幕間 その2 新しい弟
上級冒険者の男の子!!!
偶然、お店にやってきた男の子だった。珍しい黒い瞳と茶色い髪で、どう見ても不釣り合いな装備を身につけている。まだちっちゃいのに大したものだ。
でも自分の料理を褒めてくれた、男の子だ。“問題児”そう呼ばれている自分より年下の冒険者がいるのは聞いていた。
このウィシュタリアで、子供というのは限られる。だから、初めて見たその子が“問題児”のウィルだとすぐ分かった。
なんかプンプンしてるけど、年代の近い男の子!ぜひお友達になりたかった。
だと言うのに。
「ダインの兄貴ってどういうことぉーーー?!」
何故か弟を取られてしまったのだ。許せない!と理不尽にユノもプンプンしていたが、
「コレ、食うか…?」
次の日にはユノの好きそうなパンを買ってきて差し出して来た時の顔、実はほとんど起きていたのだ。ちょっと不安そうなウィルのその顔、とっても可愛かった!
「ダインの兄貴なんだから、わたしの弟も同然よね!」
そう思うと寧ろハッピーだったとすら思えてくる。ダインが家族を1人捕まえて来たのだ。
それからの日々は楽しかった。可愛い弟が1人増えたのだ、こんな楽しいことはそうそうない。
けれど、新しい弟は決して可愛いだけの人間ではなかった。
上級冒険者としてその年にして強過ぎる少年は、唯一、両親に混じって戦うことができるのだ。そして、両親ですら引いてしまう戦場で“英雄”に讃えられる活躍をした。
「ガゼルさん、絶対にダインを、ユノを選んでください。じゃないと、俺はガゼルさんを敬うのをやめちゃいますよ?」
あの日の夜、ユノは両親とウィルの会話を聞いていたのだ。
「あ〜、ウィル、下にいたのね!ベットに居ないからびっくりしちゃった。」
あの時、両親に答えを言わせなかったのは、ユノができる精一杯の気遣いだったのだ。ひょっとしたら母は気付いていたかもしれない。
(そんな悲しいこと、2度といえないようにしてやるもん!)
「違う!俺は…!!」
魔物料理大会が、誰かの妨害によって失敗に終わった時、ウィルは強く憤った。妨害した相手以上に、防ぎきれなかった自身を呪う悲痛な怒りだった。
「ウィル、頭撫でてもいい?」
「…いいぞ。」
そうやってウィルは初めて自分に頭を撫でさせてくれた。
そうやって、ユノのために誰よりも怒りを露わにしてくれる少年に、ユノは少しだけ救われた気がしたのだ…。
そうして、ユノはまた一段とウィルへの愛情を強くした。
首無し騎士との戦いの後、貴族に襲われたボロボロになった後のウィル、父を殴り飛ばし、暴言を吐き散らしていた。
「邪魔を、するからだ…!じゃあな!“雷豪”のガゼル!ユノ!二度と俺に関わるんじゃねぇ!!!」
そんな冷たい言葉を投げかけたウィルは、しかし…
「なによッ!あんな顔して!!」
ウィルは、あまりにも悲しそうだった。悲しそうで痛そうだった。あんな顔して、二度と関わるな?!冗談じゃない!
「冗談じゃないわ!!」
絶対に助けてやる。ユノは硬くそう誓ったのだ。




