表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第四章 縁と結びで縁結び
204/334

第四話 演目 灰から飛び立つ

 縁達は隠れ里や村に行き、自分達の障害となる者達を葬り続けた。

 だが次が最後、陣英がメインディッシュと言っていた村、縁を恨む者達の総本山である。

 その最後の目的地を目指して、人が寄り付かない獣道を歩いていた。

 歩きながら縁はまいっていた、人を葬り過ぎたからだ。


「ああ……気が滅入る、この三日間人を葬りすぎた」

「うんうん、それは縁が正常な証拠だね、私は何とも思わない」

「まじか」

「一般的な考えてに当てはめると、私も気が滅入るとか言えるけどさ、本心じゃないね」


 何処か楽しそうである風月は、あっけらかんとそう言った。

 縁はここぞとばかりに、疲れた顔からキリッとした顔になる。 


「それはどうかな?」

「お、何だ何だ」

「この間一本槍君達が無茶した時、君は本気で心配して怒っただろ? その色々は捨てずに残っている証拠だ、それでも捨てたと言うなら」


 縁は立ち止まり、風月の左手を両手で握って目を見ていった。


「拾う神ありだ」

「……それ言われたら何も言えなくなるじゃないか~」


 風月は恥ずかしさからか、目をそらして歩き始める。

 縁の言葉、自分の捨てた『人間らしさ』それを俺が拾う。  

 風月がどれだけ自分を卑下しても、縁が持ち上げる。

 捨てたと思っていた物も、縁と一緒に居ると持っていると気付かされる。

 ニヤける風月は、自分のほほを両手で軽く叩いた。


「まあ気を取り直して、陣英達がメインディッシュとか言ってた村で最後だね」

「どうせ今までみたく、隠れているか、普通の村を装っているか」

「どちらにしても今回のは最後でしょ、しばらくは大人しくなるね~」

「どんな事でもそうだが……敵って減らねーな」

「だね~」


 ふと風月は当たり前の事に気付いた。


「てか、私達は何をすればいいの? 殲滅?」

「見てればいいんじゃない? 流石にこれ以上はやってられん」

「確かに、縁の過去を清算って事だったけど……無報酬はねーわ、仕事量多すぎ」

「んだな、何か要求しよう」

「よ~し、のりこめ~」


 目的地の最後の村へ、もはや説明の必要もない。

 村の中央に血だらけの女神像が立っている。

 生贄にされる少女がが首を切られそうになっている。

 村人達は正気を失っているようにも見える。

 縁達には見慣れた光景になってしまった。


 村の近くにある高い木の上で成り行きを見守る縁達。


「……とは言ったものの、こそこそと見る私達」

「メインディッシュは譲ろう」

「だね、前菜が多すぎ」


 今まさに生贄にされる少女は、斧で首を斬られようとしていた。

 少女は暴れているが、もちろん拘束されている。

 無論、この少女は縁達に今回の話を持ちかけた隊長だ。 


「我らが神よ! 我らの悲願! 縁起(えんぎ)身丈(みのたけ)白兎神(しろきうさぎのかみ)(えにし)に制裁を!」

「むぐぐぐく! むぐぐぐ!」

「我らを救いたまえ!」


 村人に押さえつけられた少女の首は、あっけなく斧で切り落とされた。

 少女の血が辺り一帯に飛び散り、村人達は歓喜の声を上げた!


「これでまた一つ、我らの悲願に近づいた!」

「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」

「いいぞー!」


 だが少女の血が止まらない、勢いもなく滴る程度になるはずが、壊れた蛇口の様に切り口から血が噴き出していた。


「な、何だ? 血が止まらない!? 何故止まらん!?」

「そりゃ、俺が神様だからよ」


 切り離された首が、村長らしき男をゆっくりと見た。


「神だと!? 貴様何者だ! 神とて生きては返さん!」

「おお? 驚かないとはな」

「なめるな! 対神の方法は調べ尽くしている!」

「ほう」

「……この気配……貴様、高位の神だな!? ならば!」


 村長は慌てる事無く右手を上げた、村人達が少女もとい隊長を囲む。

 素早く両手で呪文らしき言葉と印を結び、地面に魔法陣が浮かび上がった。

 そして障壁をも生み出し、隊長を出られなくする。


「「「「「対神様絶対崩壊の陣!」」」」」

「カアアアアァァァァァ!」


 仕上げに村長が気合の入った声と共に、魔法陣を両手で触れた。

 障壁内で大爆発が起きる、次の瞬間には隊長の姿は無く、ただ『灰』らしき物がその場にある。 


「高位の神だろうと……我々の敵ではない! 証明出来た! これであの憎き神も殺せる!」


 何やら確証を得た村長達、その様子を見ていた風月は縁に質問をした。


「縁、あの隊長さんてどの位高位なの?」

「株式会社で例えるなら……筆頭株主?」

「いや、一番じゃん」

「神様の順位って小難しくてな、まあ色んな神様が居ると思ってくれ」

「それ人間とかでも言えるじゃん、でさ、あの隊長さんはどんな性格なの?」

「うーむ、喋り好きで好戦的で話は通じる人……かな? 俺もそこまで交流がある訳じゃない」

「なるほど……後、対神様絶対崩壊の陣だっけ? あれって凄いの?」

「凄い、俺でもタダではすまないな」

「おお、そんな強い攻撃だったのね」

「でも相手が悪かった、高位の神って『司る存在』なんだよ」

「……前に聞いた事があったような? 合ってるかは分からないけど」

「聞こう」


 風月は小難しそうな顔をしながら話し出した。


「例えば縁だったら縁結びの神様、世に『縁結び』がある限り死なない……みたいな?」

「正解、ま、神なんてふんわりしているから、正解なんて本当はないんだがな」

「縁は何時も言ってるよね、人に理解出来る神は神じゃないって」

「母さんの教えだけどな」

「話を戻して、あの隊長さんは不死鳥だっけ? なら『命とか生命』を司っていると」

「そそ、だから滅ぼすなんて無駄無駄」

「なるほど、多分命あるもの全て葬らないとダメ……みたいな?」

「そんな感じだ」

「なるほど」


 風月は視線を『灰』に向けた。

 その灰はよく見ると所々に燃えた様な跡がある。


「ほう? 俺を消滅させれる人間が居るとはな? いいぞいいぞ! お前達を気にいった! 俺は強い奴は大好きだ!」


 村長達は歓喜するのを止めて、隊長だったもの、灰に目をやった。

 するとその灰から、神話で描かれる様な見事な不死鳥が空へ飛び出す!

 その不死鳥は地面へと舞い降り、鳥の形から燃え盛る炎になり、それが徐々に人の形へとなる。

 バンダナを巻き、迷彩服を着た歴戦の猛者を感じさせる初老の男性になった。 


「不死鳥……血……ま、まさか! 我らは不死身に!?」

「いや、一時的だ安心しろ?」


 隊長は右指を鳴らす、すると村長の近くにいた村人の一人が、唐突に人体発火した。


「ぎゃああああああああ!」


 右腕が火だるまになる村人、だがその炎は直ぐに止み無傷。

 不死鳥の伝説通り、血を浴びたり飲んだりすれば、不老不死になるのだろう。 


「人間のお前達が望む『不老不死』ってやつだ」

「き、貴様!」

「でも残念だな、依頼だから最終的にお前達を殺さなきゃならん、無駄に命を散らした貴様らを裁かないとな? 正に生き地獄」

「無駄……無駄だと!? 我々がどんな思いであの神を殺そうとしてるかわかるまい!」

「ああ知らねぇよ、んじゃ教えてくれねぇか? どんな神を崇めているかな」

「我々が崇めているのは! 『七星了司(ななほしりょうじ)』様だ!」


 隊長は腕を組み空を見上げて、本でも読んでいる様な顔をした。

 高位な神だからこそ、知らない事は何かを通して知る事が出来るのかもしれない。


「はあ? お前ら人間崇めているのか? いや、現人神も神っちゃー神だが……その現人神の個人的な思想に、お前達は利用されたのか……お前達が哀れすぎて涙が出てくるぜ」

「わ、我々が……あ、哀れだと!?」

「よし、解説と説明の神みたくはいかねーが、説明してやろう、人間ってごちゃごちゃ聞きたがるからな?」


 隊長は血だらけの女神像を蹴り飛ばして倒した。

 そして横たわった女神像に腰を掛ける。


「人を導くのも神の仕事だ」


 不死鳥の神直々の、どれだけ自分達が哀れかの説明を開始するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ