先斗町
四条大橋を渡る手前に、細く長い路地がある。
この界隈、昔は芸者や飲み屋で有名だったらしいけど今は、たくさんの人で賑わっている。
晩秋の京都は日が落ちると冷え込みが厳しい。
なぜここに来たのか、何を待っているのかは私は分からなかった。
暫く待ってみたが何も起こらないので、先斗町に足を踏み入れてみた。
賑やかな雑踏をくぐり抜け、奥に進むとモツナベや焼き鳥屋、ラーメンのお店がたくさんある。
路地は昔と変わらない懐かしい匂いで混じりあっていた。
「あれ?こんな抜け道今まであったかな?」
見覚えのない道を見つけた私は、
不思議に想い、歩いていった。
道を抜けると古い町屋がそこに建っていた。
町屋の表面には蔦が這い、もう長い間その場所にあることが伺えた。
「いらっしゃい」
町屋の中には、朱い首輪の三毛猫を膝に乗せたおばあさんがいた。
「もう随分人が来なんで退屈しとりましたんや」
猫は身体を伸ばし、ゴロゴロと喉を鳴らした。
「ところであんたの探し物は、なんかな?」
「探し物…?」
「そうだよ、探し物を見つけに来たんだろう?」
その瞬間目の前が、まっくらになった。
ジワジワジワ…
蜩が校庭いっぱいに鳴いている。
目を覚ますとそこは私の通っていた学校の校舎だった。
30年前とあり、木造の校舎は歩くたび、床が軋んだ。
そうだ…思い出した…あの時…
「まや」
その声に振り向くと、
そこにはカナが立っていた。
ずっと待っていた、私の友達…
そして、私は30年間ずっと伝えたかった言葉を口にした。
「あのな、あの…なカナ、こないだ私絶交するって言っちゃったけど、アレほんとは嘘なの。ごめんな」
「 良いよ、大丈夫。
ちゃんと解ってるから」
気付くと、私は先斗町の入り口に座り込んでしまっていた。
「大丈夫ですか?」
どうやら近くの交番からおまわりさんが駆けつけてくれたらしい。
「えぇ、大丈夫です。すみません」
…あの町屋は何だったんだろう。
もう今はいないカナに気持ちを伝えさせてくれた…。
リン
その音のほうを振り向くと、朱い首輪の三毛猫が佇んで笑ってるように見えた。




