第六話 前説 なりチャリメイクのお知らせ
今日も長谷川と荒野原は店番をしている、お客さんが来る気配が無い。
時々その反動が出るのか、クソ忙しい事にことになる。
「ふぁー今日は暇だなー」
「これは午前中でお仕事終わりパタ~ン」
「だね」
「あ、そうそう弟が面白い提案をしてきた」
「明君が?」
荒野原明、一本槍のプレイヤーで以前長谷川達と豪華なディナーを堪能した。
「結びに戻った時に斬銀と戦うって案が出たじゃない?」
「ああ、出たね」
「それに参加するってさ」
「うお!? 何で?」
「一本槍的にその機会を逃さないだろうって」
「納得してしまう……でもどういうシチュエーションにするんだ?」
「簡単に言えば、RPGのボスラッシュにするとか」
「例えば高い塔にとらわれていて、一階づつ攻略するみたいな」
「そうそう、ここを通りたくばってヤツ」
「結びなら楽勝のイメージがあるな」
「むしろ無視して上りそう」
「それはそれで面白いな」
「んじゃ、基本的に無視決め込もうかね~」
「……ん? てか一本槍死ぬんじゃないか? 状況的に縁を助けるのを邪魔しているんだから」
「流石に生徒は殺さない、でも手加減もしない」
「だろうね」
長谷川はふと学園という単語に思った事があった。
「あ、そいや俺最近学園に顔出してないな」
「そうだったね、あ、一本槍は旅に出た」
「え? 旅?」
「世の中を見てくると」
「ああーそれで最終的に結びと戦うと」
「そうそう、その旅で一本槍に何があったかは弟視点じゃないとわからない」
「他の生徒達は?」
「特に変わってない」
「それは何より」
「今は……お」
荒野原のスマホを取り出し画面を見て、笑顔で操作している。
「父方のおばあちゃんからだ」
「ほう」
「レアスナタで一緒に遊びましょうと、今おばあちゃん達って時々昔のシナリオをしているのよ、それのお誘い」
「ほう? 昔のシナリオのリメイクをしている感じ?」
「おばあちゃんが若かりし頃って、森山ボックスの『なりチャ』時代全盛期の人だから」
「おお! なりチャ! なるほどな、文字と映像じゃ違うか」
なりチャ、なりきりチャット。
電子掲示板やチャットに、キャラクターになりきって文字を投稿する。
言わばレアスナタの元祖とも言える文化。
画像などを貼る場合もあるが、基本的に文字でのやりとりだ。
「VRゲームでリプレイ? リメイク? が楽しみになったらしくてね」
「って事は界牙流二代目の全盛期ってことか?」
「そそ、おばあちゃん達は『ネット老人会』してると若返るって言ってた」
「いやいやネット老人会て……あれ? おばあちゃんは何歳?」
「正確な年齢は忘れたけど、60後半?」
「うお!? 若!」
「私のお父さんが長男なんだけど、20代で産んだらしいから」
「確か荒野原さんのご両親も長男を20代で授かったんだっけ?」
「うん」
「なるほど、そりゃ若い訳だ」
「んで終ちゃん達が良ければ一緒にどうだいってさ」
「面白そうじゃないか、界牙流二代目の歴史を見れるとは」
「んじゃ決まり、内容はゲーム内で話し合った方がいいね」
「ああ、そうしよう」
こうして何時も通り、2人はレアスナタをプレイしに行く。