水族館
三題噺もどき―はっぴゃくななじゅうはち。
水色に染まる視界では、たくさんの人が歩いている。
ベビーカーに乗せられた赤ちゃん、大人の手を離れて走る小さな子供、硝子に手を押し付けながら何かを指さす小学生くらいの子。
子供を連れてきた親、カップルらしき男女が数グループ、カメラを構えている人も居る。
「……」
その視線の先には、悠々と泳ぐ魚たちが数種類展示されている。
演出のひとつなのか、雨が降っているような音が聞こえてくる。
少し先に水が流れている展示があったから、その音だろうか。
「……」
なんだか、久しぶりにここに来た。
料金が上がったとかなんとかで、あまり来ることはなくなったのに。でもまぁ、幼い頃も別にそんなに頻繁には来ていないか。元々入館料は高い場所だ。
「……」
あぁでも、去年の夏休みに部活で来たはずだ。
学校からの距離があるから、学校に一度集合して、そこからみんなで電車に乗って行った。夏休みくらいしか校外で撮影に行くことなんてないから楽しかった。
それぞれが好きなように撮影して、学校で見せ合ったり、うまくいったものは大会に出したりしていた。
「……」
地元の、水族館に来ていた。
地元と言っても、先に言ったようにここに来るまではそれなりの距離と時間が掛かる。
今日は家族で来ているので、母の運転でここまで来た。
あまり長距離運転するのは嫌いだそうだが、我が家の末っ子の頼みを断ると機嫌が悪くなって面倒なので、連れて来てくれたのだ。去年までは運転好きが居たのだが。
……まぁ、元から今日は水族館に行く予定を入れていたから。
「……」
行きたいと言った本人は、人の多さに辟易しているが。
日曜日なんだから当たり前だろうと言いたいが、そんなことを言って更に機嫌が悪くなると面倒なので何も言わない。たまにカメラを貸してと言われるので貸すくらい。
これでも少ない方だろう。繁盛期でもないんだから。
「……」
首にかかったカメラの重さに、私も疲れてきているが。
写真を撮るのは好きなのだが、この一眼レフの重さはいつまでたってもなれない。
それになんというか、スマホの方がよく撮れるところもある。まぁ、設定の問題とかなんだろうけど、こう人が多いとあまり居座ることもできない。
「……」
今いるのは、この辺りの海を再現したと言う展示だ。
見覚えのある魚や、奇妙な形をした魚、少し可愛げのない魚。
あまり広いとは言えない展示場は、比較的まばらに人が立ち止まっている。
「……」
この隣には、どこの水族館でも人気だと思うが、クラゲの展示コーナーがある。
かく言う私も妹も、そこが目的と言うかメインと言うか……なので、落ち着くまで、人がはけるまで少し休憩だ。
もちろん、母もすぐそばにいる。真ん中の妹も今日は部活が休みだったらしく、なんだかんだ家族全員での来館となっている。
「……お腹空いてきた」
そうつぶやく末っ子に、自由人過ぎるだろうと、今更なことを思いながら、スマホの時計を見る。時刻は昼前と言う所だろうか。
混雑を避けようと思い、早めの時間に家を出て朝食も食べていないから、仕方ないが。途中コンビニに寄って、チョコレートを買ったけれど、気分じゃないとかで食べなかったし。
しかし、昼前という事はこの集団も、そのうちレストランに流れ込みそうな感じもするが。
そうすれば、クラゲの展示も多少は空くだろう。
「……ん、もういいんじゃない」
そう思いながら、ちらりと隣を見ると、かなり人が減っていた。
少し離れた位置から、またざわざわと聞こえ始めたので、今がチャンスだ。
そそくさとカメラを持ちながら、4人でクラゲの展示を見に行く。
「……カメラ貸して」
「……ん」
ふわふわと水の流れに沿って泳ぐクラゲたちは、幻想的な雰囲気を持っている。
カラフルなものもいれば、白いものもいる。長かったり短かったりする触手は、触れると危険だと分かっていても、触れたくなるような不思議な魅力がある。
「……」
カメラを妹に貸したので、私はスマホでクラゲを撮る。
ここの水族館の売店には、クラゲモチーフのグッズが数あるみたいなので、帰りにでも覗いてみよう。あの子は確かクラゲが好きだとっていたし、チンアナゴのキーホルダーとか買おうかな。こういう所なら、2つセットとかあるだろう。
「……」
そろそろ人が増えそうだ。
あとは他の展示を回って、昼食かな。……体育祭の次の日にはさすがに疲れたな。
お題:雨・チョコレート・水族館




