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VRゲームでも運と愛し合おう!  作者: 藤島白兎
第二章 ジャスティスジャッジメントの正義
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第九話 幕開き 次は無い

 縁は桜野学園前まで移動してきた。


「来た、休日出勤ご苦労様」

「スファーリアさんもね」

「教室に行こう」

「ああ」


 ほぼ誰も居ない校舎の廊下を通り、教室へと向かう。

 教室では生徒達が座っていた、スファーリアと縁は教壇へと立つ。


「みんな居るわね、これから授業を始めます、まずは前回のみんなの反省から聞きましょう、自分達のした事の反省じゃなくて、戦闘の反省ね」

「僕達の無茶を怒らないんですか?」

「経験は必要、だけど次は無い、死にたかったら卒業してからやって、迷惑だから」


 スファーリアは生徒達を『殺す勢い』で見た。


「……す、すみません」


 生徒達は縮こまってしまった、おそらくは予想はしていたのだろう。

 だが、本当に次は無い事を身体で感じた生徒達に、縁は優しく語り掛けた。


「スファーリアさんは、無許可でやった事を怒っているんだ」

「そう、私は縁君との時間をあなた達に潰されたんだけど? これ以上はグチグチ言わない」

「「「「……」」」」


 今更になって生徒達は自分達がした事をわかった。

 死の宣告をされて、震える死刑囚の様に黙っている。

 そんな生徒達を見てスファーリアは溜め息を一つした。


「今後役に立つ経験は出来た? それが出来たなら今回は許す」

「はい、もちろんです」

「じゃあ一本槍の感想を聞こうか」

「わかりました、まとめてきましたので、それを読みます」


 一本槍は用意していた紙を取り出して、それを読み始めた。


「先生方が来るとは分かっていても、いつ来るか分からなかったので、ペース配分がわかりませんでした、次に神の力は恐ろしい事です、相手にするのも自分で使うのも、今回生き残ったのは相手が調子に乗ってたからで、いくら未来さんの占いの結果が高くても、安易な考えでした」

「一本槍君は神の脅威を知ったかい?」

「はい、相手にした時は人知を超えた力でこちらの行動が無意味に、自分で使った時はその力の虜になりました」

「使おうと思うかい?」

「はい、それに見合う知識と経験を積んでから」

「そうだ、タダで強大な力を使えるとは考えない事だな」

「はい、この間の事でこりごりです」

「神の加護については後でやるとして、一本槍君はそんな所か?」

「はい、以上です」

「うむ、なら神様繋がりでツレ君はどうだ?」

「俺っすか?」


 少しうなだれていたツレは顔を上げた。


「正直、俺が居なかったらやばかったっすね」

「だろうね」

「縁君、どういう事?」

「例えば風月が誰かを殺すと決めたら絶対だろ?」

「そうね」

「死神はそれを回避できるのさ」

「あの時はツレは存在を削ってたようだけど?」

「死が強い程、守るのに力を使うからな」

「学校じゃガチで死ぬ機会なんて、これっぽちもないじゃないすか」

「当たり前、有ったらダメでしょ」

「だから死神としてぶっつけ本番だったんすよ」

「なるほど、これは課題ね」

「今更だがツレ君は死神として、どうしたいんだ?」

「俺っちは気ままに学園生活出来て、卒業出来たら気ままに死神として、死者の魂を冥界へ送る仕事すればいい、と思ってました」

「お、考えが変わったかな?」

「あんなイキリチラシ野郎から、友達を死を守る事に苦戦してたら、魂を届ける仕事なんて付けないって事が」

「だな、それにサングラスやアクセサリーを外す事を躊躇していただろ?」

「はいっす」


 ツレは自分のサングラスに手を掛けた。 


「一本槍達の寿命が見えたり聞こえたりするからっす、それに外したら……今の自分には制御出来ないっす」

「ツレ君、力は自分で制御出来て力だからな?」

「耳が痛いっす」

「いや、俺が言うのは説得力がなかったかな?」

「縁先生のは意味合いが違うじゃないっすか」


 ウサミミカチューシャを触る縁に、ツレは苦笑いをするしかなかった。


「ファリレントはどう?」

「お姉ちゃ……スファーリア先生から教えて貰った演奏術に絶対の自信があったのに、無理だった、あんなふざけた音をしている奴に手も足も出ないなんて」

「仕方ないわ、貴女は基礎しかしてないんだから、でもいい事よ? 基礎だけで耐え抜いたのはいい音を持っている証拠」

「……勝手をしてごめんなさい」

「その話は終わった事よ、でも確信を持って次の段階にいけるわ」

「スファーリアさん、次の段階って?」

「演奏術には種類が有るの、私なら絶滅演奏術、ファリレントは『祝福演奏術』の才が有る」

「それはどんな演奏術?」

「文字通り祝福に特化した演奏術、支援が得意な演奏術と思って」

「よくわかるな」

「ファリレントの根底にあった音が『ここで死ねない! お姉ちゃん達の結婚式に出るんだ! 生き残ってやる!』って強い音だったから」

「おお……なんて言うか……そんなもんなのか?」

「そんなもん、潜在的な音って」

「なるほど」

「あの」


 未来は無表情で手を上げた。


「今回は私の占いの結果が招いた事です、三流以下の占い師の行動でした」

「三流以下? どういう事だ未来さん?」

「結果だけをいい、対象者に『選択肢』を与えなかった事」

「選択肢?」

「今回の場合、新たな力を受け取る、授かる、開花する可能性だけを示しました」

「だけ?」

「危険性を大雑把に説明してしまった、二流にもなれない」

「未来さんにとって一流とは?」

「可能性だけ提示して選択させる事」

「なら未来さんは一流だな」

「んな馬鹿な」

「いや自分で言ってたでしょ? 選択させる事って、一本槍君達は理解してやったんだろ?」

「むう……」


 何を言っても、いい方に言い換えされると感じた未来は、困った顔をした。


「聞いてる限り各々の反省点が分かっているようだ、んじゃ、気持ちを切り替えてこいつを渡そう」


 縁は鞄から少し分厚く、持ち手の着いた小さい紙袋を、生徒達の机に置いていく。 


「縁先生、これは?」

「神御用達のスマホ、通称『カミホン』だ、連絡手段としてみんなにプレゼントだ、開けてみてくれ」


 生徒達は一斉に紙袋見る、その中に小さい長方形の箱が有る。

 それを開けると縁も使っているカミホンが姿を現した。

 目の色を変えて生徒達はカミホンを見て触っている。


「縁君、一旦休憩にしましょう」

「喋り疲れた」

「戦闘科の職員室に案内するわ」

「わかった」

「私達が戻ってくるまで自由してて」

「あ、はい!」


 生返事な生徒達をその場に残してスファーリア達は職員室へと向かった。


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