・絶対描写と比較描写
男「絶対描写と比較描写、ねぇ」
女「そう、それがまさしく大切だ。片方は抽象的に、もう片方は具体的に表現している」
男「ふむふむ、なるほど」
まずはここに美しい女の人がいます。
男「ストップ。自画自賛はやめたまえ」
女「そんなんちゃうわ!」
それを絶対描写と比較描写で書きます。
絶対描写では単に「美しい女性」と書くわけだね。
比較描写では「街行く人の10人に1人は振り返って確認してしまうほど美しい女性」「クラスの女子の平均よりも美しい女性」と書きます。
男「街行く人の9人は俺かー」
女「振り向こうぜ」
男「過去は振り返らない主義でね」
女「ふりかけ野郎め!」
男「ふりか、しか合ってないっす」
絶対描写の利点は、「その属性が付与している」ということのみを純粋に伝えられる点で、詳細はぼやかせます。
また、文章のテンポ上、人物を描写するのにいきなり詳しく書きすぎると、読み手が読みづらくなるので、ゆっくりゆっくりと長期的に描写する手法で役に立ちます。
女「最近ゆっくり描写する小説が少ないんだけど!」
男「キレる若者」
女「いきなり何なのさ! 『委員長である彼女は、青い髪のポニーテールを腰まで下げていた。目は釣り目、薄い化粧を施しただけの素顔。
めがねが利発的で、まさに委員長のようだった。スリーサイズはむにゃむにゃむにゃ。服装はきっちりしていて、寸分の隙もない。ひざ下までスカートのすそが伸びている。
赤い髪留めが彼女のチャームポイント。性格はツンデレ』とかいきなり言われてさ、
次から『青髪の委員長は』とか『青髪の彼女は』しか説明しないのはなんでさ!一回こっきりで覚えろってか! 暗記か!」
男「委員長と言えば黒髪の三つ編みおさげだろ!」
女「知らんわ!」
男「なんかその例じゃ、作者は青髪しか重要だと思ってないみたいだね」
女「こんな描写もできるのにね。『委員長である彼女は、腰まで下ろしたポニーテールの青い髪が印象的だった。それでいて、利発的なめがねが映えていた。』としておいて、
後から『委員長は、赤い髪留めを弄りながら、』『委員長は、その隙のない服装をはたいて、』『委員長は、ひざの下まで降りたスカートをめくりながら、』とか」
男「最後待て」
女「『委員長は、そのツンデレな性格を存分に発揮して、』『委員長は、そのスリーサイズでむにゃむにゃむにゃ』」
男「まぁ、あれだね。最初は視覚的な要素の強い、『色』と『顔』を描写したわけか。それで後の細かい部分は、後からじっくり描写すると」
女「『委員長は、最後にはその釣り目を潤ませて、』」
男「俺のスルーをスルーした!?」
女「『委員長は、いつも彼女がしている薄い化粧を軽く整えて、』」
男「えーと、つまりアレです。文をいくつも跨いで描写することで、一部にだけ力を入れるという、力のむら、をなくす方法ですね。
利発そうなめがね、がまさにそれですね」
女「委員長、可愛かったぜ」
男「めがねを詳しく書いてもつまらない。彼女がなんとなく利発そうにみえるだけでいいから、絶対描写にしたわけだ」
女「逆に比較描写は、盛り上がる部分に使うべきだね。作者は青髪を大切にしたいわけだから、こう書くべきだ。
『彼女の髪は、薄くつやがかっていて、それでいて深夜よりも深い闇の青色が、その一本一本に宿っていた。ゆれる度に、その色が生きていることをひしひしと感じるぐらいに、ずっと深かった』」
男「つやってポマードですか」
女「ひどい」
男「つまりあれだね」
女「うん、つまりはね」
視覚描写で重要視されるのは、色と顔、形です。
そういうものを詳しく描写するときは比較描写=相対的描写をしますね。
逆に、心情的な描写を視覚描写で表現するのは、特別な意図がない限りは絶対描写が多いかと思うんだ。
比較描写を使うと、力が入るので、連続して力が入っているような力んだ小説にならないように、なるべく心がけましょうね。
女「以上、顔形良しの色女より」
男「まあ、比較と言う概念が日本にはないのかもしれない。なんせ今まで『描写を詳しく書け!』の一言で済まされた問題だからね」
女「ぶっちゃけ一言で言えばそうなんだけどね」