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VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第三章 桜野学園編
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第三話 前説・幕開き 風月強化のお知らせと努力の神社

 長谷川と荒野原は何時も通りゲートへとやって来た。

 受付を済ませてプレイルームへ、長谷川は手帳を確認する。


「今日は生徒達とのロールだ、事前に多少告知しているから大丈夫だろう」


 ゴーグルとシートベルトをして、スタートボタンを押した。

 目の前がVR空間へと変わり、長谷川達から縁になるのだ。


 ゲーム内ロビーで縁は待ち合わせ場所へと向かう。

 今日の参加者達は既に集まっていた。

 風月、久城(くじょう)アカネ、アポロニア、ダエワ、一本槍陸奥(むつ)、ツレ・テクーダ達だ。

 縁は参加者達と挨拶を交わして本題に入った。


「えー今日は事前に告知していた通り、努力の神様の所に行きます、内容は見学です」

「縁、内容が見学ですは何か面白い」

「いやまあ、手合わせだったり見学だったりするがな」

「見学ついでに訓練かい」

「風月、確か大会があるんだろ? それに戦闘科の生徒が戦闘無しってのもな」

「お? って事は何かパワーアップフラグでも?」

「ああ、風月のは考えてきた」

「いや私かい! 生徒達のじゃないのかい!」


 風月は縁の肩をペシッと叩いた。


「風月先生大丈夫っすよ、えに先生には事前に聞いてますから」

「まあ俺達は俺達でロール中に強化フラグ立てりゃいいしな」

「ダエワの言う通りです、先生達は先生達で動いた方がいいかと」

「生徒達がこう言ってるから甘えようか縁」

「ああ、んじゃそろそろ始めるけど、何か質問はあるかい?」


 特に返答は無かった。


「んじゃ、開始するな」


 縁はメニューを操作して、参加者達と共にロビーから消えた。



 光に包まれて目的地にやって来た縁達。

 目の前には立派な鳥居と、舗装された参道が奥へと続いている。

 辺りは静かで神聖な雰囲気が漂っていた。


「やあやあよく来たな諸君、ゆっくりと見学するがよかろうぞ」


 突然声が響く、縁が上を見上げると、鳥居にどっちゃんが立っていた。

 ニヤリと笑って鳥居から華麗に降りて着地する。

 どっちゃんは、はっぴにサラシに帯に草履と、お祭りスタイルだ。


「どっちゃん今日はありがとう、てか鳥居に立つな、罰当たりな」

「ここはあたしの神社だ、別にいいだろ? しかしお前が先生ねぇ……」


 どっちゃんはちょっと小馬鹿にするようにニヤニヤしている。


「っと、あたしの自己紹介がまだだったね」


 深呼吸して雰囲気がガラリと変わる、神々しい気迫をこれでもかと放っていた。


「私は努力の神、芯努貫徹耕励磨しんどかんてつこうれいまです」


 その状態で深々とお辞儀をする。

 しかし生徒達は困惑していた。


「え?」

「しん……んん?」

「……アポロニア、復唱出来るか?」

「一回では流石に無理だ」

「芯努貫徹耕励磨様ですね、漢字ではどう書くのでしょうか」


 久城だけメモ帳片手に復唱していた。


「ほう? 随分と勉強熱心だな? 縁が言ってた神の私生活が見たいって言ってたのはあんたか?」

「はい、久城アカネといいます」

「おおよろしくな、で漢字か、ちょっとそのメモ帳に書いていいか? 後、わたしの事はどっちゃんでいい」

「はい、お願いしますどっちゃん」


 どっちゃんと遠慮なく呼ばれて嬉しいのか、ニコニコしながら自分の名前を書くどっちゃん。

 久城は漢字を見て、少し考えて口を開いた。


「これは……全部努力に関係しそうな漢字ですね」

「おお! 見る目があるな、そして……ふむふむ、お前さん大切な人を助ける為に努力したね?」

「はい、大金を手に入れる為に神の封印を解きました」

「ほう!? これはまた凄い! 神の封印を解くとはねぇ」

「いえ、私一人の力ではありません」


 それを聞いた風月は、何か引っかかった様に首を傾げる。


「縁、神の封印を解くって凄いの?」

「モノにもよるけどな、封印から出ようとしている神は簡単に出る、しかし神が出る気がないなら難しい」

「ほえ~縁は大丈夫?」

「俺を恨んでいる奴らは多いからな」

「ちょっと聞きたいんだけど、表向きでは縁達って悪者?」

「それは大丈夫だ、俺に関しては、いくら探しても『妹を殺そうとしてきた人達を対処しました』しか出てこない」

「裏では?」

「人が寄り付かないスラム街でぶっ殺してた」

「ああ、最初にあった時もスラム街だったね~」


 縁と結びが再開したスラム街。

 あの時はお互い幼少の時に会っていたとは気付かなかったあの場所。 


「あんな場所に来るのは狂人しか居なかったからな」

「法も秩序も無い場所で正論かまされてもってやつね?」

「そうだ、自分可愛さに正義の刃を振り上げる奴は、他人を殺める勇気は無いさ」

「だね~……あ、話戻すと仮に封印されても大丈夫?」

「結びさんとの縁があればな」

「……ふざける訳じゃないよね?」

「ああ」

「ま、そうなったら私が速攻で動くけどね~界牙流出動だ~」


 もうこの2人をどうこうは出来ないのだろう。

 2人の空間を作っていると、どっちゃんが呆れた声で話しかける。


「おーい、イチャイチャしとる引率の先生達よ、さっさと神社に行くぞ」

「ああ、すまなかった」

「んで、どうすんの? 神社見学?」

「そうしたいらしい、その後私が戦いの面倒みてやるよ」

「お、それは楽しみ~」

「それじゃあ行こうか、出発~」

「待て待て風月」


 縁は鳥居に向かってお辞儀をした。

 風月はあっとした顔をして頭を下げた、生徒達もそれに続いく。


「縁、礼は別にしなくていいぞ?」

「そうはいかんだろ? 俺は一応神様なんだから」

「いやいや、挨拶は大事だね」

「律儀なご一行だな」


 木々に囲まれた神聖な雰囲気。

 そして拝殿(はいでん)手水舎(てみずや)社務所(しゃむししょ)、授与所が見える。

 参道客や働いている人がちらほら居た。


「おお、これは凄い!」

「本当に凄い、掃除が行き届いているし、働いている人達からも意気込みを感じます」

「御神酒飲もうぜ御神酒!」

「ダエワ、御神酒は正月に飲むものだ」

「んだよかてぇなアポロニア」


 生徒達はテンションが上がっている、久城に至っては物凄いスピードでメモ帳に何か書いている。


「好きに見て行ってくれ、あたしは縁達に話があるからここで待っている」

「わかりました、では神社の参拝の仕方を教えますから皆さん付いて来てください」

「気合はいってるなアカネ」

「ふむ、久城は私の家系の神社を頻繫に参拝しているからな、詳しいぞ」

「では久城さん、よろしくお願いいたします」

「任せなさい一本槍さん、まずは手と口を清めます、手水舎の水で心身を清めましょう」


 自信を持って久城は一本槍達を引率し始めた。


「んでどうしたんだ?」

「いや、確認したい事があってな」

「何だ?」

「お前神社壊されたのって本当か?」

「ああ、壊された」


 難しい顔をしているどっちゃんに、縁はしれっと答えた。


「本当だったのか、んで始末は付けたのか?」

「話が通じる奴は助けた」

「助けたって……いやいや神社だぞ?」

「どっちゃんが聞けば多分泣くぞ」

「は? どんな話だよ」


 縁はどっちゃんに説明していく、ジャスティスジャッジメントという組織から生まれた隷属の神。

 その神が他の世界に信者を送り込み、異世界に興味を持たせ、好き勝手に殺して他の世界から転生者として召喚。

 美味い話をエサにこの世界で好きにさせて、信仰心を高めていた。

 その中で叢雲という人物が神社を壊した。


 理由を聞けば自分を殺して欲しいから、まともじゃない周りと友人に恐怖を感じ、自分が死によって解放される方法を模索した事。

 神に対抗出来るのは神、色々と調べていくと縁という神に辿り着き、この神なら自分を殺してくれると確信。

 だが理由を聞いた自分は、殺す選択はしなかった事と、手厚く保護した事を話した。


 が、どっちゃんの顔は大洪水だった、物凄い勢いで泣いている。

 参拝者が近くに居るので大きな声は出してはいない。 


「バッキャロウ、努力ってのは自分が幸せなる為にするもんだろ、死ぬためにするもんじゃねぇ……そんな話聞いて黙ってられぇぞ、ちくしょー」

「とりあえず落ち着け、ちゃんと俺の知り合いが保護してるから」

「そ、そうか……途中から聞けなかった、んな悲しい努力はしなくていいんだよぉ……」


 どっちゃんは悲しんでいるかと思いきや、今度は殺意に満ちた目をした。 


「して……そのムカつく神は本当に消滅させたのか?」

「ああ」

「なら安心だな、んでもう一つ聞きたいんだが」

「どうした?」

「そちらの女性から並々ならぬ努力を感じるんだが、何者だ?」

「ん? あ、私の自己紹介がまだだっけ? あ、してなかったね、私は風月、界牙流四代目だよ~」

「おお! 界牙流!」


 どっちゃんは驚いた顔をする。

 喜怒哀楽がちょっと激しいようだ。


「おおや? 知ってる感じ?」

「私の家系が昔、界牙流に力を貸したらしい」

「って事は多分初代様かな? 初代様は色んな方々に助力を求めたからね~」

「それと……貴女からは全てを投げて修行した努力を感じるが?」

「本当に嫌になるよね~友達は出来ないし、将来の為だとか結構無茶な修行させられたし……はぁ、愚直に走ってしまう」


 風月はこれまでの苦労を吐き出す様にため息をする。


「しかし報われたのを感じる」

「まあね~私の半身がいい兎を虜にしてきたから、この歳になって修行の意味が出で来たって感じ?」

「縁、ちゃんと幸せにしなよ?」

「言われるまでも……いや、肝に銘じておくよ」

「ただいま戻りました」


 20分も経たずに久城達が帰って来た。


「早かったね~」

「本格的な神社の参拝は私一人でやります、他の方々が手合わせの方に興味があるので、切り上げてきました」

「おうおう元気な事で、どっちゃんよろよろ~」

「よし、任された、付いてきな!」


 どっちゃんは景気よく声と手を挙げて、一行を先導するのだった。

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