表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

5話 試験の終

 

 ルビースパイダーの皮膚は通常の攻撃ではびくともしないようだ。

 実際、クルトの他に打撃系攻撃で魔物を傷つけた者は誰一人いなかった。

 打撃攻撃以外では数人の人物がルビースパイダーを殺傷している。

 俺の少し前で鎧姿をした魔物を召喚し、鋭いかまいたちのような攻撃で

 3匹を瞬殺した召喚士。試験開始前に話しかけてきたあの青年だ。

 他にも弓を持った黒髪の若い女も蜘蛛にダメージを与えていた。

 俺のラットナイトも何度かルビースパイダーに攻撃を加えたがやはり

 使用している武器が錆びた剣だけあって一切ダメージは通らなかった。

 しかし、ルビースパイダーの攻撃は紙一重ですべて回避している。

 俊敏性が高い魔物だけあって、それだけは評価できるだろう。


「避けるだけじゃやっぱ厳しいよな」

 

 試験が始まってすでに20分以上経過している。

 このまま他の連中に魔物を任せるのも手ではあるが、やはりそれでは

 格好が悪いじゃないか。

 

 タクトは頭の中で温めていた作戦を実施するべく地面へ視線を向けた。

 円を描き、六芒星のようにして線と線つなげ、中央にさらに円を描く。 

 

「二つの肉体、二つの魂、それらを合わせ、あらたなる個となりて

 我が名に従いし魔族を召喚する。目覚めよ我が眷属よ」

 

 瞬間、視界の先で戦っていた二体のラットナイトが光となりて空に浮かび上がる。 

 小さな二つの玉がユラユラと輝きを放つとそれは円の中へと急落下し、瞬間

 地面に衝突すると、周囲に電流を放った。同時に震度が空間を揺らせ

 地響きを大地に響き渡らせる。

 

 それは激しい風と砂塵の中から現れる。

 鋼鉄の鎧を纏い、鉄の大剣を背中に背負った魔物。

 ラットナイトよりも一回り大きく、周囲に威圧感を漂わせる鼠の姿をした魔物。

 

「ラットソルジャー?」

 

 魔導神書に新たな名前が増えていた。

 

 LV4ラットソルジャー 

 魔王ルシエラによって作られた魔物。

 鋼鉄の剣を自在に操り、敵を両断する。

 無類の猫好きで刺客に猫を利用され死亡。


 成長タイプ 幼少期の天才

 主な攻撃手段『鉄の大剣による一刀両断』

 好きな言葉 『猫は友達』

 攻撃力11防御力7俊敏性9生命力11

  

「LV4って……これはまずったか」

 

 現在タクトのレベルは3。

 地道にレベル上げをした結果、3まではこの一週間で上げることが出来た。

 しかし、召喚してしまった魔物はLV4、レベル条件を満たせていない。

 この場合どうなるんだろうか、暴走して俺を襲って来ちゃたりする?

 不安を抱えつつもタクトは恐れ恐れ、魔物に指示を与える。


「ラットソルジャー、あの三体の蜘蛛を片付けてくれ」

「ん? 俺を召喚したのはお前か?」


 大きな剣を背中に背負った魔物がそう言うと、タクトは頷く。


「そうだ、だから俺の命令に従ってくれ」


 ラットソルジャーは腕組みをしながら腰を下ろす。


「お前のような人間が俺の主とは、全く苛立たしい。

 この際殺して自由になってしまうか」


 一瞬怖い発言をするが、すぐに笑って魔物は言う。


「冗談だ。俺はそこまで落ちぶれてはいない。コレでも魔王陛下をお守りする

 ソルジャー隊の一員だったんだ、上司には絶対服従するつもりだ。

 さて、俺を使うにあたって、注意事項を言っておくぞ」

「注意事項?」

 

 何度、色々と面倒そうな奴だぞ、この魔物。


「一つ、猫をいじめたりすると、俺はお前を殺す。

 二つ、合成はやめてくれ。俺は俺でありたい。

 三つ、相手を指定するのはお前だが、殺し方を決めるのは俺だ。

 この三つの条件が守れるのなら俺はお前に力を貸してやっても構わない」

 

「安心しろ、俺は猫愛好家だ。後合成はお前にはしないと約束しよう。

 殺し方も君に任せるよ」

 

 案外適当な注意事項だな。これなら別になんの問題もない。


「よしわかった。では力をかそう」

 

 そう言ってラットソルジャーは背中に背負っていた剣を鞘から抜き取った。


「さてさて、害虫駆除といきますかな~」

 

 ゆっくりと、本当にゆっくりとラットソルジャーは魔物に近づいて行った。

 魔物と数歩の距離まで近づくと、見下すような眼でルビースパイダー三匹を見据えた。

 

「固そうな皮膚をしてやがるな? だが……」

 

 そう言った途端にルビースパイダーがラットソルジャーに加速した。

 ラットソルジャーはその攻撃をいとも容易くよけてしまう。 

 ラットナイトであった頃の俊敏性はそのまま彼に受け継がれているようだ。

 すぐに、ラットソルジャーが声を上げる。


「俺に切れぬ物はない。お前らの強固な皮膚ですらも俺には問題ない」

 

 一振り、それはたった一振りで終わる。

 空を切る音と肉が切り裂かれるような鈍い音が空間を覆う。  

 瞬間、地面に汚物が撒き散らされる。


「こんなものか? 俺は物足りないぞ」 

 

 更にもう一匹、魔物がラットソルジャーに加速する。

 しかし、それも彼の一撃で容易く葬られた。


「こんなものか? つまらんな~」

 

 そう言って、軽く剣を振りぬき体液を振り払う。

 

 そこで、声が上がる。

 赤髪のあの男の声。


「君に、君、それに君と君。合格だ~後のただ見てた奴らは

 クズだ。おとなしく帰りな。そして選ばれた君たちにはおめでとうと

 言っておこう。これから冒険者として頑張ってくれ」

 


 

 

  

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ