第四話 後説 妹にも結末のお知らせ
区切りが付いた所でロビーに戻って来た縁と風月。
ロビー内の時計は夕方の5時を指していた。
「お疲れ~縁」
「お疲れ様風月」
「いや~ノリで進めたらとんでもない事になったね~」
「今回のラスボス縁と風月より強いのか」
「それならそれでいいじゃん、元に戻った結びがそれ以上に強いと証明できるだけさ」
「確かに」
「あ、そうだ、絆ちゃんにはちゃんと今回のオチは話した方がいいんじゃない?」
「だな、いじけられたら面倒だ」
「絆ちゃんは夜来れる? ご飯を食べながらお話しましょ~」
「よし、連絡してみるか」
縁はメニューを開き、ログインしている絆にメールを送った。
「秒で帰ってきた」
「なんて言ったの?」
「義理のお姉さんとお食事どうだとね」
「わお」
それからは何時もの流れだ、ゲームをログアウトして何時もの居酒屋へ。
長谷川と荒野原は現地であゆさと合流、何時もの席に通されるのだった。
品物を注文して、一通りそろったら乾杯して話し合いが始まる。
「で、兄貴、私を呼んだのは何か重要な事ね? いや、兄貴の事だから絶対レアスナタ関係だ」
「お、おう」
「兄貴はズルい、四六時中姉貴と居るなんて」
「え? いや、遊びたいなら遊べばいいじゃないか」
「馬鹿野郎、人生で一度も付き合ったことのない人間の貴重な青春の時間を奪えるか!」
あゆさの渾身の説得、今まで彼女の『かの字』もなかった兄。
その兄が恋人どころか将来を誓った女性と出会った。
妹の兄を思う気持ちが爆発したようだ。
「まあまあ、あゆさちゃん落ち着いて、後私も長谷川君以外と付き合った事は無い」
「おおう……それは失礼、んでお話ってのは」
長谷川は妹に今回の流れのオチを簡単に説明した。
縁が黒幕にさらわれる事、スフーリアと風月が元の一人に戻る事。
斬銀が本気の結びと戦いたい為に立ちはだかる事等々。
「なんと、そんなオチにする予定だったの?」
「この機会逃すと、風月とスフーリアが結びに戻るフラグがドンドン遠のく」
「なるほど、終着点は『さらわれた縁を、一人に戻った結びが助け出す』って事でいいのね?」
「うんうん、界牙流の無双を見せつける時!」
「……絆のプレイヤーが言うのもなんだけど、何時も無双してない?」
「ひょっひょっひょ、我が義理の妹よ伴侶が危うい時こそ……界牙流の本領発揮だ」
「んじゃ兄貴がさらわれた時、私がビックリ役でついてく」
「お、いいね~」
「さらわれた俺は何してりゃいいんだ」
「お、アレだよ長谷川君」
「どれさ」
「こういう展開によくある、ラスボスに身体を乗っ取られるやつ」
「あーつまりラスボスロールすると」
「それそれ、んで結びは容赦なくボコボコにするのだよ」
「姉貴、それは酷くない?」
「ふふん、神は信仰心で復活するならば、葬って結びのラブパワーで復活よ」
縁が神様だからこそ出来る戦法だ。
長谷川が何か思いついて荒野原に話しかけた。
「荒野原さんその手でもいいが、初代の奥義を使うのはどうだろうか?」
「おお、初代必殺技の『伴侶』を使う時が」
「姉貴、それどんな技なの?」
「憑依した奴を消滅させる技」
「わお、見せ所としてはバッチリじゃん」
「考えたら相手積んでで笑う、縁を殺しても結びの愛で復活、憑依したままでも初代奥義で消される」
「いやいや兄貴、そもそも界牙流に喧嘩売ったのが間違い」
「その通りだ妹よ、界牙流は絶対伴侶を守る」
荒野原はスフーリアとも風月とも違う口調で言葉を発した。
これが『結び』の喋り方なのだろう。
しかし次の瞬間、荒野原は納得いかない顔をした。
「うむむ……結びのキャラクター性も固めとかんと」
「姉貴、キャラクターは作ってあるの?」
「昔のだけどね」
「あ、いつでにいいかな?」
「お、何かね長谷川君」
「実は俺も案がある」
「それは?」
「ちょいと前に、縁の力を渡すってやったじゃん?」
「ああ、弟ってか一本槍と手合わせした時とかね?」
「それの上位互換、縁自身を憑依させる……いや、一つになる?」
「ほほう? 一心同体ってわけね? ならよくある声が二重に喋るやつやる?」
「面白そうだけど難しくないか? ロールプレイ動画ならともかく、ライブでそれやるの」
「あ~動画で更に台本あれば出来そうね~」
「だな、練習は必要だろうが」
「兄貴達なら簡単に出来そうだわ」
二人の阿吽の呼吸に少々呆れてつつも、幸せそうにしている兄を見て満足していた。
ふとあゆさはある事に気が付いて、二人にそれを言う。
「なあ兄貴に姉貴、一心同体ってならさ、まさに『縁結び』では?」
「ナイスあゆさちゃん、んじゃ名前はそれにしよう、でも結びは今の所半分だから……半結び?」
「そんな半ライス、いやおむすびみたいな言い方だな」
「面白いじゃん」
「……おお姉貴、メニューにおむすびあるじゃん、店にこういうの有ると時々たのみたくなる」
「わかる~んじゃおむすび食べながら打ち合わせを煮詰めましょ~」
三人の打ち合わせはまだまだ、始まったばかりなのだ。