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VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第五章 幸せに向かって
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第二話 後説 ちゃんと相手に伝えるお知らせ

 縁と結びはロールを終えて、ロビーへと帰って来た。


「ほい縁君お疲れ様~」

「ああ、お疲れ様」

「今日はどうするよ?」

「何時もの居酒屋に行こう」

「よっしゃ」


 身支度と支払いを済ませた二人は、何時もの居酒屋へと向かう。

 何時もの行動だが、この時の長谷川は何か違っていた。

 平常心でいようと顔が少々こわばっていた。

 これを見逃す荒野原ではない。


 居酒屋に入り、荒野原がお酒が少々回った頃合いに、彼女が行動に移った。 


「げっへっへっへっへ、さて、何かお話があるのかな?」

「え?」

「何時もの長谷川君じゃない、こう……覚悟を決めた顔と雰囲気が出ている」

「……隠し事は出来ないな」

「隠す様な事を話すと?」

「時と場合が許せば、大っぴらに宣言しても大丈夫さ」

「ほ~う」


 長谷川は諦めてというよりも、かなわないな、そんな表情で鞄から取り出したのは。

 いかにも指輪が入っていそうな、小さな箱だった。


「おお! 明らかに指輪が入ってそうな箱!」

「ああ……ただ中身は――」

「ふふん、私は貴方の奥様になる人間だよ?」

「わかるのか?」

「中身はおそらく『おもちゃの指輪』だね……そう、一般的にはちゃんとした指輪を渡すだろうけど、それは婚約指輪の楽しみにしておこうかね」

「すげぇな」

 

 長谷川が箱を開けると、黒色のリングに白を散りばめたデザインの指輪だった。

 ただ、そこら辺の安物のプラスチックでは無いようだ。

 特注品のおもちゃの指輪、これを出されて荒野原が怒らないのは、彼女が彼氏の行動と理由を理解しているからだ。


「んで、君が何故おもちゃの指輪を渡すか、確かに『これ』は、世間一般的な価値は低いだろう、普通の女性なせブチギレだろう、だが――おっと、君の言葉を聞こうか」

「……この指輪に誓って、結婚を前提として過ごそう、結婚という単語は何度か出していたけど、結婚を前提に付き合っていこうとは口に出してなかったからな」


 長谷川は黒い指輪を荒野原の左手の薬指にはめた。

 ピッタリな指輪、左手を掲げて見る荒野原。

 彼女の顔は夢見る少女の顔で、おもちゃの指輪を見ている。

 そして、我慢が出来なかったようで、高笑いを始めた。


「にょほほほほほほほほ! キタコレ! 今この瞬間、この指輪の価値は『私達の結婚の約束した』って指輪になった訳だ!」

「お、おお……いや、テンション高いな」

「ああそれと……」

「え?」

「君の行動とこの指輪の価値を馬鹿にする奴は……絶対にどんな手を使ってもぶっ殺す」


 荒野原ならやりかねない。

 だがそうだろう、これは2人の間だけのお話の事。

 他人が人様の恋愛事情に口出しするのが、間違っている。

 とりあえず荒野原は超ご機嫌で、鼻歌を歌ったり笑ったりしていた。


「はっはっは! 今の私は気分がいい! これを君にあげよう!」


 荒野原が鞄から取り出したのは――


「ん!? まさか!」

「長谷川君の……いやいや、こう言うか、私の旦那の行動がわからないとでも思っていたか?」


 長谷川と同じ、箱に入ったおもちゃの指輪だった。

 デザインは黒と白の色が逆である。

 荒野原は上機嫌で、未来の旦那の薬指にはめた。

 長谷川はサプライズのつもりが、返されてしまう。

 

 自分の彼女の理解力、そして同じ価値観に感動している。

 だが、コッソリと用意していた、そのサプライズは失敗だったのかもしれない。


「勝ち負けじゃないけど、サプライズ失敗かな?」

「んにゃ? これは普段の君が勝ち取ったものだよ」

「普段?」

「そうそう、私が洗濯とか掃除とか料理したら『ありがとう』ってちゃんと言うでしょ」

「そりゃそうだ、てか俺にも言ってくれるじゃないか」

「当たり前でしょ、感謝は言葉に出さないと伝わらない」

「ああ、そうだな」


 互いのおもちゃの指輪、それはこの2人が積み上げてきた縁と絆の証。

 ゆっくりとだが、お互いの信頼関係や価値観を共有している。

 当たり前だが、これは他人が入る余地が無い。

 十人十色、人の数だけ恋愛の形があるのだ。


「長谷川君、これからもよろしくお願いします」

「俺の方こそよろしくお願いします」


 お互いに姿勢を正してお辞儀をした。

 荒野原はテンション高めに、メニュー表を指さした。


「よし、刺身盛り合わせとか、いいもん追加しよう」

「お、いいね、あ、カツオのたたきがある」

「げっへっへっへっへ……今日は楽しい飲み会になるね~」

「ああ」


 今宵は一段と2人だけのお疲れ様会が特別になった。

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