第五話 演目 斬銀の軽い座学
そんなこんなで縁、スファーリア、斬銀は桜野学園へとやって来た。
「はい、到着」
「なあ、今更だがこの服装でいいのか?」
「構わない、戦闘科にはほぼ裸の先生達も居る」
「裸て」
「魅了系の能力の人達」
「なるほど……いや、俺の能力は魅了系じゃねぇよ!」
「とりあえず教室に行きましょ」
軽くあしらわれた斬銀を連れて、3人は教室へと向かう。
教室には生徒達が全員居る。
一本槍、ツレ、ファリレント、未来、そして石田夫妻だ。
各々が自主的に何か勉強していて、教壇に立った縁達、スファーリアは無表情で話し始めた。
「今日はお知らせがあります、私と縁先生が襲撃されました」
その一言で生徒達は手を一斉に止めて、驚いた顔をしている。
「恐らく襲撃者はあなた達も襲うでしょう、容赦無く殺しなさい、だだ殺す場所は考えてね」
「ってスファーリア、このクラスは殺しオッケーなのか?」
「斬銀さん、手加減はちゃんと実力が有る者の行為、失敗すると面倒くさい事になる」
「まあな……いやだが学校としていいのか?」
「構わない、殺そうとした奴を殺しただけ」
「なるほどな」
「ええ」
それ以上は斬銀は何も言わずに、軽くため息をした。
スファーリアは無表情のまま言葉を続ける。
「見るからに雑魚だった、あなた達でも苦戦はしないでしょう」
「スファーリア先生、よろしいでしょうか?」
「はい、絆さん」
「失礼ながら、神として先生方に質問してよろしいかしら?」
「どうぞ」
絆はウサミミカチューシャを外して、黒い着物姿になった。
「不吉不釣合黒兎神絆として聞きます、万が一……2人の大切な生徒に何か有ったら、私が助けます」
「あら、いいんですか?」
「あなた達の願いは『自分達じゃどうしようもない出来事から守ってほしい』でした」
「今回は俺達で如何にかなりそうだけどな」
「甘いぞお兄……縁」
ついつい素が出でしまった絆は、ワザとらしく咳をした。
「この私が、あなた達に降りかかる不幸を少しだけ排除します」
「ありがとうございます、スファーリアさん、神社に奉納に行こうか」
「縁君、神社まだ無いんじゃ?」
「あ、クセで……まだ工事も始まったてなかったな」
「時間を取らせました、話は以上です」
絆はウサミミカチューシャを付けると何時もの姿に戻った。
今更ながら、絆は桜野学園の制服に、スファーリアのクラスのエムブレムほ付けている。
「縁先生、襲撃は大丈夫でしたか?」
「大丈夫だ一本槍君」
「あのお姉ちゃ……スファーリア先生、お、落ち着いて下さいね?」
「ファリレントさん、どういう事かな?」
「先生の音がかなり感情を抑えているから、今にでも全て絶滅しそうで」
「見事ね、この私の音を感じるとは」
「……しょしょ正直、かなり怖いんです」
ファリレントはカタカタと震えていた。
怒りの矛先が自分でなくとも、嫌と言うほどスファーリアの恐怖を知っているからだ。
「ほう? 感じ方は違うだろうが……試しにそこの死神、スファーリアをどう感じる?」
「俺っすか? ほっといたら死神が大忙しになるって危機を感じるっす」
「いいな、強者の強さ、危機感を感じ取れるのはいいぞ」
「ふふん」
自分の生徒の実力の高さに満足しているスファーリアだった。
「あ、紹介が遅れたけど、今回は凄い人が来てくれました、真寺斬銀さんです」
「傭兵をやっている真寺斬銀だ、名前で読んでくれて構わない……てか石田夫妻が何で生徒なんだ?」
「何かを学ぼうとしたら、ここの先生しか首を縦に振らなくてな」
「スファーリア先生には本当に感謝しています」
夫婦揃って笑顔でスファーリアに頭を下げている。
「まあ実技なら俺の見立てでは、そこの死神と一本槍、演奏術のお嬢さんは俺が何かしら教えた方がいいな」
「あら? 私には何も教えてくれないのかしら?」
「教えろ~」
「おいおい斬銀先生そりゃ~ないんじゃないかい?」
「あなた、そんな言い方はよくないですよ」
「俺が教えられる事? まあ軽く何か話すか?」
「お願いします」
スファーリアと縁は教壇から降りた。
「ふーむ、縁、ちょいと来てくれ」
「え? 俺ですか?」
再び教壇へと上がる縁。
「身近ならお前だ、運が良いからでやられる身になってくれ」
「神は人間の理解を超えた存在ですから」
「それはともかく、話していこう、はい縁の能力を簡単に言える奴」
「はい、縁先生はとても運が良いのであらゆる事象を捻じ曲げます」
「絆、それを言葉で説明出来るか?」
「はい、斬銀先生、縁先生を殴るふりをしてくださいませ」
斬銀は絆に言われた通りに、ゆっくりと殴るふりをした。
「この時、殴ろうとする斬銀先生の腕に何かしら起きます」
「何かとは何だ?」
「それはわかりませんわ」
「おいおい、んじゃ水晶玉で遊んでいるお前、答えて見ろ」
大きい水晶玉を頭に載せている未来は、自信満々に答えた!
「ふふん、縁先生は神様です、人がどうこうすること自体がおこがましい」
「ほう、未来を見通す神でもわからんか」
「何故私の事を!?」
「そのくらいわかる……てか、その水晶玉お前さんの神器だろ? 遊び道具にしていいのかよ」
「おほう、私が神様だってバレた……ちなみに私の名前は未来」
小さい水晶玉でお手玉をし始めた未来、斬銀はため息をして見ていた、そんな中ツレが手を挙げる。
「つまり、理解出来ないのに、下手に喧嘩売るなって事っすよね? 俺が言うのはなんですが」
「ああ、よくあるのが戦いの最中に考察する奴だ、訓練とか授業とかならわかるんだけどよ、殺し合いの最中に悠長に考えているアホが居るんだよ、たまにな、あ、考えなきゃならん状況は別な」
「そこは大丈夫、逃げるチャンスと殺せるチャンスは見逃すなって言っている」
「そうか……まあお前達の生徒だからそこは大丈夫か」
「復習も大事」
「ああ後、今のお前達にしか出来ない力を教えておこう」
普段絶対見せない真面目な顔でこう言った。
「先生達を頼れ、これは学校にいる間だけだ、まあ頼りすぎはよくないが、死ぬよりはいいだろうさ」
それを聞いて生徒達は各々頷いく、下手に死ぬよりは怒られても先生達に頼った方がいい。
「さて、言葉で説明ってのも難しいから実技でもするか」
「あ、それなら次の授業からにしましょう、そろそろチャイムが鳴る」
「おおそうか」
「一本槍君、ツレ君、ファリレントさん、準備運動よろしく」
「ずるいですわ、お三方だけ」
「絆さん、私とサシで訓練する?」
「まあ、お願いいたしますわ」
直にチャイムが鳴った。
一本槍とツレ、ファリレントは一足先に実習室に向かう。
縁達は職員室へ向かい、他の生徒達は教室に残った。