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VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第四章 縁と結びで縁結び
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第六話 幕切れ 約束

 縁達はシラルドの船へと戻ってきた。

 追手が来ないとも限らないので、さっさと空へと船を飛ばした。

 船の甲板で皆集まっていた、そしてシラルドとホスタルは熱い握手をする。


「シラルド、迷惑かけたな」

「何、お前さんの事だ、何かは知らんが必然的だったのだろう?」

「ああ、とても重要な事だった」

「んで、問題はそいつらを自分達の時間軸に帰す方法だ」

「問題? 簡単だろうに」

「お前は本当に全てわかった言い方をするな」

「この船の転送装置をちょいと改良する」

「ほう」

「簡単に言えば船の動力を使って未来へ返せばいい」

「相変わらず無茶苦茶な奴だ」

「お前の親友だからな、早速動力室へ行くぞ!」

「おう」


 2人はワクワクした顔をして、小走りで船の中へと入っていった。


「ま、私達は完成を待とうじゃないか」

「霞おばあちゃん、怪我は大丈夫?」

「安心しろ、強い目標ができたからな」

「霞殿、傷が治るまで拙者が護衛する、安心するでござる」

「私も力を貸しますよ、近い将来親戚になるんですから」

「……過剰な護衛だな」


 楽しそうに笑う3人、スファーリアはフィーネをうらやましそうに見ていた。


「どうしましたスファーリア?」

「私はまだまだ、演奏術でフィーネおばあちゃんに追いつけない」

「……私の様になってはダメよスファーリア」

「どうして?」

「今の私には負の感情しかありません、貴女からは優しい演奏術を感じます、それを大切にしてください」

「さっきも言ったけど、おばあちゃんから優しい演奏術を教わった、そして今のおばあちゃんの演奏術も必要」

「どうしてですか?」

「私は縁君と、これから生まれるかもしれない子供を、何があっても全力で守るから」


 スファーリアは自信満々で勝ち誇った顔をした。

 それを見た縁も、自分も頑張らねばといった顔をしている。

 決意をした目をしながら、スファーリアは霞を見た。


「世界を敵にまわしてもね」

「あーだからなのか? 今の発言を聞いて私がお前に厳しくしたのは、今からだと未来の話だけどもな」

「霞おばあちゃん、それは私にはわからない、恨んだりもしたけど結果的に良かった」

「……孫に恨まれるって私は何をしたんだ」

「どんな家族でも大小何かある」

「うちの場合はそれがデカそうだ」


 霞がため息をしたと同時に、シラルド達が帰ってきた。

 とても楽しそうに、何があったか話したい子供の様な顔をしている。


「出来たぞ!」

「はっはっは! 俺らに作れねー物はねーな!」

「シラルドさん、転送場所は何処になるんですか?」

「おう縁、俺達が出会ったナックセンの草原に設定した、転送事故は無いから安心しろ」

「凄い自信ですね」

「当たり前よ、この船の動力を作った人間とその親友だぜ?」

「シラルド、自慢してる場合じゃない、エネルギーは長く保ってられねーんだ」

「そうだった、付いてきてくれ」


 皆で動力室に向う。

 配線はぐちゃぐちゃで、周りには色々と機械がある。

 中心には大きな明るい緑色に光る大きな石が固定されていた。

 縁とスファーリアは、転送装置であろう場所に直ぐに立つ。


「時間が無いからさっさと転送するぜ? 積もる話は未来でな」

「ありがとうございます、シラルドさん、ホスタルさん」

「またね、おじいちゃん、おばあちゃん」


 縁達は緑色の光に包まれて消えた。


「だからおじいちゃんじゃねーっての……だがそう呼ばれる日を楽しみにしているぜ」


 シラルドは、誰も立っていない転送装置に向かってそう言った。

 そして縁達が目を開けた時には、見覚えのある草原が広がっていた。


「戻ってきた、流石おじいちゃん」

「む、あれは?」


 これまた見覚えのあるシラルドの船、純愛丸がこちらへと向かっている。

 護衛で人型起動兵器が周りに居る、コンテナを運んでいるようだ。

 縁達の近くに着陸すると、年を取ったシラルドが全速力で向かってきた!


「久しぶりだな! 縁!」

「え? あ、はい、お久しぶりです?」

「寂しいじゃねーか、霞とは会った事があるのに、何で俺とは会ってくれなかったのか」

「す、すみません」

「シラルドおじいちゃん、実は寂しがり屋」

「結び、おじいちゃんは悲しい! いい男は真っ先にワシにちゃんと紹介しなさい、何で昔がファーストコンタクトなんじゃ!」

「いやいや、現代で挨拶しても、過去で挨拶したらそれがファーストコンタクトになる」

「ぐぬぬぬ」


 人型兵器からもぞろぞろと人が降りてきて、コンテナを開ける作業を開始した。

 人混みの中、ホスタルと奥さんのクラリアが、こちらへ歩いてくる。


「はっはっは! 戻ってきおったな!? 俺の計算は正しかったな!」

「久しぶりだ界牙流四代目、その姿はスファーリアだったか」

「はい……クラリアさん、傭兵部隊の方々も一緒にって、何かあるの?」

「今のナックセンは滅んでいてな、この草原の土地は私達が所有している、主に演習で使うが今回は交流会だ、私達とバーベキューでもどうだろうか?」

「……バーベキューってか、屋台が出来ている」


 スファーリアが指をさした方向には、様々な屋台が出来上がっていっていた。


「血生臭い世界で生きているからな、皆、お祭り騒ぎに全力なのさ」

「……縁君、この傭兵さん達にお祭りお願いしたら?」

「それ傭兵の仕事……か?」

「ん? 何か祭りがあるのか?」

「新しく神社を建て直すんですが、出来上がったらお祭りでもしようかなと」

「ほう」

「護衛という名の屋台を出してもらいましょ、万が一があっても安心」

「確かに」

「ふむ、ならば後日会議をしたい、言っとくが私達は安くはないぞ」

「大丈夫、賞賛が大好きな出資者が居る」


 そんな話をしていると、ゆっくりと霞とフィーネと青桜が歩いてやって来た。


「縁さん、結び、お帰りなさい」

「婿殿、結び、よく帰ってきた」

「お帰りなさい」

「フィーネおばあちゃん、霞おばあちゃん、衣通姫さんただいま」

「ただいま戻りました」


 フィーネが縁に近寄って、両手で縁の右手を包んだ。

 昔見た威圧感は無く、本当に優しい顔をして縁を見つめていた。


「縁さん、孫をよろしくお願いいたします、貴方と出会ったおかげで……結びは私と同じ道を歩まなくて、本当によかった」

「いえ、俺も……結びさんには救われました、あの時知り合っていなかったら、今でも人への怨みが強かったでしょう」

「野暮な事を聞きますが、どうしてそう思いますか?」

「人への怨みよりも、結びさんとの幸せを考えた方がいいからです」

「その音を大切してください」

「もちろんです」


 縁は自信満々でフィーネの目を見て言った。

 うんうんと頷く青桜が声を発する。


「ふふ、拙者が霞殿を守ってきたかいがあるでござる」

「あ、衣通姫さんに聞きたいことがあった」

「ん? なんでござるか? スファーリア殿」

「あの花見桜ってどんな技? 音を聞く限り、連続で切ってるだけのようだったけど」

「その通り、相手の目では絶対に見えない速度で、剣の衝撃波や、刃で斬り殺す技でござる」

「じゃあ、座っている様に見えても、頑張って抜刀術を放っている?」

「うむ、初代血桜は殺し合いの時には刀身を絶対に見せなかった、と伝えられている」

「なるほど」


 霞はニヤリと笑った、それは昔見た相手を挑発する笑い方だ。

 青桜はわざとらしく刀に手をかけた、こちらも笑っている。


「あれは中々面白かった、私の目でも座っている様に見えたからね」

「霞殿、年老いた拙者には、もう昔の速度は出せないが……手合わせするか?」

「面白そうだけどやめとくよ、この命はひ孫を抱くのに費やす」

「あの時の約束は、それまで護衛する約束だったな」

「え? その時の約束は、お主とやりあった怪我が治るまででは?」

「はて? 記憶にござらん」

「はぁ……それじゃあ、もう少しお願いしようかね」

「承知した」

「副隊長! 準備が出来ました!」


 屋台を準備している人達がクラリアに向かって声を上げた。


「では、積もる話は飲み食いしながら話そう」


 祭りなのか縁達の帰還を祝うのか、交流会なのかはわからない親睦会が始まったのだった。

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