幕間 その3 新たな“兄”弟
兄貴ができた。え、弟じゃなくて兄?もちろん兄です。
姉貴に向ける感情は複雑だった。幼い頃は誰よりも慕っていた姉貴、そんな姉貴は、どうしても自分より戦いの才能があった。
父はそれを感じさせないように努力しているが、父はその辺不器用だ。時折課される訓練が姉だったらできたんだろうな、と言うものがある。
そんな姉に、少し嫉妬していたのだ。だが、同時に姉貴を想ってもいた。だからこそ、そんな姉貴と自分以外に仲良くしている奴を見た時、許せなかった。聞けば“上級冒険者”だという。
(嘘に決まってる!)
それが本当なら姉以上の才能の持ち主ということになる。そんな存在がいてたまるか、絶対トリックがあるはず。その仕掛けを見破ろうと決闘を申し込んだ。
そして、完膚なきまでに敗北した。それどころじゃない。その大きな背中を家族に見せつけて来た憧れの父と同等の戦いをしてのっけたのだ。
「す、スッゲェ〜!」
憧れないはずがなかった。自分と同い年で、父と同じくらいの実力を持っている。訓練も欠かさない。きっと、いずれは父すら超えていくのだろう。
そして、例え命が危険に晒されようと、その身を盾に戦いに挑むのだ。
知れば知るほど、兄貴への尊敬が深まっていく。
「兄貴!ウィシュタリアに残りましょうよ!」
いつしか家族に溶け込んでいく兄貴に、何度そんな願いをしたか分からない。兄貴は嘘がつかない。ついたとしても顔にすぐでる。
「悪いな、」
そう語る兄貴の顔は本当に申し訳なさそうだった。
「俺はどうしても東に行かなきゃならないんだ。強くなるために…。」
兄貴はそう言っていた。東、それは戦いから離れた土地だ。西の戦い続けることに疲れた者が舞い戻る地であり、今も十分強い兄貴がどうして東に向かうのかまるで分からない。
(きっと、何か秘密があるんすよね…)
兄貴は謎が多い。そもそもなんでオレと同い年の兄貴が、西の方に居たのか。親は、連れは?育ちはどこなんだ?まるで分からない。
どっかの冒険者の子供の可能性もあるが、上級冒険者2人の親ですら自分をここより西の危険地帯には連れて行けなかった。
それだけ、“危険”なのだ。西は。そして、これだけ強い兄貴は偶然や運でそこを生き残って来た訳じゃない。それだけの風格を同い年のはずの兄貴は持っていた。
そして、兄貴は、分かりにくいが、凄く優しい。優しい、とは違うのかも知れない。責任感…?過保護…?たまに兄貴と2人で冒険に出た時、兄貴の距離の取り方、反応する行動に見慣れたものを感じた。
親父と同じなのだ。オレの身に何かあれば一瞬で庇えるような、そんな動きをしていた。
実際、兄貴が不意に弓を構えた時は大抵、俺の気づかないところから魔物が襲って来ていたのだ。
「少しは注意しろ!」
その度に兄貴は怒っていたが、その度に兄貴への尊敬を深めていった。
いつか、兄貴を横で支えられる人間になりたい!それは、生まれて12年、父の背中しか追うことが、見るものがなかったと言えるダインの初めてできた夢だった。




