表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第四章 縁と結びで縁結び
209/335

第五話 演目 世話になった兄貴

 縁の案内で辿り着いた場所、そこは右も左も兎しか居なかった。

 動物の兎からウサミミが生えた人と様々だ。

 建物も統一性が無く、和洋中、石レンガ木材ワラと様々だ。

 

「おお、色々な兎が居ますね~」

「ここに来るのも久しぶりだ」

「昔はずっと居たとか?」

「ああ、人間とやりあってるときはここに隠れていた」

「って事は人間はおいそれとは来れないと」

「他の神もな」

「そんな所に部外者の私が居ていいんかい」

「近い将来家族になるだろ?」

「おおう、そりゃ関係者だ……げへへへへ」


 いつも通り風月は、隠し切れない嬉しさが口から漏れている。

 風月がそんな笑い方をしていると、一匹の動物の兎が縁達に向かってゆっくりと歩いてきた。

 白い毛並みに小動物用の赤い上着を来ていて、優しそうな雰囲気を出している。


「ふっふっふ、しばらく見ないうちに名前負けをしない『縁』を結んだようじゃの? 縁ちゃん」


 縁は片膝をついてそのまま頭を下げた。


「お久しぶりです、海渡福様」

「んお!? 縁が様を付けて呼んだ!?」

「そりゃ尊敬しているし、逆立ちしても神の位には追い付けない」

「神の位か……そんなもん捨てて、たまには撫でられたいの」

「おお、んじゃ遠慮なく」


 風月はひょいと福を抱っこした、そして遠慮なく優しく撫で始める。

 縁は立ち上がり、呆れた顔をしながら風月に言った。


「風月、抱っこするんじゃない」

「本人がこう言ってるんだからいいじゃんね~」

「のー」

「はぁ……それで海渡様、要件はなんでしょうか」

「うむ、ついてまいれ……すまんがお嬢さん、道案内するので連れていってくれんかの?」

「はいは~い」


 案内されて付いたのは病院だった、福の案内で病室の前までやってくる。

 縁がドアの取っ手に縁が触れた瞬間、中からか細い声が聞こえた。


「……この気配……縁か?」

「なっ!? 兄貴!? 兄貴か!」


 縁は勢い良くドアを開けて中へと入った、ベットには人型の兎が身体を起こしている。

 茶色い体毛と黒い瞳の兎、そして見るからに今にも死にそうな顔をしていた。


「噓だろ!? 兄貴と気付かない程弱っているのか!? ど、どうしたんだ! 信仰心は!? あれだけあった信仰心は!?」

「……神社は取り壊しだよ」

「はぁ!? なぜ!」

「俺の居た場所は機械文明……つまりは科学が発展していってな、不可思議なものは不必要って訳だ」

「……人め! 困った時だけ神頼みするゴミ共が!」


 縁は怒りに震え今にも飛び出しそうだ。

 だが風月がニコニコ笑いながら話しかける。


「まあまあ落ち着きなよ縁、このお兄さんは何を司ってるのさ?」

「兄貴は人と人の縁を見守る神様だ」

「つまりこのお兄さんの居た場所ってさ、人との繋がりをどうでもいいと思った訳だ、じゃなきゃんな事できないよ」

「まあ……神社は基本的には人が建てるからな、壊すのも見捨てるのも人だ」


 怒りを吐き捨てる様にそう言った縁に風月はニヤリとした。


「でさ、縁はこのお兄さんにお世話になったのね?」

「ああ、神様の世界での恩人といっていい、その恩は一言じゃ語れない」

「なら一時的にでも縁の神社に来てもらおう」

「……んん!? う、え? あ? うん?」


 冷静な判断が出来てない縁は混乱していた。

 落ち着けと風月は縁の頭を軽く撫でる。

 縁は落ち着いて考え始めてる所に風月が言葉を続けた。 


「敷地内に小さいお社建ててさ、ちょっとそこで我慢してもらおう、もちろん物理的に住むんじゃなくてね」

「ふむ」

「縁は半分人間なんでしょ? さっき言ってたじゃん、基本的には人間が建てるってさ、なら縁がお社を建ててもいいじゃん」

「お、おお……確かに……それもそうだな」

「で、本当に大切にしてくれる人達とかが見つかって、神社を建てるって話になったら、そっちに移ってもらおう」

「ふむふむ」

「そして今まで使っていた神社は……別荘? みたいな?」

摂社(せっしゃ)にするって事か」

「おお、そんな言葉なんだ」

「ああ、主祭神(しゅさいじん)と関係が深い社は摂社、それ以外は末社(まっしゃ)だ」

「なるほど……って事はお兄さんは今神社が無いから、主祭神が二神になるのかな? あ、いやいや、絆ちゃんも居るから三神か」

「兄貴から歓迎だ」

「……おいおい……嬉しい話だがちょっと待ちな」


 弱々しい兄貴は右手を縁達に差し出した。


「今の俺に残された、本当に価値がある神社があるぜ? おお、これ持ってると喋る位の元気は出てくるな」

「そ、それは!」


 兄貴の右手には子供の工作で作った、雑で手のひらサイズの神社があった。

 立派なものではなく、木材をテキトーにくっつけて何とか建物っぽい。

 色の塗りも雑で塗られていない部分がチラホラとある。

 風月はそれを宝物を見る、つまりは価値のある物を見る目で見た。


「おお~何やら凄い力を感じる」

「お嬢さん、こいつの価値がわかるのかい?」

「それを見て直感で感じたのは、馬鹿にしちゃいけない事、縁がお兄さんを大切にしてるって願いかね?」

「こいつは昔摂社末社が欲しいとぼやいていた時に、縁が雑に作った社さ」


 兄貴は本当に嬉しそうに、手のひらサイズの雑な神社を見ている。


「でもな? ここに込められた感謝は本物で……今の俺が保っていられるのも、こいつのおかげさ」

「兄貴、それを持っていてくれたのか」

「当たり前だ……てか本当にいいのか? 俺の摂社を建てても?」

「ああ、ちょっと神社を本格的に改装しようかなと」

「改装? 色々と聞いてるが……ま、いいか」

「よしよし、話もまとまった事で……お兄さんの名前は? 私の本名は風野音かぜのおと(むす)び」

「ああすまねぇな、ちょっとまいっちまってて挨拶を忘れていた」


 先程とは比べてハッキリ喋る兄貴、やはり神様には信仰心が必要なのだろう。

 そして縁の気持ちはある程度元気にする位慕っているとてう事だ。


仲間見守兄貴(なかまみまもりあにき)って名前だ」

「……ん!? 兄貴って名前なの!? 縁のお兄さんではない!?」

「はっはっは、神の名前なんてそんなもんだ、まあでも縁の兄貴分だ」

「そういう名前って言われたら納得するしかないけど、んじゃ兄貴さん?」

「さんはいらねぇよ」

「了解~兄貴……あ、縁、お社のデザインはどうしよう? 宮大工さんはこの兎の国に居るのかね?」

「もちろんだ、俺の神社を建てた兎だ」

「おお、よし、その兎さんに会いに行こう」

「ああ、俺も久しぶりに話がしたい」

「俺も付いて行こう、久しぶりに歩かないとな」


 宮大工に会うために病室を後にするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ