王家の呪い
我が王家には、ちょっとした秘密がある。
先祖が獣人の血を引くため、条件が満たされると、動物に変身するのだ。
例えば私は、びっくりすると犬になってしまう。
いとこのイザベラは、公爵令嬢だが、母が王女だったので、同じ血を引いている。
彼女の場合は、しゃっくりをすると、猫になる。
極めつけは、国王である父上だ。
勤勉で、いつも執務に追われている父上は、疲れがたまるとナマケモノになる。
怠け者ではなく、動物のナマケモノだ。
なんでナマケモノ?
この呪いともいえる変身の意味が分からない。
父上がナマケモノに変身したときは、母上が執務を代行する。
ナマケモノは、攻撃力も防御力も低いので、母上が護衛もする。
母上は、尚武のお国柄の隣国の王女だったので、剣の腕は近衛騎士にも引けを取らない。
滅多な人物には、ナマケモノになった父上は任せられない。
王家の秘密も守らなければならない。
私やイザベラは、変身したときは隠れている。
秘密を王族以外には知られないように。
猫になったイザベラは木の上に、犬になった私は茂みの中に。
万が一誰かに見つかっても、迷い猫、迷い犬と見なされるから。
母上一人では、執務も護衛も大変だ。
父上が変身すると、王弟である叔父上や、今は公爵夫人の伯母上も助けに来てくださる。
叔父上は、怒りが頂点に達すると熊に変身する。
伯母上は、あくびをすると虎になるらしい。
以前の王宮では、カモフラージュが大変だったそうだ。
王宮の庭に熊と虎を飼って、お二人が変身してしまったときは、熊や虎が逃げたことにして誤魔化したと聞いている。
父上の不在は、本当のことは隠されて、疲労により静養中と発表される。
母上は心配する貴族たちの対応に忙しい。
父上の部屋は、叔父上、伯母上、母上や私、イザベラだけが出入りを許されている。
私やイザベラが食事や身の回りの世話をし、叔父上、伯母上は護衛をする。
父上の静養中という発表を信じて、いつもより護衛の少ない機会を狙ったのだろう。
暗殺者が父上の寝室に侵入した。
怒りを暗殺者に向けた叔父上が熊に変身する。
鋭い爪と強力な打撃で、暗殺者の一人をなぎ倒す。
寝ずの番で眠くて仕方ない伯母上が、あくびをして虎になる。
もう一人の暗殺者を鋭い牙でかみ砕く。
熊と虎に襲われた最後の暗殺者は、
「ここは動物園か?」
叔父上、伯母上に倒されながら、つぶやいた。
この後、母上が駆けつけて後始末をした。
王家の秘密は無事守られている。




