたような敬語はいらねえよ。俺はベルクだ。お前は、そうだな」


そう言ってミラから少女を奪い取った。


そしてひょいと持ち上げると、全身をじろじろと見始めた。


少女は少し恥ずかしかったようで、拒むように体をくねらせている。


「よし、お前の名前はクロだ!」


ベルクが笑顔でそう言った。


「まさか、クロっていうのは・・・」


「目が黒いから、クロだ」


こいつは。


その名だと、少女を刺激してしまうはずだ。


「クロ・・・、クロ・・・」


少女がそう呟いている。


俺の予想に反して、少女はクロという名を気に入っているようだった。


「クロ・・・わたしの名前」


「いい名前だろ。俺が名づけ親だからな、忘れんなよ」


笑っているベルクを見て、少女に顔も綻んだ。


「親・・・。ベルクが、親」


そう言うと、クロはベルクに抱き着いた。


「うおっ!?急にどうしたんだ。そんなに嬉しかったのか・・・って、泣いてんのか!?」


ベルクは慌てながら、涙を流すクロの頭をよしよしと撫でている。


「喜んだり泣いたり、忙しいやつだな。まあ、子供だし仕方ねえか」


ベルクは地面に座り胡坐を掻くと、足の上に少女を乗っけて向かい合う。


しばらく泣かせた後、クロに話し掛けた。


「ほら、泣いてばっかいるんじゃねえよ。嬉しいことがあったらな、笑うんだ」


そしてクロのほっぺを軽く横に引っ張る。


「つらいことがあっても悲しことがあっても、笑うんだよ。そしたら、必ず良いことがある」


そうしてベルクは笑った。


その顔は、いつもの笑顔では無かった。


普段からは信じられないくらい優しく、そして穏やかだった。


「クロもやってみろよ。気分が晴れるぜ」


そう言ってベルクはクロのほっぺから手を放す。


クロはベルクの真似をして、笑顔を作った。


「いい顔じゃねえか。辛いことなんか、忘れちまいそうだろ」


涙を流しながら笑うクロの顔は、先ほどまでとは全く違い輝いているように見えた。




ドアが閉まった後、目を開けた。


俺は目をつむってもうまく寝付けなかったので、考え事をしていた。


そうしていると、ごそごそと音がして誰かが部屋から出ていったのだ。


・・・ミラだろうな。


俺はベッドを降りて、立ち上がった。


隣を見ると、クロがベルクに抱き着くようにして寝ている。


二人を起こさないようにそっと部屋から出て、ミラの後を追った。


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