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VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第三章 桜野学園編
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第二話 幕開き 最初の出会い

 とあるスラム街のある区画。

 そこはオネェ系インキュバスのルルが経営している。

 縁はそこで従業員として働いていた。


「縁ちゃん、これ3番テーブルにお願いね」

「わかりました」


 店内は20人位のお客で賑わっている。

 縁含めて店員は忙しそうに対応していた。 


「おーい、兄ちゃん! この本日のオススメ詰め合わせの内容はなんだ?」

「すみません、確認しますね」

「縁先輩! 今日のオススメの内容ってなんでしたっけ?」

「むっちゃん、今日は国産チーズの盛り合わせと、ウインナー3種だ」

「チーズとウインナーの盛り合わせですね」

「チーズとウインナーか、兄ちゃん、それ人数分頼むわ」

「はい!」

「兄ちゃん、こっちの席にも人数分頼む!」

「わかりました!」

「おう! こっちにもそれ人数分くれや!」

「はい!」


 そこに黒いローブ姿の女性と、同じ姿の少女が来店してきた。

 2人はカウンター席に座り、ルルが笑顔で近寄っていく。


「あら、ドレミドじゃない」

「はぁ~い、ルルちゃん」

「あらまあ、そっちは娘さん? 名前は?」

「こんばんわ、スファーリアです」


 スファーリアは無愛想に軽く頭を下げた。


「はい、こんばんわ……って、ドレミド! 未成年者をスラム街の飲み屋に連れて来るんじゃないわよ!」

「ルルちゃ~ん、未成年者の従業員だっているでしょ? てかスラム街で何言ってんの」

「ぐっ……でもこんな可愛い子がうろついて大丈夫なの?」

「私の娘よ? 絶滅演奏術は一通り覚えさせたわ」

「だからって……まあ私がとやかく言えないけども」

「今日は必要だから連れて来たのよ、私がやってきた事が繋がるのよ」


 ドレミドは忙しそうに配給をしている縁をチラッと見た。

 ルルはそれを見逃さず、ニヤリと笑った。


「ドレミドがやってきた事? あんた最近まで色んな国や街を絶滅させてたじゃい」

「そ、邪魔者を排除しただけ」

「凄い賞金首になってるわよ、あんた」

「無駄よ無駄、私が滅ぼしたのは悪人、本気で擁護する奴は居ないわよ」

「はぁ……今日は何にするの?」

「兎君のカクテルを飲みたい」

「あんたも好きね、縁ちゃん~! ドレミドにお酒作って」

「あ! はい! これ届け終わったら行きます!」


 しばらくして縁がやって来て、カウンター席の内側に入った。

 

「私が配給するから、この2人の相手は任せたわ」

「わかりました」


 ルルはバレないようアイコンタクトをして、ドレミドは小さく頷く。


「兎君、仕事は慣れたかしら?」

「ええ、ルルさんには感謝しています、何にしますか?」

「何か軽いカクテルお願い、味は任せるわ」

「はい、貴女は何がいいですか?」

「未成年者なのでミルクでも貰います」

「今日はいいミルクがあるんです」

「へ~」


 スファーリアは無愛想に返事をする。

 縁はミルクをグラスに注ぎ、スファーリアの前へ。

 次にドレミド出すお酒をささっと作り、差し出した。


「失礼ですがドレミドさん、何かありました? 顔が暗いというか」

「最近気合を入れて絶滅演奏しただけよ、兎君は少し変わったわね?」

「そうですか?」

「ちょっと前まで世界を恨んでる顔だったのに」

「恩人に熱い説教されまして」

「貴方今いい音よ、って事は素敵な恋は出来たかしら?」

「……あの時の言葉遊び生きてるんですか」

「お母さん、言葉遊びって?」

「前にここに来た時、兎君はそれはもう酷い顔をしていてね」

「へ~」

「彼に素敵な夢を持ちなさいって言ったのよ、で、彼の答えが恋をしますだったの」

「はぁ、夢がありますね」


 興味無いと言わんばかりに、スファーリアはミルクを飲んでいる。


「ごめんなさいね、こんな娘で」

「いえ」

「あ、そうそう兎君、今日は貴方に助言よ」

「え?」

「言葉は素敵な音なの、本気の音は価値があって他人の心を動かすのよ、逃がしたくない音を見つけたら……素敵な音を発しなさい」

「わかりました、覚えておきます」

「……本当に変わったわね、人からのアドバイスをちゃんと受け入れるなんて」

「恩人に説教された時に、耳にタコが――」


 縁は何かに気付いた様な顔をした。

 そしてその顔は他者を絶対許さない顔をしている。 


「あら? 嫌な音が聞こえてくるわ」

「また俺を狙った刺客でしょうね、行ってきます」


 縁は小走りでルルに話しかけた後、店を出で行った。


「スファーリア、手伝ってあげなさい」

「え? どうして?」

「静かに飲みたいからよ」

「わかった」


 スファーリアも小走りで店を出ていった。

 タイミングを見計らって、ルルがドレミドの元へ戻ってくる。


「ちょっと聞かせなさいよ、気を利かせたんだから」

「難しい話じゃないわよ? 昔……成長した娘と出会った事があってね」

「あら、未来からやって来たって事?」

「そう、その隣に素敵な兎君が居たのよ」

「だからあんた昔から色んな奴らに絶滅演奏してたの?」

「娘の旦那さんの敵は少ない方がいいわ、潰せるうちに出来るだけ潰した」

「あんたもしかして……あまり絶滅演奏出来ないの?」

「ルルちゃん音色は変わっていくの、意味も無く他者を滅する演奏より、娘の幸せを願うようになっただけ」


 ドレミドはこれ以上ない、幸せそうな母の顔をしていた。


「あんた変わったわね~いい母親の顔してるわよ、けど子育ては死ぬまで終わらないわよ?」

「え? 子離れしないと」

「何言ってんの、娘がお母さんになった時に誰が子育て教えるのよ、経験に勝るものはないわよ」

「それは子離れ出来ないわね」

「奢るから色々と話しなさい、縁ちゃんには言わないから」

「……娘が帰ってくるまでね」


 楽しそうに話し出すドレミドとルル。

 一方、縁とスファーリアは無表情で外を歩いていた。

 店の外は荒れてる街並みが広がっている。

 生きてるか死んでるか分からない人に崩れた建物。

 嫌気がしそうな臭いも漂っていた。

 どう考えても普通の感性を持っていたら近づかない場所だ。


「どうしました?」

「お母さんに貴方を手伝えと言われた」

「……よろしくお願いいたします」

「ええ」


 それだけ言うと2人は無言で歩く。

 しばらく進とご大層な集団と出会った。

 老若男女、様々な種族の人達が2人を出迎える。


「見つけたぜ縁! お前が殺した家族の仇をとりに来たぜ!」


 スファーリアはすかさずトライアングルを召喚する。

 誰かが何かを言う前に、ビーダーでトライアングルを叩く。

 高音の音が辺りに響いて、一番最初に喋っていた男が死んだ。


「貴方随分と恨まれているのね」


 スファーリアつまらなそうな顔して縁を見た。

 縁は宝物を見つけた子供の様に、キラキラした瞳でスファーリアを見ている。


「どうしたの? 呆けた顔をして」

「え……あ……いや、後にします」

「そうね、殺し合いの最中に意味も無くベラベラ喋るのは愚か」

「そのトライアングル……テメェ絶滅演奏奏者か!」

「殺しに来たらどう? 話し合いに来たんじゃないでしょ?」

「けっ、こっちには一般人が居るんだ、殺し――」


 問答無用でスファーリアはトライアングルの音を鳴らす。

 周りに居た人間達はバタバタと死んでいく。


「殺せるけど?」


 スファーリアは面倒くさいそうにため息をした。


「やる気無くした、任せていいですか?」

「ええ」


 縁はウサミミカチューシャを外すした。

 すると、黒い色の和服にで全身からどす黒い血の色が全身から流れている。

 スファーリアはそれを見ても特に驚かなかったが、襲撃しに来た何人かが悲鳴をあげている。


「ほら、俺が相手になるから戯言たれろよ」

「戯言だと!? 俺達はお前ら家族に不幸にさせられたんだぞ!」

「そうだ! 家族の仇だ!」

「不幸の神は滅ぶべきだ!」


 様々な罵詈雑言、誹謗中傷が縁に向けられる。

 しかし縁は平然としている。

 そもそもその内容が、ほとんどがとってつけたようなものだった。


「ふーむ……まあつまり、お前らは『幸せ』になりたいんだな?」


 縁は最高の黒い笑みをして、両手を天に掲げた!


「では、最初に金銭を望む物に幸せをやろう、来たれ金銀財宝! 金銭欲、物欲を満たす雨を降らせ!」


 なんと空から金銀財宝が雨の様に降って来たのだ!

 叫ぶ声は一瞬にして無くなった、その場で生き残っている人はごくわずかだ。

 生き残った人達はその場から逃げようと、蜘蛛の子を散らした様に逃げ出す!

 

「ハハハハハ! よかったな! なんだ? 金銀財宝だ遠慮なく持ち帰らないのか? なら土産だ! 権力欲、支配欲、名誉欲、正義欲、平和欲……色々有るが、お前らに相応しい縁結びしてやろう!」


 逃げ出している残った人達の小指に突然赤い糸が現れて、それは直に消えた。

 その場には金銀財宝と死体、縁とスファーリアだけになる。


「はぁ……虚し」

「終わったわね、帰りましょう」

「あ、はい……そうですね」


 縁が辛そうな顔をしているのを余所に、スファーリアは先に歩き出した。

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