第1幕「開始~はじまり~」
初めまして!元氣累々でっす!
駄作ですが、よろしくお願いいたします!
「神頼み」という言葉がある。
苦しくて…つらくて…死にたくなったときは人はいつだって「神頼み」だ。
でも、その願いだって大低が「叶わない」。
それを恨む人もいるけれど…「無いもの」を恨んでも意味がない、と思っていた。
でも、「あのとき」をきっかけに、僕は
「神様」なんて信じず、誰にも頼らずに生きていこうと自分に誓った。
東寺 神太はこのとき五歳の誕生日を迎えたばかりであった。
第1幕 開始~はじまり~
『この世には「天界」と「人間界」、「地獄界」がある。
「天界」には神様や天使、精霊が、「人間界」には人間や動物が、「地獄界」には悪魔や魔神、魔王がそれぞれ住んでいる。
そして、この世界は「天界」から神々の力を授かった者たちが生活を営む世界。
その名を「授天界」という。』
「授天界」東大国領 鳴葉町
鳥が囀り、朝日がさし始めた町はとても閑散としていた。そんな街中で有名な八百屋「百合屋」の朝ははやく、今日も朝から品出しに精を出す。
「ふう…、女手一つだとちょっときついわね。」
「百合屋」を営んでいるのは藍色の髪で右目を隠した眉目秀麗の女性、霧島マチである。マチは数年前まで夫と営んでいた「百合屋」を女手一つで支えていた。
「…もうずいぶん経つのね。ふふふ、私も老けたかしら?」
…とかなんとか言っておきながら、実際に見てみると20代前半にしか見えず、「百合屋」繁栄の原因の一つといえる。なんだか男共がこれだけでマイナスイメージがついてしまいそうだ。
マチが野菜の品出しをしていると町のほうから足音が響いてきた。軽快にリズムを刻んでこちらに向かってくる。おそらくランニングだろう。
「またあの子ね。確か今日は中学校の入学式じゃなかったかしら?」
マチは走ってくる人物を知っている。彼は数年前から毎朝のようにランニングを続けている。
「おはようございますマチさん!」
まだ幼さが残る高く、元気のあふれる声が響く。振り向くと茶色の髪をなびかせ汗を光らせる少女のような顔立ちの少年がジャージを着て走ってきた。
「おはよう神太君。朝から精が出るわね。」
少年の名は東寺神太。マチが言ったとおり、今日中学生になったばかりである。
「いいえ!もう日課ですから。帰ってからも少しやりますよ。」
「青春ね~。これが若さってものかしら?」
「やだな~!マチさんも若いじゃないですか~!」
「あらやだ!私、もう行き遅れの32歳よ?」
朝の他愛ない会話がマチの楽しみになっている。
しかし、マチはあの時以来、神太を気にかけている。
「神太君、何でそんなに頑張るの?あまり必要じゃないでしょ?」
「………。」
神太は顔を俯かせ渋る。それは、何かを思い出し悲しみに包まれているかのように…
「…僕は自分しか頼るものがありません。だから…
たとえ何も頼らなくても生きていけるように…努力してるんです。」
神太の力のない笑みに、マチは心が痛んだ。「頼るものがない」という言葉からはとても中学生とは思えない重みを感じた。
¦どうして私を頼ってくれないの…?¦
「…神太君。」
神太はマチに再び笑みを返し、マチに背を向ける。
「じゃ、僕はこれで!」
「あ…うん。頑張って…。」
そう言い残し、神太はもと来た道を引き返し、町の中に消えていった。
その背中はどこか寂しげで、どこか儚げで…見るに堪えないものだった。
神太の背中を、マチは見えなくなるまで見つめていた。
「神太君……まだ、あの事引きずっているのね…。」
それは七年前、神太が大切なものを失った…ある事件のことだった。
鳴葉町の街中にある二階建ての一軒家、その一軒家とともに建てられた蔵のような古風の建物から、何かを打ち付ける音が響いている。それは止むことなくなり続けている。
建物の中は広いが、ある一角を除いてがらりとしていた。
ジャラジャラと鎖がしなり、吊るしてあるサンドバックが激しく揺れる。
神太は反動で返ってくるサンドバックに拳を打ち付けていた。
(僕は……弱いんだ。まだ……)
容赦なく打ち付ける拳は、速度が落ちることなく、逆に徐々に速度は上がっていった。
拳のみならず、脚で蹴りつけながら、次々と連撃を叩き込んでいく。
(弱いから…いけないんだ。何も…守れてない!)
上段蹴りを受けたサンドバックは高らかに打ち上げられ、次第に重力に引き寄せられ、神太に迫っていく。
(許せない…何も守れていない自分が!)
ドスンと音を立ててサンドバックから砂が流れ出ていく。
神太の腕がサンドバックに突き刺さっている。砂を失ったサンドバックは空気を失った風船のように力なくしなびれていた。
「そろそろ…準備しなきゃ。」
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制服である真新しいブレザーに袖を通し、鏡に向かい合いネクタイを締めなおす。
今日から神太は中学生だ。新しい環境に飛び込んでいくという不安もあるが、何よりそれにわくわくしていた。
靴を履き、玄関を出ようとドアノブに手をかけてふと目線を横に傾けた。
そこには、写真立てがあった。そこには、小さな子供と一組の男女が映っている。
しかしその写真はところどころ焼け落ちていて、男女の顔の部分が無くなっていた。
神太はその写真に儚げな笑みを浮かべ、ドアノブを捻った。
「行ってきます。…父さん、母さん。」
学校への通学路はすでに仕事に行く人たちや散歩やランニングに勤しむ人たちで賑わいを見せていた。
神太はこの朝の賑やかさが好きだった。活気に溢れた人たちは見ていると元気が出てくる。しばらく歩き、学校に近づいていくと、
「神太!おはよう!」
「よう!神太!」
振り向いてみると、茶髪をツインテールにまとめたどこか幼さが残る少女と、きれいな黒髪を肩まで伸ばしてそのままにした、少し目線が鋭い少年がこちらに歩いてきた。
このやり取りも神太にとっては既に毎日の日課になっていた。
「おはよう、海斗、雀芽!」
「今日から私たちも中学生だよ!また同じクラスだといいなぁ。」
「そうだな。神太にはまた宿題手伝ってもらわないと…」
「……。」
少女の名は空野 雀芽、少年は波響 海斗という。
雀芽、海斗、神太の3人は、小学校来の幼馴染で、いつも一緒に登下校している。
しかし、神太には堪えがたい事実があった。
「ん?どうした、神太?」
「どうしたの?」
雀芽と海斗が神太の顔を覗き込んだ。海斗が雀芽の肩を抱き寄せながらだが…。神太は立ち止まっていて、気のせいか肩が震えている。いざ神太が顔を上げると、その顔は…笑顔だった。
ただし、顔は笑っていても目は笑っていなかった。
「お前たち……
朝っぱらからイチャイチャしてるんじゃなあぁぁぁぁぁぁぁい!」
そう、実は海斗と雀芽は恋仲なのだ。しかもただの恋仲ではなくいわゆる「許嫁」同士なのだ。朝から甘ったるいフィールドを張られては神太にとって拷問を歩きながら受けているようなもの。しかも、この関係が小学校時代から続いているのだから、神太は頑張ったと褒められるに値するだろう。それに対して…
「んだよ、羨ましいか非リア充♪」
海斗はここぞと言わんばかりに自慢し、
「……………。」
雀芽は顔を俯かせて無言になっていた。よく見れば顔が耳まで真っ赤になっている。
神太は別段羨ましいわけではないのだが、朝から見せつけられると腹が立つというか、気分が悪くなるというか…要するに気に食わないのだ。
ここまでの流れは完全に海斗にあったが、神太は毎回これを即刻覆す魔法の言葉を唱える。
「あっそう、それなら宿題はうつ「すみませんでした!」……はぁ…。」
海斗は神太に向かって土下座をした。十人中十人は惚れ込むくらい綺麗な土下座を。
ちなみに海斗は吊り目がちだがかなりイケメンである。そんなイケメンが土下座をすれば、綺麗に見えないわけがない。
「全く…少しは自分でやるということを覚えなよ?」
「「それは出来ない!」」
呆れてものが言えない…。二人はまあまあな成績を有しているが、それは大抵テスト前日に神太に泣き付いて、教えを乞うた成果なのだ。というより、こういう時にだけは、この二人は息が合うらしい。
「はあ、何だか中学校生活に希望を見いだせないよ…。」
とりあえず、今日も仲良しの幼馴染に振り回されながら一日が始まる。
しかし、それに反してこの「何でもない平穏」が崩れる足音は…
(グヘヘ……雀芽ちゃん♪今日から君は…僕のモノだよ♪)
着実に、近づいてきている。




