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VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第四章 縁と結びで縁結び
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第六話 演目 声の演奏術

 グランアルスの城の地下牢、護衛の者達もぐっすりと眠っている。

 フィーネの演奏術の高さが見て取れる。

 牢屋の鍵も手に入れて、目的の牢屋を目指す。

 

「難無く目的の牢屋までたどり着くわね」

「フィーネおばあちゃん凄い、私は広範囲は出来ても、ここまでの長時間の効果は出来ない」

「スファーリア、隣の芝生は青く見えるよ、私は癒しの演奏術は使えない」

「え? 私はおばあちゃんから教わった」

「ふふ……なるほど、私の音色が変わる時がくるのね」


 嬉しそうなフィーネを先頭に、目的の牢屋へとたどり着いた。

 白衣を着た若い男の科学者が、壁に暇つぶし何かの計算をしている。

 この人物が若かりし頃のホスタルなのだろう、人の気配がしたからか振り返った。


「んん!? 誰だお前達は?……こ! こいつは! お前さんすまんが後ろを向いてくれんか!」

「え? あ、はい?」


 縁を見た途端、ホスタルは目を輝かせて近寄ってきた。

 縁は牢屋越しに困惑しながらも振り返る。

 ホルスタは白衣からメガネを取出して、メモ帳に文字を書いていた。


「なるほどなるほど! お前さん達は未来から来たのか!」

「え! 何で解るんですか!?」

「こらこら、今解読中なんだから振り返るな!」

「え? えぇ?」

「わかった、風月と手合わせしたあの時、縁君はホスタルさんと話してたよね?」

「ああ……その時に何か仕込まれた?」

「つまり、私達がここに来る事はある意味では確定していたのかも」

「なるほど」


 この時代のホスタルが、このまま縁達の時代まで生きるのはほぼ確定。

 そして縁が初めてあった時に、何かが書かれていることを仕込むのだろう。

 ホスタルは高速でメモを取りながらブツブツと独り言を言っている。


「くっくっく、流石未来の俺だ、あらゆる事をちゃんと想定している、これで花嫁システムもアップデート出来る……しかし、この時代には無い素材ばかりだ、くっくっく! 俺が開発するんだろうか、シラルドに作らせるのか? 俺らしい! ヒントはくれるが答えは教えない、それでいい、科学者は探求者だ」

「ホスタルさん、とりあえず帰りませんか?」

「おっとそうだった! 続きは俺の研究所でするか、多分シラルドの船で来たんだろ? 案内してくれや兎さんや」


 牢屋を出で、船に向かう道中でお互いに自己紹介を済ませた。

 そして、激戦を繰り広げた広場まで戻ってくる。

 そこに、この国の兵士達が待ち構えていた、先頭きはエリート風を吹かせた参謀。

 兵士達は、これから戦争でもやるかの如くざっと見て50人は居る。


「ふっふっふ、お待ちしていましたよ、絶滅演奏演奏術の開祖、フィーネ・フェルマータ」

「構う必要性を感じません、無視しましょう」


 フィーネは無視して横切ろうとするが、兵士達にふさがれる。


「はっはっは! ホスタルを取り戻しに来るのも、未来から貴様の子孫が来るのも全て知っている!」

「……邪魔です、どいてください」

「あくまでも無視するか? 私は全てを知っている、お前は『手のひらで踊っている』んだ」

「私が手のひらで踊っている? ……その言葉は面白いですね」


 フィーネは怒りをあらわにして、参謀っぽい人物を睨んだ。

 深呼吸するフィーネを見てねスファーリアは声を上げる。

 

「あ、皆、全力で耳をふさいで」


 スファーリアの言葉に、縁達は直ぐに全力で手を使って耳をふさいだ。


「貴方……その言葉を吐いて無事だった手のひらは無いですよ?」

「ああ、やる気――」

「クソうぜぇんだよ雑魚共が! こっちは可愛い未来の孫夫婦とキャッキャウフフしてんだよ! 私の幸せの時間奪うってんなら相手してやろうじゃねーか!」


 フィーネの魂の叫び。

 それは周りにある木々を揺らし、小さい石は吹き飛び、家も揺れている様に見えている。

 参謀ぽい奴も兵士達も、突風の様な声に飛ばされない様に踏ん張っていた。

 

「おばあちゃん、本気で怒ると口が悪くなる、相手の態度にもよるけど」

「おいおい、強者ってのは落ち着いてるもんだと思ってたぜ」

「ホスタルさん、口調で強さは変わらない」

「まあそりゃそうだがな? なんつーか威厳というかな?」

「この場に威厳は必要ない、必要なのは殺されない技術と殺す技術」

「確かにそうだな、まあそれも状況でコロコロと変わりそうだが」


 もう勝負はついた様なものだ。

 フィーネの声に対して何も出来ないのだから。

 かわいそうなのは兵士達だ、この参謀ぽい奴に配属されなければ。

 他の兵士達の様に演奏術で眠っていれば、生きていたかもしれない。


「おらどうした? さっさと私を踊らせてみろや? てめぇの手のひらが舞台ってんならよ! その舞台事絶滅してやっから、さっさとかかってこいや雑魚が! みなみになぁ!? てめぇらが演奏術を封じる小細工をしてんのなんざ気付いてるよ! 馬鹿かお前は! んでなぁ!? 界牙流には負けるがな! 一人で世界と戦える力があんだよ! 冷静に考えてみろや! てめぇらの何処に勝算があるんだよ! ああなるほど、てめぇの能力は『自分に都合のいい未来を作る』って感じか? 多少違いが有っても関係ねぇ! 絶滅してやるから安心しろ! お前とは『覚悟』が段違いって事を人生の最後に教えてやるよ! 私の演奏を小馬鹿し! 認めず! 大会で評価されようが言葉の石を投げ続けた奴ら! 私の演奏を意地でも認めない奴らを滅ぼす為に『人間』を辞めたんだ! てめぇらとは『背負って物のレベル』が違うんだよ!」


 一気にまくしたてるフィーネ。

 彼女の言葉と共に兵士達は消えていった。

 声も音である以上何かの演奏術なのだろう。

 相手がどんな理由で挑発、勝算があったのかは知らない。

 結果が全てで、彼らはフィーネに勝てなかっただけだ。


「あースッキリした」


 フィーネは今まで溜まっていたストレスから解放された顔をする。


「……失礼いたしました、船に戻りましょう」


 通常時の無表情になって、縁達を見た後に歩き出した。


「流石フィーネおばあちゃん、私もまだそこまでは出来ない」

「え? スファーリアさんどういう事?」

「『言葉も楽器』だから、喋らせてる時点でおばあちゃんには勝てない、私も流石に言葉だけでこの大人数は無理」

「なるほど」

「そして、荒々しい言葉ってのは『自然と口数が増える』……ま、本人の性格なのかもしれんが、つまるところ、あれだけベラベラ喋らせてれば勝敗は見えてるな」

「ホスタルさん、よく気付いた」

「まあこれでも傭兵部隊の科学者だからな、少なからずそういうのは身についたよ、さ、帰ろうか」

「はい」


 フィーネを先頭に、シラルドの船を目指す一行だった。

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