3話試験
広大な平原に囲まれ、豊富な資源に恵まれた王国。
ラトアニア。
4つの大国の一つであり上空大陸への扉を所有する国である。
異世界にやってきて一週間が経とうとしていた。
不安に思っていた言葉の壁は現在起こっていない。
話しかければ普通に日本語で返してくる。
次に世界観だが、この世界は中世ヨーロッパのような貴族と騎士があふれる
世界のようだ。人は平民、貴族、王族とわけられ、身分制度も確立されている。
中世のヨーロッパを彷彿させる町並みと人の姿にはもう慣れた。
街の中での聞き込みでこの世界の事はある程度理解したと言えるだろう。
旅人や酒場の亭主に聴きこみをしたところ、この世界には9つの大陸が
存在していることを知った。道中空を見上げ、目撃したあの地上の断面は
天空大陸と呼ばれる大陸の一部であった事も亭主の話によって理解した。
この世界にはどうやら空に8つの大陸が存在しているらしい。
まるで階層のように上へ上へと距離を置いて空に浮かび、
力あるものは天空を、力なき者は下へと追いやられる。
人は、力なき者。
最下層である、この大地で生まれた。
凶暴な魔物や知性のある魔物、力のある魔物たちはより高い大陸に存在し
階層を重ねるごとに強さは増していく。しかし、そのかわり強い魔物からや
より上層で手に入れた素材は最下層では金よりも価値のあるものとなる。
理由としては不老不死になる薬や武器の魔族強化など特殊な性質を持つ物が
沢山あるからである。冒険者と呼ばれる人間はそれらの素材を求めて危険を顧みず
上層を目指すのだ。あるものは力を欲し、ある者は不老の薬を求め、ある者は
名誉を手にするために、そして、ある者は国を背負い、様々な思惑を抱えて
冒険者達は上層を目指す。そして冒険者の中でも第五層以上の攻略者には
国が権利と名誉を与え、国家直属の独立部隊の勧誘にやってくると言われている。
何故国が冒険者を雇うのか、それは冒険者の並外れた力を国の強化に役立てる事も
そうだが、ほとんどは天空から落下してくる天空魔獣を狩ることにある。
多くの兵力を回しても殺すこと叶わない魔物を冒険者に依頼し、討伐してもらうのだ。
先週タクトが見た蜘蛛のような魔物も天空から落下した魔獣であったことが最近
わかった。
今俺は冒険者資格を得るために冒険者試験が行われる試験会場に足を運んでいた。
試験会場には例の魔獣を討伐した男が来ているとい情報もある。
何故おれは冒険者資格を得ようとしているかというと、天上大陸に行くには飛空艇か
王国が所有する神秘の扉を通る必要があるのだが、その乗船、もしくは扉を通過するために冒険者の資格は絶対条件のようで、俺は仕方なく冒険者試験を受けることになった。
「冒険者試験の会場ってここでいいんですか?」
古びれた酒場の中で若い女の人がにこやかなに笑う。
周囲には数十人の人間がイスや壁に背を預け、佇んでいた。
「そうですよ。試験を受けにいらしたんですか?」
「はい」
女は笑みを浮かべると、書類を手渡してくる。
書類に名前を記すと、すぐにカウンターにそれを置く。
「はい、ではしばらくお待ちを」
間もなくして試験は始まった
試験の内容は捕獲された低級魔物を殺傷、もしくは捕獲する事。
それ以外の条件はなかった。
タクトはポーチからラットナイトを召喚し、数秒でそれを達成する。
その日、一次審査を終え、俺は用意された待機室へと向かった。
そこで男に声をかけられる。
「君も魔獣使いなんだ~僕もなんだよね~」
若い、緑色の髪をした青年。
同い年くらいに思える好青年だ。
目は青く、面は綺麗に整っている。
服は魔導師風のローブを着ていた。
「そうなんですか~で? 何のようですか?」
「いや、その……」
この場にいる人間は全員敵、そんな心持ちでやってきた俺は
冷たく男を引き離す。
「君のあの……鼠みたいな魔物あれはどうやって召喚したいんだい?」
訪ねてくる男に、俺は視線を合さずに言う。
「企業秘密」
「……」
彼はその後、何も話さなくなった。
そして、第二試験が始まる。