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VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第五章 幸せに向かって
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第二話 幕切れ ゆっくりと進んで

 三人は教会の目の前までやって来た、外観は絵に描いた様な教会だ。


「お、これが教会だね~近くで見ると、古風な外見だね」

「はっはっは、古いだけですがね」

「いやいや、この教会はね幸せとか、祝福に満ちているね~、ふんぞり返ってる神様には無理だね」

「ああ、良き縁を感じる」

「はっはっは、褒めても何も出ませんよ、さ、中へどうぞ」


 フィルが扉を開けると……


「うおおおおおぉぉぉぉ!」


 結びが歓喜の声を上げた、教会の内部は美しかったからだ。

 まず目に入るのが真っ正面にあるステンドグラス。

 木の枝の様に分かれている道が、中央で交わる様なデザイン。

 神父が話をする時に使う台、そこへ続く真っ赤なじゅうたん。

 木の椅子が均等に置かれている、神秘的な雰囲気抜群の教会の内部だった。


「あ、ごめんなさい」

「はっはっは、構いませんよ、感動して頂いて何よりです」

「よし縁君、式場はここにしよう」

「え? 即決でいいのか?」

「ここにはね、いい音があるし風も感じる、祝福されるならここだね」

「縁さん、いらぬ事を言いますが」

「ん? 何でしょう?」

「ご自分の神社ではなさらないのですか?」


 縁も縁結びの神なのだから、フィルの質問ももっともだ。

 だが今縁の神社はやっと工事が始まろうとしている段階だ。


「ああ……自作自演が何か嫌で、それにまだまだ時間がかかります」

「ふむ、将来的には式も受付るんですかな?」

「あー……建て直しを検討したはいいものの、人手が無い、基本無人だったからな……」

「これは失礼……では話を戻して、我が教会で式をいたしますかな?」

「ええ、お願いいたします」

「本格的な話は――」


 その時、入口から少年が走ってきた!


「神父様! 大変!」

「クラベルッツィラ、そんなに慌ててどうしました?」

「ハカリーヌが泣いて学校から帰って来たんだ! 何か大事な手紙を破られたとか」

「……縁君」

「ああ、良き縁を守るのが我が務めだ」


 縁はウサミミカチューシャを外して、何時もの神様モードへとなった。


「わっ! ……お兄さん神様なの?」

「少年、その子の所に案内してくれ」

「う、うん!」


 クラベルッツィラの案内されると、大泣きしている女の子と、なだめている子供達が居た。

 泣いている女の子がハカリーヌなのだろう、手には、メチャクチャに破られた手紙を持っている。


「あああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁ!」

「ハカリーヌ、泣かないで」

「な、なあ何があったんだよ?」

「ハカリーヌは好きな子と手紙のやり取りをしてただけなのに! それを気に食わないと思った人に破られたらしいの!」

「酷いことする奴らだ! ぜってぇ許さねぇ!」」

 

 男女問わず、子供達は破られた手紙に腹を立てていた。

 そしてそれ以上に、はらわたが煮えくり返るのを我慢している神が居た。


「……天罰でもくだすか?」

「はいはい縁君、私じゃないんだから落ち着いて、神様がそんな簡単に天罰降らせちゃダメでしょ」

「だよな」

「それに……目の前で泣いている子を見捨てていく神様かい?」

「すまない、こういうのは一番許せなくてな」

「そりゃ私もさ、見てて気持ちいいもんじゃない」

「身丈」


 縁の兎術である身丈が現れ、ハカリーヌの足元へと近寄った。

 ハカリーヌは身丈と目が合った、その瞬間泣き止んだ。

 目には涙が溜まっているが、ぱったりと泣き止んだのだ。


「……兎さんだ」


 縁もゆっくりとハカリーヌに近寄り、目線を合わせた。

 周りには子供達も居るはずなのだが、まるで縁とハカリーヌしか居ない様に会話を始めた。


「お嬢さん、大丈夫かい?」

「……大丈夫じゃない……てかだあれ?」

「俺は縁、たいした事は出来ないが……その手紙を直してあげよう」

「え? こんなになっちゃったのに?」

「大丈夫だ、こんな暴力で良き縁をどうこう出来ない」


 手紙が一瞬だけ光った、するとハカリーヌの手には、しっかりと元の手紙を優しく持っていた。


「ふぇ!? な、治った!?」

「俺が出来るのはここまでだ」


 2人だけの世界が終わる様に、子供達が声を上げ始めた。

 縁は結びの元へと戻った、身丈は縁の肩に乗っている。


「ええ!? 魔法?」

「スゲー! 手紙が直ってる!」

「あ! みちゃダメ!」


 子供達はハカリーヌの手紙を見たがっている。

 見たいと言っても内容ではなく、どうやって治ったなのだが。

 ハカリーヌはそれを見せないようにと、逃げ回っている。


「ありがとうございます、縁さん」

「フィル神父、余計な事をしましたか?」

「いえ、私では同じ事はしません」

「おや? どうしてなのさ、神父さんや?」

「子供達には厳しくしています、ああ一般的な厳しさですよ?」

「ああ……子供を持つ親みたいな感覚ね」

「ええ、あの子達は私の子供ですから」


 これは難しい問題だろう、何でもかんでも手助けしていいのか?

 身内だからこそ厳しく、他人だからそこ優しくこの逆もまたあるだろう。


「これ! ハカリーヌ、兎のお兄さんにお礼をしなさい」

「あ!」


 ハカリーヌと子供達が、ニコニコしながら縁に近寄ってきた。

  

「おじちゃんありがとうございます!」

「ああ、どういたしまして」

「その兎はおじちゃんのペット?」

「うん、家族かな」

「ふっふっふ、おばちゃんも出せるよ~」


 結びは血風を呼んだ、子供達に近寄ると愛嬌を振りまいた。

 そこに身丈も混ざり、子供達は二羽を触ったり撫でたりしはじめた。


「わ、真っ赤な兎さんだ」

「可愛いー」

「真っ白兎さんも居る」

 

 そんな微笑ましい光景を見て結びは頷いた。


「よし、縁、今日は子供達とのふれあいの時間だね~」

「下見はもういいのか?」

「ふっふっふ、これは将来の投資だよ、子供達とのふれあいはね」

「なるほど」


 いつかは将来的に2人の子供が出来るだろう。

 その前に、やらなきゃいけない事はたくさんある。

 2人の幸せに向かって歩くのは、ゆっくりと進んでいるのだ。

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