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VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第三章 桜野学園編
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第七話 幕切れ 神の戯れ

 スファーリアが先陣を切り部屋の中に入った。

 稼働していない放棄された大きな機械が多数。

 男女数人が、地べたに座ったり機械に座ったりしている


「で、誰が私の生徒を――」


 スファーリアが口を開くと、何かがほほをかすめた。

 ほほの傷口から血の代わりに音楽記号が流れ始める。 

 相手のナメた一撃に、スファーリアの顔は怒りがにじみ出ていた。


「ハッハッハ! ようこそ俺の――」

「絶滅演奏術、消滅言語、行動消滅」


 スファーリアは素早くビーダーでトライアングルを叩いた。

 その場に居る敵対勢力は動きも喋りもしなくる。

 そもそも先制出来ても、最初の一撃で殺す事をしなかった敵が悪い。

 挨拶のつもりだったのだろうが、スファーリア相手に悪手だ。

 この初手で、実力と経験の違いが明確になったのは言うまでもない。


「いずみさん、説明お願いできますか?」

「私ですか? コホン! では説明しましょう!」


 いい笑顔の早口で解説を始めたいずみ。

 普段は喋り過ぎだと止められるからか生き生きとしていた。


「リーダーのノリス・マッセーダさんとその他の皆さん! 貴方が孤児院『身寄り』の出身者で、今回の襲撃の犯人ですね! というか最初の攻撃は何ですか! 何で牽制何ですか! スファーリアさんは死なないでしょうが、殺すつもりでやらないと!」

「――」

「ああ、貴方の能力である『悪役口上』は……というか喋れませんし、動けもしませんか、まあこの時点であなた方の負けが確定しました!」

「ねえいずみちゃん、その悪役口上って何?」

「はいはい! 解説いたしますとも! 簡単に言えば漫画やゲームの悪人って、主人公と対面した時ベラベラと喋るじゃないですか」

「あーさっさと動いてよ、と思うときはあるわね」

「それです、喋ってる間は私達は基本的に攻撃は出来ません」

「あら、厄介な能力ね」

「ええ、これで一本槍さん達もやられたのでしょう」

「ん? でも紅水仙ちゃんだけ重症だったわよ?」

「それは紅水仙さんの能力で全ての攻撃を引き付けたのでしょう」

「なるほど、誰かを守る行為は攻撃ではないわね」

「さあさあ、説明の続きをしましょう! スファーリアさんは風月さんと一心同体、その身体は界牙流で強化されています、そして!」


 いずみは説明する興奮を抑えられないのか、メガネを何度もクイクイしている。


「絶滅演奏術奏者としては、縁さんの愛の告白により、更に強化されています! 告白も言葉の音ですからね」

「つまり、怪我をさせたのは凄いって事ね?」

「ルルさんそうです、ですが問題はここからです!」

「あら、どうしたの?」

「界牙流は伴侶と共に生きる流派、障害は滅ぼします」

「ああ……怪我をする可能性は、死ぬ可能性があるって事ね」

「そうです! これはもう止められませんね」

「なあいずみ、何で俺を殺せると思ったんだ? 嫌がらせなら100点だがな」

「ルルさんには言いましたが、階段を登る様にレベルアップしてきたからですね、彼らは何人かの神を殺しています」

「ん? 存在消滅じゃないのか? 神は信仰心がある限り消えないぞ?」

「ええ、相手にした神々は、暇つぶしで相手をしただけですよ、それが彼らを助長したのでしょう」

「神は基本的に暇人だからな、んでいずみ、結局こいつらは何がしたかったんだ?」

「不幸の神が居るから不幸が無くならない、幸運の神様が居るから貧富の格差が生まれる、といった所でしょうか」

「またか、人は何時も好き勝手言うな? これはもう殺し合いしかないだろ」


 何時にもまして縁は怖い顔をしながらノリス・マッセーダに近寄っていく。

 だが、ルルが縁の肩に手を掛けた、その顔は超満面の笑みだ。


「ちょっと待って縁ちゃん、私も言いたい事が出来たわ」

「ルルさん、どうしました?」

「正義を振りかざしている様だから言うけど、七つの大罪ってあるじゃない? あれを司る悪魔達も中々の力を持ってるわ? 何でその悪魔達に喧嘩を売らないのかしら? 悪い事だらけじゃない?」

「七つの大罪は傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、色欲、暴食ですね」

「ありがとういずみちゃん、つまり何かを司る悪魔って居るのよね……私は『浮気』を司るインキュバスなのよ」

「え? ルルさんが浮気を司る? 想像出来ない」

「ありがとうスファーリアちゃん、でも浮気って良くないじゃない? だから、サキュバスを名乗って力が出ない様にしているんだけど」


 ルルはノリス・マッセーダの方を向いた。


「縁達に刃を向ける前に……私を殺す対象にしろ? 幸運だの不運よりも『浮気』はよくないだろ?」


 何時ものオネェ口調ではなく、ハッキリと高圧的に話していた。

 不幸や幸運、不確定なモノに正義の刃を振りかざすよりも、誰の目に見ても浮気の方が悪い。 

 だが直ぐに何時ものクネクネオネェに戻ってしまう、そして1人のバンダナを巻いた男の目の前で立ち止まった。


「そうそう、貴方は少し痛い目にあってもらうわよ? リリアールに淫乱女って言ったそうね?」

「――」

「安心して、殺さないから」


 ルルはそう言って男を抱きしめた、何も出来ない男はみるみるうちに、よぼよぼの老人みたくなってしまった。


「不味い、この程度の生気か……ふふ、私は満足したわ、後は縁ちゃん達よ」

「私も喋り疲れました、説明はこれくらいだいいですよね」


 ルルといずみは、もう目の前の敵に興味が無いらしく女子トークを始めた。


「さて、これだけの時間があっても、私の絶滅演奏術を解除できないなら、死んだも同然ね? 縁君、どうする?」

「お前ら、実力の違いがわかったか? 『中途半端が一番怪我をする』から気を付けろよ? だがお前らを見習って中途半端な事をしよう」

「縁君、何をするの?」

「見逃してやる、再び俺達にちょっかいかけるもよし、今居る組織から逃げるもよし」

「あら優しいわね」

「神の余興だよ、この程度なら何時でも殺せる」

「次私や縁君の周りをちょろちょろしたら、ぶっ殺す」


 スファーリアは怒りをぶつける様に、ビーダーで地面を叩き付けた!


「スファーリアさん、いや結びさん、多分これから沢山誰かが一方的に死ぬけど、一緒に居てくれるかい?」

「もちろん、私の音は貴方と共にあるし、界牙流としても今が拳を振るう時」


 2人は見つめ合うと、手を取り合った。

 またイチャイチャな空気を出すのである。


「もう、縁ちゃんもスファーリアちゃんもまたイチャイチャして、私が言うのもなんだけど時と場合を考えなさい」

「いえいえ、付き合い始めはこれでいいかと、会話での意思疎通はとても大事です」

「だからって今やらなくてもいいじゃない、」

「そうですね、おーいお二方! 用が済んだので帰りましょう?」

「ええ」

「帰ろうか」

「あ、しばらくしたら動けるから安心して」


 スファーリアがそう言い残すと、4人はその場から去った。

 縁達の中途半端な結果で敵は生き残る。

 そして間違いないのは、次の一手が間違いなく生き死にに関わる。

 確かな事は、縁達やその周りに関わらなければ死なないというだけだ。

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