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VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第六章 歩みを始めた2人を
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第四話 演目 宴会に現れる総大将

 京子の案内で村だった場所へとやって来た。

 だったという表現で間違いはない。

 何故なら複数の建物が崩壊していたからだ。


「……まだ居たようだね」


 多種多様な妖怪がその場に居て、その中でも偉そうにしている一つ目の妖怪が居た。

 どう見ても子供だがそこは妖怪、体型通りの年齢とは限らないだろう。

 一つ目の妖怪と周りの妖怪は京子達に気が付いた。


「おやおやおやおやおやおや? さっきしっ――」


 京子は弓で矢を放ち、一つ目の妖怪をあっという間に貼り付けにした。

 大木で手足を射抜かれて貼り付けになっている一つ目の妖怪。

 これだけでも京子の方が強いとわかる。

 が、一つ目の妖怪はそれに気付いていないようだ。

 自分の方が強いという謎の自信があるのだろう。


「ごちゃごちゃうるせぇよクソガキ、あの時は動揺してただけだ……実力に気付いたか?」

「おいおい! いきな――」

「お喋りはお止め下さい?」


 絆は自分のウサミミカチューシャを外した。

 縁と同様に本来の姿が現れるのだが、少々着物が変わっていた。

 髪の色が黒くなり洋風の傘が和風になる、ここはかわらない。

 着物が黒く、白い模様が絆を縛っている様にも守っているようにも見える。


「絆? その姿は……」

「ふふ、お兄様だけ強くなったと思いまして? 私は私で絆を結んでおりますのよ?」

「確かにな」


 縁の言葉を聞いた後、絆は自身の信仰心を見せつけるかのように解放をした。

 どす黒いオーラが溢れ出す、だがよく見れば綺麗な黒色だ。

 見る者によって綺麗と汚いが別れそうな繊細な黒い色。

 そして絆は普段は見せない神らしい顔付き、言わば偉そうな顔をしている。


「我が名は不吉不釣合黒兎神絆ふきつふつりあいくろうさぎのかみきずな、不幸や不釣り合いを警告する神です」


 絆の真の姿を妖怪達は目を自然とそらした。

 そして一つ目の妖怪はずっと絆を見ている。

 それは目をそらしてはいけない、そらしたら殺される。

 怪異は妖怪の専売特許、そんなイメージがある。 

 今一つ目の妖怪が思っている事は――


「何を驚いているのです? ああ、こんなはずじゃなかったとお考えですか? 確かにそうでしょうね? 狭い世界して見てこなかったのでしょう?」


 先程の京子とのやり取りでもわかる、相手の実力を探るような事をしなかった。

 つまりは戦いや殺し合いの経験が無い。

 いや、一方的に攻撃をしてきたのだろう。

 そんな奴が駆け引きを覚える必要は無い。

 そしてこれから覚えれる可能性は無いかもしれない。


「で? やった事の責任を私が言った所で貴方は聞きませんでしょ? ……言っておきますが死ねば許されるのは、立場がある奴だけですわよ? そんな震えないで下さいませ? 今もどうやって私を殺せると考えているのでしょう? そうです! 不幸や不釣合い、いえ理不尽に抗うのは自分の意思の力です! いいですよ! さあ! この状況を逆転出来る手を考えてくださいまし!」


 ここぞとばかりにまくし立てる絆、一つ目の妖怪は恐怖で震えている……と、いう訳では無かった。

 恐怖は有るのだろうが一番は『こんなはずじゃなかった』と、その気持ちが一番大きかったのだろう。


「そろそろ何か喋ったらどうです? でも気を付けて下さいませ? 貴方の返答で妖怪の世界全体のお話になりますわよ? 神を怒らせたんですから?」

「……」


 一つ目の妖怪は何も答えないのが最善と考えたのか、やっとそっぽを向いた。


「まあいいですわ、責任能力を求めたのが間違いです」


 絆はカミホンを袖から取り出して、何処かに電話をかけた。


「ああ、おじい様? ちょっとお話がありまして……ええ、私今ブチギレてましてよ?」


 会話が終わると同時におじいさんが現れた。

 見た目は人間のおじいさん、頭が少々大きいようにも見える。

 でもパッと見は何処からどう見ても普通のおじいさんだ。


「ほっほっほ、絆ちゃん久しぶりだね」

「お久しぶりです、おじい様」


 おじいさんは村の全壊を見て一つ目の妖怪を見た。


「なるほど……これはそこの小僧がやったのかい?」

「はい」


 おじいさんは縁と京子の方を見て近寄り、深々と頭を下げた。


「妖怪が迷惑をかけたね、私は一応ぬらりひょんと呼ばれている妖怪だよ」

「ぬらりひょん? 妖怪のトップと知り合いなのか絆ちゃん?」

「ええ、おじい様は普段人様の宴会の席にこっそりと混ざっています、昔とある宴会でお会いしました」

「ほっほっほ、周りからはぬら爺様とか、ひょん爺とか言われとるよ……好きに呼んでくれ」

「あれ? そもそも妖怪のトップと噂されているだけで、本当かも分からないと言われてるっけ」

「ええそうです京子ちゃん、ですが煙の無い所に火はありませんわよ?」

「なるほどね」


 ぬらりひょん、大妖怪で妖怪のトップとも言われる妖怪。

 だが実際には人の宴会にコッソリと混ざる程度だとも言われている、

 このハッキリとしないからこその恐怖、知的好奇心がそそられる妖怪だ。

 だが今目の前に居るぬら爺は、妖怪のトップでなくても大御所という可能性がある。

 だがそれもあくまでも可能性、真実はぬら爺しか知らないのだ。


「お嬢さんすまなかったね、今はもう色んな種族が手を取り合う時代なんだ」

「時代が違えば戦争か?」

「詫びついでって訳じゃないけど……ぬらりひょんが何故宴会とかに現れるかを知ってるかい?」

「いや……知らないよ」

「敵情視察さ」


 ぬら爺の目付きが変わった、これは長年血生臭い世界で生きてきた目をしていた。


「代々のぬらりひょんはそうした、だがな俺は妖怪の将来の為に行ったんだ」

「将来?」

「ああ、人の世に行きたい妖怪は年々増加、だからこっそりと交渉とかしたのさ」

「なるほどな、確かに今の世の中……神だ妖怪だと色々と居るな人の世に」

「種族間の問題は無くなったとは言わねぇが、それでも昔に比べたらよくなった、昔は妖怪見たら問答無用で退治だったしな」

「……まあ、あんたの言いたい事はわかるけどよ」

「でだ、いつの時代もいらねぇ事をして溝が深まる事をするバカが居る」


 ぬら爺は笑いながら一つ目の妖怪を見た。

 流石に下を向いて目を合わせないようなしている。

 本当に恐怖しているのか、全身が震えているようだ。

 周りの妖怪達は小声で弁明や言い訳している。


「爺さんアンタの人と仲良くしようって考えにさ、オレは許す、その一つ目じゃない、アンタの考えにな」

「いいのかいお嬢さん?」

「オレはな? だが島の皆が許すかは知らん……だがそこの一つ目がムカつくからと、ドンドンと怒りが溜まってさ? 最終的に妖怪全員を恨みそうだ……絆ちゃん」

「はい?」

「私の選択肢は間違ってないだろ?」

「不釣合いな選択肢ではありませんわね、お兄様はどう思いますか?」

「身の丈に合う選択肢だ、身の丈とは言い換えれば自分の考え方とも言える、そのきれいな魂を汚す選択肢をしないのは良い事だ」


 善悪関係なく人には考えがある。

 それは時に自分の性格や考え方、それらを変えてしまう選択肢もあるだろう。

 京子は許す選択肢をした、おそらくだが誰かを恨み続ける性格ではないのだろう。

 だから自分の中での線引きをして、ぬら爺の行動を汲み取って許した。

 まあ島の人達が許すかはまた別の話だ。


「どちらにしろお嬢さんの知り合いや、家族に頭下げに行こうかね」

「ああ」


 ぬら爺の一言で妖怪達は自分の場所へと帰った。

 そして貼り付けにされていた一つ目の妖怪の矢を取り外す。

 首根っこを持って引きずる様に連れて歩く。

 少々痛々しいが仕方ない、これは一つ目の妖怪の選択肢の末路だからだ。

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