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VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第三章 桜野学園編
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第七話 演目 太陽の祝福を受けた吸血鬼

「縁さん、ここは?」

「太陽祝福を受けた吸血鬼、マリナ・カーミラコールさんの住んでいる城です」


 その場所は吸血鬼のイメージとは程遠かった。

 照りつける太陽、透き通った青い空、所々に白い雲。

 城は吸血鬼が住んでいそうな、少々おどろおどろしい外観。

 だが夏真っ盛りの風景がそれを軽減していた。


「お兄ちゃーん、お姉ちゃーん」


 太陽の吸血鬼フレビィレンスが、手を振って走ってきた。

 赤いゴスロリ服に赤い帽子、頭から生えている小さいコウモリの翼と背中の翼は嬉しそうに羽ばたいている。 

 隣には麦わら帽子にアロハシャツ&ズボン、ウクレレを持った人骨が歩いていた。

 さらにハイビスカスのレイで、見るからに常夏服装。


「こんにちは、フレビィレンス」

「こんにちは、フレビィちゃん」

「こんにちは! あ、このお兄さんはだあれ?」

「……お兄さん」


 吸血鬼から見れば炎龍の様な初老でも、お兄さんになるのだろう。

 お兄さんという言葉に、気分を良くした炎龍はにこやかに笑った。


「私はスファーリアの父、名は炎龍といいます、よろしくお願いいたします」

「おおー! 炎龍お兄さんね! 私は太陽の吸血鬼! フレビィレンス・カーミラコール!」


 太陽に負けない輝かしい笑顔を見せたフレビィレンス。


「お兄さんからは、太陽の力を感じる!」

「私は炎の龍を出せるのでそれかと」

「おおおおー! 見たい!」


 はしゃぎまくるフレビィレンスに、常夏姿の人骨がウクレレを奏でながら話しかける。


「お嬢様、お客様にその様なお願い事をされては」

「ボーンは頭が固い! だから骨なんだよ!」

「お嬢様、その様な言い方はしてはなりません」

「私はお母さんの娘なのよ!」

「私は奥様に雇われた執事、教育係です」


 そんなやり取りをしていたんだが、ボーンは縁達に向き直った。


「失礼いたしました、私は執事のボーンです、よろしくお願いいたします」

「お久しぶりです、ボーンさん」

「ご無沙汰しております縁様、ご案内いたします」


 ボーンに案内されて城の中へ、外見とは違い中はおどろおどろしい雰囲気は無い。

 一言で言えば高級洋館風のホテルの内装だ。

 道中すれ違うメイドや執事に、挨拶をされつつ目的地に着いた。

 ボーンは扉を開けて縁達は中へ入る。 


「久しぶりね、縁」

「お久しぶりです、マリナさん」


 中に居たマリナは絵に描いた様な美しい吸血鬼。

 血の様に赤い髪とドレスに鋭い目付き。

 そして太陽が一番当たる場所で椅子に座っていた。


 ふとマリナは自分の娘を見る。

 フレビィレンスはスファーリアを見ていて、ソワソワしていた。 


「フレビィ、楽器を触りたいって、スファーリアさんにお願いしなさい」

「え? でもお兄ちゃん達は大事なお話で来たんだよね?」

「楽器さわりたいならいいよ、椅子をちょっとずらそうか」

「うん!」


 フレビィレンスが椅子をせっせと用意を用意する、小さい音楽会の開催だ。


「ボーン、貴方もよ」

「奥様?」

「界牙流三代目さん? 迷惑じゃなければボーンの相手をしてくれないかしら? 将棋、チェス、オセロ……なかなか強いわよ?」

「ほう……では将棋で勝負をお願いできますかな」

「用意いたします」


 手早くボーンは将棋と畳を用意した。

 

「縁、場所を変えましょうか」

「はい、わかりました」

「ボーン、世話はメイドに任せるから、貴方は楽しんでなさい」

「はい、奥様」


 マリナと縁は部屋を出た。


「客室に居る方々を会議室に呼んで」

「御意」


 部屋の外で待っていたメイドが一礼して消える。


「縁も知っている方々が、遊びに来ているのよ」

「知っている人?」


 マリナの案内で入った会議室で待っていると、女性が2人入って来た。


「おお、縁殿ではないか!」

「え? あ、お久しぶりです!」

 

 一人は衣通姫(そとおりひめ)青桜(あおざくら)

 以前縁、風月、斬銀と小さい村の問題を一緒に解決した。


「私とは超久しぶりね、神様君」

「アセリアさん、お久しぶりです!」

「マリナを訪ねて来たって事は荒事ね? 『傷の魔女』も話を聞こうじゃないかしら」


 紺色のローブで全身を隠している。

 だが唯一見える口元や手には生々しい傷痕(きずあと)が見えていた。


「して縁殿、何かあったのでござるか? アセリア殿の言った通り、マリナ殿を尋ねるとは相当でござろう?」

「縁、話してちょうだい」


 縁達は椅子に座り話し出した、襲撃された事、おそらく敵は昔の戦争の生き残りや金の亡者とその被害者だと。

  

「ほう、まだ縁殿達にちょっかいをかける(やから)がいると」

「まあ昔の縁と絆は子供だったし、あの戦争の結末がうやむやになったからね」

「うむ……縁殿、今回はどうするつもりでござるか?」

「徹底的にやる、昔は子供だったから親に怒られたが……大切な人達を守る」

「縁殿、後の事は考えるでござるよ? それは自分の子供の人生に関わってしまう」


 その昔、人を斬って世を正す時代を生きた青桜。

 人の世に生きたからこその言葉、彼女と子供も苦労をしたのだろう。

 

「俺は神だ、本来なら人の決めたルールに従う必要は無い」


 縁が俗に言う一般常識に従うのは、人の世に住むなら仕方がないというだけだ。


「私は神様君より、界牙流四代目さんの方に慈悲を求めた方がいいと思うけど?」

「ええ、自分の幸せを壊す様な奴らは、一族や組織単位で殺すでしょう」

「……拙者が言えるのは、2人でよく考えろだけでござるか」 


 界牙流、世界に牙を向いても家族を守り、それは敵を滅ぼすまで続く。

 縁は何だかんだと言っても一定の慈悲は有る。

 だが結びに慈悲は無い、あっても縁に止められたからとかだろう。


「縁殿、結局敵は何がしたいでござるか?」

「敵は昔の様に、俺や絆が気に食わないらしい、考えや理由は聞くだけ無駄だ」

「私も吸血鬼だからわかるわ、何もしてないのにね」

「仲間はずれは良くないわ? 私は魔法の研究や実験に失敗して、怪我しまくっただけなのに『傷の魔女』よ?」

「……おや、この場で狂人は拙者だけでござるか? 進んで人斬りをしていた」

「貴女は時代の犠牲者って感じかしら」

「カッコイイ言い回しでござるな」

「人斬り依存症な訳でもないでしょ?」

「フッ……辞めた直後はちょっとあったでござるよ」


 その場に居る者達はフフッと小さく笑った。


「話を戻して、あの時縁達……いえ対処したのはご両親ね、苦戦したのは『子供達が居た』だったから、そして『出来るだけ合法的』に対象したから」

「……今更ながら何で父さん達は、出来るだけ合法的にしたんだ? 裏では色々とやってたんだろうけど」

「子供が小さかったからよ、血生臭い事は出来るだけしたくないでしょ?」

「親だからわかるわ、神様君も子供が出来たらわかるわよ」

「それで今回は対象が『成長した縁と絆』だって事よ」

「それはつまり『現役の神様に喧嘩売った』訳ではござるな……んん?」


 青桜は思いっきり首を傾げた。


「よく考えなくとも、相手は負け試合ではござらんか?」

「神様、それに界牙流と絶滅演奏術を使える奥さん、つんでるわね」

「付け加えると、私達も手伝うわよ」

「え? 拙者も入ってるでござるか?」

「神様君は自分の力を使ってるだけ……あ、人脈か」

「それに……ある意味『合法的に色々』と出来るし?」

「お主等はまったく」


 青桜が苦笑いをしていると、縁は頭を下げた。


「……戦う力の無い人達や、まだ鍛えている最中の人達の被害を少なくしたい、力を貸してください」

「そうお願いされては仕方あるまい、縁殿の力になるでござる」

「ふふ、報酬は貴女の奥さんが女子会に参加で」

「いいわね、音楽ちゃんが入るのは歓迎よ?」

「どうせ縁との事を根掘り葉掘り聞くのでござろう」

「ま、それは置いといて……縁、他には誰に声をかけたのかしら?」

「親しい人達にはメールで話しました」

「あら、私もメールで良かったのに」

「いえ、直接会ってお願いした方がいいかと」

「次からはメールで良いわよ、奥さんとは女子会をするし」

「神様君、作戦会議もするんでしょ?」

「はい、場所は名前が変わる砂漠の街でしようかと」

「ああ、グリオードのところね、あそこ砂漠だからいい太陽なのよ」


 マリナは手を叩いた、少しの間があった後、メイド達がお菓子と紅茶を持って入って来た。


「難しい話はここまでにしてお茶にしましょ」


 しばしお茶を楽しんだ縁。

 雑談の中で次の目的地を聞かれたので答えた。

 ラキアグ、元犯罪者や訳ありな人達が集まる街。

 ブルモンド・霊歌の工房がある場所でもある。

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