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VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第四章 縁と結びで縁結び
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第三話 演目 過去のスファーリア

 縁達は意気揚々と、グリオード達が居る宿へと帰って来た。

 グリオードは宿の受付近くの椅子に座っている。 


「お帰り縁、スファーリアさん、天女様」

「ああ、中々有意義な時間じゃったの」

「うん、縁君はトラブル発生したけど」

「……縁、あまり暴れないでくれよ」

「まさか神器を盗まれるとは、いやはや」


 悪びれる様子もなく縁は笑っていた。

 グリオードは何をしてきたか、解っている様にため息をする。


「それは置いといて、グリオードさんこれからどうします?」

「ああ、ゾークの薬を作ろうかなと」

「作る? 俺が用意しますよ?」

「待て待て縁、王国に医者が……ああ、ここは過去じゃったな」

「久しぶりに王国の激務から逃れられたんだ、羽を伸ばしたい」


 天女はグリオードの発言に険しい顔をした。


「のうグリオード、お前ワザと過去に飛ばされたのか?」

「ええ、合法的に建前が出来ます、麗華は気付いているでしょうが」

「あのなぁ……お前が居なくなって子供達が心配しとるんじゃ」

「申し訳ないとは思っています、自分が始めた王国ですが……このままだと間違いなく、周囲の人間に当たり散らしてしまう」

「考えたくないが、やっぱり王様って大変なんだな」

「立場は違うけど縁、君も神として色々とあるだろう?」

「まあな」

「なら2人で気晴らしに行ったらどう? 薬の材料を探しに行けばいい、縁君なら運良く探せるでしょ?」

「いやまあそうだけど」

「羽を伸ばすなら思いっきりしないと、薬も急を要する物ではないんでしょ?」

「はい、そうですスファーリアさん、しかし、縁とぶらり旅か……あの時は斬銀さんも居たな」

「あまり思い出したくない過去だ」


 この過去の時代、縁は正にイキリチラシていた全盛期の時間軸なのだ。

 

「それはともかく、お使いもとい冒険に行こうか? グリオード」

「さんじゃいのも懐かしいな」

「王様接していると、かしこまるからな」

「それを言ったら君は神様じゃないか」

「冒険気分なら、明日の朝に帰ってくれば?」

「……麗華にどやされそうだ」

「事故じゃなく故意で過去に来たなら、今更では?」

「だの、説教の時間が増えるだけじゃ、ゾークはワシらが見ておこう」

「よし」

「行くか縁!」

「ああ」


 縁とグリオードはノリノリでハイタッチをした。

 2人はテンション高めで宿屋を飛び出す。


「こうして走るのも懐かしいな!」

「お前が王様になったからだろ!」

「自分で選んだ道とはいえ、疲れるからな!」

「それ言っていいのか? 賞賛に値しねーぞ?」

「いいじゃないか、普段滅茶苦茶出来ない分、楽しませてもらう!」

「んじゃテキトーな森でキャンプでもするか、まあ薬の素材もあるだろ」

「いいね」


 縁達はその辺にある森に入って、野宿に適した場所を探した。

 大きい川がある場所を見つけて、そこで野営の準備をする。

 テントや焚き火、川には魚を捕まえる仕掛け。

 それらを終えた後に、薬の材料を求めて東西南北。 


 色々と冒険を楽しんで、薬の材料も見つける。

 日が暮れた頃に野営地に戻ってきた。


「縁、川の仕掛けを見に行くか」

「ああ」

「んん? 縁、焚き火に誰か居るぞ?」

「おお?」


 スファーリアと同じ黒い帽子に黒いローブの女性。

 隣には同じ衣服に身を包んだ少女が居た。

 縁達はその2人に近寄っていく。


「あら、ここはあなた達の焚き火だったかしら? って兎君じゃない」

「ああ、ドレミドさん……え? 何で貴女がここに?」

「旅の途中よ、森を突きっ切ってたら、焚き火を見つけてね」

「なるほど」


 このドレミドとは、過去の父親を助ける時に出会っている。

 だがその隣には、何やらぶつぶつと独り言を言っている少女が居た。


「スファーリア、ほら挨拶しなさい」

「ん? スファーリア?」


 縁はスファーリアを見た。

 もちろん過去のスファーリアだ。

 物凄い殺意に満ちた目で縁を見上げていた。


「お母さん、この人から私の音を感じる、それも未来の」

「……なるほど、おそらくスラム街で俺と出会う前の彼女か……あ」

「……」


 不用意な発言をした縁はかたまってしまった。

 スファーリアは軽蔑する目で縁を見ている。


「こらこらスファーリア、音を聴いちゃダメよ」

「……お母さん、この人は何者? 隠さないでね、無駄だから」

「あら? 無駄なら貴女が感じた音が正解じゃないかしら」

「えぇ……ジャージ姿のウサミミカチューシャ……」


 スファーリアはあからさまに落胆していた。

 おそらく縁が自分の未来の彼氏と感じ取ったのだろう。

 その男がジャージ姿にウサミミカチューシャだったら、嫌な顔にもなる。


「兎君、悪いけど一晩ご一緒いいかしら? もう暗くなるし」

「ええ、どうぞ、グリオードもいいよな?」

「ああ」


 魚、野草、キノコ等をふんだんに使ったスープが晩御飯だった。

 軽く談笑した後に就寝する、縁は一人川の近くに居た。


「いや、びっくりした、まさか過去の彼女と遭遇するとは」

「……やはり貴方は私の恋人になる人なのね」

「うお!?」


 縁はビックリしながら振り返る、寝ていたと思ったスファーリアが居たからだ。


「……まじかぁ……確かに私は出会い欲しさに『結び』から別れたけども」

「え……あ、いや……なんかごめん」


 結びがスファーリアと風月に別れた理由、それは界牙流の『伴侶の為』という掟。

 伴侶どころか恋人も居ないのに、幼少の時からそんな掟に縛られていたら気が滅入る。


「謝らないで、今の私が貴方の魅力を理解できないだけ、音でわかる、未来の私は幸せ」

「ああ、それだけは自信を持てる」

「そう」


 スファーリアは興味なさそうに言った。


「そして貴方とは小さい頃にあった、私がまだ結びだった時に」

「ああ」

「なるほど……ふむふむ、お父さん同士が知り合いと」

「……音を感知されたら止めようがないんだが、未来を知っていいのか?」

「構わない、未来が決まってようが、貴方が私の心をどう響かせるか興味がある」

「それは聴かないのか?」

「当たり前、心を響かせる……つまりは告白、知ってたらつまらない」

「なるほど」

「私は戻る、貴方から聞こえる幸せの音は心地よすぎる」

「それは何より」

「縁さん、未来の私によろしく言っておいて下さい」

「……ああ」


 スファーリアは寝ている母親の元へと戻った。


「あれ? って事は初めて……いや、正確には再会か? あのスラム街であった時には、スファーリアさんは全て知っていたって事か?」


 お互いに忘れた状態で、スラム街で再会したあの時を思い出す縁。

 自分達の時系列を考えたが、そんな小難しい事はいいかと、夜空の星を見て思うのだった。

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