第一話 前説・幕開き 義理の弟のお知らせとサンディの生徒達
公式初イベントが終わっても、何時も通りの長谷川と荒野原。
閑古鳥が鳴くバイトが昼に終わり、昼食を済ませて何時もゲートへ行く道中。
「長谷川君、お願いがあるんだけどいい?」
「どうした?」
「今日ゲーム終わったら、弟と一緒にご飯いかない?」
「おお、いいよいいよ、弟君は何が好きなんだ?」
「ここは一つ食べ放題に行ってみない?」
「食べ放題か、時々行きたくなるな、雰囲気が楽しい」
「お母さんの知り合いが経営している所でいい?」
「飲食店経営ってすげーな」
「今日お母さんに、弟と長谷川君を会わせるって言ったら、速攻連絡してた」
「予約バッチリか」
「うん、7時から」
「遠いの?」
「何時も遊んでいるゲートからだと、車で30分」
「近いちゃー近いな、弟君との待ち合わせは?」
「何時ものゲートで先に遊んでる」
「おっけ、おっけ、よし、食べ放題の支払いは任せろ、バリバリ」
「ダメ、割り勘」
「支払いの時は誰かが一括した方がいいだろ」
「確かに」
彼氏彼女らしい会話をしている。
長谷川何かに気付いた様に、あっと声を上げた。
「んで、今日は何をするんだ?」
「シーナ先生のクラスとミーティング」
「会議? なんの?」
「今回は強化合宿の班分け」
「今回はって事は別の会議もあるのか?」
「うん、修学旅行とか文化祭とか」
「なるほど、開始場所は?」
「ロビーに行かずに桜野学園に来て」
「おっけー」
「そうそう、あゆさちゃんと生徒達はもう学校に居る」
「お、ついに桜野学園生徒になったか」
「うん、絆ちゃんとしてクラスのみんなには挨拶した」
「そっかそっか」
ゲートに着いた2人は受付を済ませる。
振り分けられたプレイルームで、長谷川は準備をしてログインをする。
今日は何時ものポーズはしない様だ。
縁は桜野学園の前までやってきた。
「あ、来た、実習教室でミーティングするから、付いて来て」
「ああ」
実習教室にはスファーリアの生徒とサンディの生徒が、座って並んでいた。
「おっ、来たな2人共」
「こんにちはシーナ先生」
「よ、サンディ」
サンディに軽く挨拶する2人。
「あの方がスファーリア先生の恋人?」
「ジャージにウサミミて」
「いやいや、見てくれだけで決めたら怪我するぜ、俺らもそれで痛い目みたしな」
「懐かしいな、シーナ先生に対してなめ腐ってる態度とったよな」
「殺されかけたな、殺気だけで」
軽装の女子生徒2人と、三馬鹿トリオが似合いそうな男子生徒。
五人組がこっそりそんな話をしている。
「ふむ、神の位は低いが、信仰が尋常ではない」
「太陽神の家系のお前が言うなら、そうとうやべーな?」
「ふむ、邪神の君から見てどうかな?」
「負の感情の信仰心で平然としてられるのが怖えよ、何なんだありゃ」
神々しく上品な雰囲気で、神々しき光を放っている男子生徒。
禍々しい邪悪な雰囲気で、悪しき闇を放っていそうな男子生徒。
相反しそうな2人は、堂々と縁に向かって話をしている。
「ってか、あのジャージやばくない? あれに傷つけられる武器ってそうそう無いカンジ~?」
「わかる~誰が制作したか気になる~」
「道具屋の私としては、あの鞄が気になります」
ギャルギャルしく、左右非対称に眼帯している姉妹が、縁のジャージを指差す。
絵に描いた様な、眼鏡をかて地味な道具屋の娘が、目を輝かせて縁の鞄を見ていた。
「はいはい、お前ら落ち着け、縁、すまんがこいつらの質問に、一つ二つ答えてやってくれんか?」
「ああ」
「んじゃ、質問が有る奴は手を上げろ」
「先手必勝! はいはーい! そのジャージはどうなってるんですか?」
右に眼帯をしたギャルギャルしい女子生徒が手を上げた。
「このジャージはブルモンド・霊歌という人が制作した」
「ほわぁ!? 伝説の鍛冶職人と知り合いとかパネェ!」
「お姉ちゃん! やべーよやべーよ!」
「ブルモンドさんを知ってるのか」
「もちろんってカンジ! あ、右に眼帯してる私は天津京子、左のこっちは妹の天津紫苑、よろしく~」
「よろしくな、天津姉妹……ふむ、ブルモンドさんと話したいか?」
「お、出来るの!? 兎先生話わかる~」
「ほらみっちゃん、今度はあんたの出番だ」
紫苑が、道具屋の娘っぽい女の子を軽く叩いた。
「あの、先生、私、九十九未知納といいます、その鞄は先生の神器ですか?」
「おお? 神器と鑑定出来るとは、いい目をもってるね」
「当たり前だ、私の生徒達だからな」
「どうやって授業してるんだ? お前が教えてるのか?」
「いや、外部から特別講師を呼んでいる」
「なるほど」
「先生、話をいいだろうか?」
太陽神らしい生徒が手を上げた。
「縁先生の実力はいかがなものでしょうか?」
「お前相変わらず失礼だな」
「君も気になるだろう? 人の血がありながら、呪いとも呼べる負の信仰心を持っていても、平然としている事を」
「いやそうだけど、言い方って物があるだろう」
「失礼、自己紹介がまだでした、私は太陽神のアポロニア、こっちの邪神がダエワ」
「お前のオマケみたいな紹介の仕方だな?」
「そう目くじらたてるでない」
アポロニアとダエワは仲の良い兄弟の様に話をしている。
「サンディ、何で有名な太陽神の家系と、地獄で仕事している邪神の家系が居るんだよ」
「あれ? 言ってなかったか? 私のクラスはちょっと訳アリな奴らを受け持っているんだ」
「ほう」
「まあ、それは後で説明してやるよ」
サンディは近くの時計を見た。
「質問はここまでな、時間がある時にやってくれ、んで縁」
「なんだ?」
「ミーティングする前に聞きたい事がある」
「聞きたい事?」
「私もスファーリア先生もな? 『これだけは知っておけ』って事を生徒達に教えているんだ」
「ほう」
「あたしは『なめ腐ってる奴は潰せ、人の話を聞かない奴は潰せ』だな」
「スファーリアさんは?」
「敵は絶滅する」
「なるほど、知っておけって事か?」
「そうだ」
「んじゃ、アポロニア君の質問に答えるか、それが一番伝えたい事になる」
「お?」
縁は殺す様な目付きでサンディを見る。
「サンディ、久しぶり手合わせしようか」
「ほう? いいぜ? あたしは強くなったぞ?」
「楽しみだ……俺が伝えたい事は」
黒いジャージを鞄から出した。
「生半可な覚悟で神に喧嘩は売るな、だな」
黒い笑みを浮かべて一瞬で、黒いジャージに着替える。