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第31話 魔物料理大会

「〜開始ーーーーーーーーーーーー!」


「「「「うぉぉぉぉおおおおおおおおおお」」」」


瞬間会場から飛び出す冒険者たち、その中には上級冒険者も少なくない。皆ロープウェイを使っての移動になるが、、


「やっぱこっちに来る奴は少ないんだな。」


ユノ曰く、「肉の硬い魔物が多いのよね〜」とのことで西の荒地に向かうロープウェイを使う人間はほとんどいなかった。


ウィル以外に一組移動してくるのが見えたがそのくらいだ。この大会時は基本的に大会参加者の冒険者以外はロープウェイが使用できない。


それでも急がない理由はない。荒地に向かうとはいえ、悔しいがハウンドを探して駆け回ることはできない。ウィルには制限時間(喘息)があるのだ。


だが、


「チッ、なんかあんま見つかんねえな。」


現在荒地に到着して30分、集まったのは6匹程度だ。妙に少ない気がする。


5時間、ウィルが使える、ユノが全てを制限時間までに作りきるギリギリの時間だ。


まだ余裕はある。とはいえ、魔物の存在に敏感なウィルでなかったらまだ群れの一組程度しか見つからなかった可能性がある。


2時間もあれば集め切れる自信があったウィルは少しペースを上げたくなるが、その衝動を抑える。ウィルの喘息の問題は本当にシビアなのだ。


これ以上ペースを上げれば、間違いなく1時間(喘息)のタイマーが時を刻んでしまう。


だから集中力を上げ、じっくりと見つけたハウンドを1匹も逃さず仕留め切るのだ。


「ん?」


違和感、ウィルの気付けるギリギリの範囲で、何か、変な…


「ハウンドが、殺されてる…?」


その場所に行ってみると、ハウンドの群れ3匹が殺されていたのだ。


全て、“焼死”、魔法装備によるものだ。


「…まさか。」


少し考えてウィルは“妨害”の可能性に辿り着く。あの女だろうか?いや、明らかに自分が疑われると分かっていてこんな妨害をしてくるのか?


「舐めんなよ!!」


機動力はこれ以上上げられない。だが、ペースを上げる方法が無いわけではない。


ウィルの魔物の索敵は、冒険者の中で抜きん出ている。幼い頃から魔物の危険と隣り合わせの状態で育った過去を持つ彼は、生きる過程で魔物の位置を五感以外で感じ取る術を身につけた。


「フゥー」


目を都市で深呼吸をし、立ち止まって集中力を上げる。


(視覚、聴覚、嗅覚すら邪魔だ。)


五感のほとんどを断ち切って集中力を更に練り上げる。


「見つけた!」



〜とある冒険者


「やっすい仕事だぜ!」


中級冒険者の彼は、ギルドを介さない特殊な“依頼”を受けていた。


料理大会に出場し、荒地で“ハウンド”を殺しまくれ。と言うものだ。それだけで数ヶ月分の報酬が手に入るのだ。


今も3匹のハウンドの群れを始末しようとして…


『バヒュッ!!』『バヒュッ!!』『バヒュッ!!』


「「「キャフッ!!!」」」


どこからともなく矢が飛んできて瞬く間にハウンドを始末してしまった。


「悪いな、獲物をよこどり、しちまって。」


現れたのは小柄な少年だ。しかし、その正体にすぐさま思い当たる。


「“問題児”のウィル!」


「そうだ。んで、あんたもハウンドの肉を使うのか?使うんだよな?」


「そ、そうだ。横取りなんてみっともないぞ。」


嘘だ。そもそも組んだ料理人は依頼主から勝手に引き合わされた相手だ。報酬は前金だったし参加のために必要だっただけでもう会わないつもりだった。


「俺ら以外に“ハウンド”の肉を使うなんて珍しいなぁおい!」


「…それはだな。」


問い詰められてくる相手は“上級冒険者”とはいえ子供、まだいくらでも言い訳してやろうと思ったが、


「うるせえ!それ以上ガタガタ抜かすならなんで俺が“問題児”呼ばわりされてるのか、その体に教えてやろうか?!」


相手はもはや聞く耳がないようだ。あの拳に沈んだ冒険者の話は耳にした。依頼には上級冒険者の拳を喰らえなんてものはない。


「ひぃ!勘弁してくれ!そいつらはやるからよぉ。」


情けなく後ずさる男を、しかし対して意に介することなくウィルは3匹のハウンドを抱えると去っていった。


「“問題児”こえええええええ!」


一人残された男は戦々恐々としていた。



「あいつ一人じゃなかったんだろうな。」


先日の泥棒、賄賂を渡そうとして来た女、ウィルたちの獲物であるハウンドの数を減らしている冒険者、とはいえ。


「もう終わったけどな。」


ユノに渡された注射を魔核に打ち込んでウィルは台車の位置へ向かう。台車に今の3匹を積み込んで、これで30匹だ。


所要時間は3時間、あとはロープウェイに乗ってユノのものに獲物を届けに行くだけ、だったのだが…


「ロープウェイが壊れてるってどう言うことだよ?!!」


ロープウェイに台車を引いて来た時、ウィルは驚愕した。


ロープウェイが断線し、使えない、というのだ。


「すみません!すみません!」


と停留所に配備されている男が低い腰で謝っているが、この男が“妨害”役なのか、はたまた本当に断線させた犯人が他にいるのか、考えてもキリがない。


とにかく、ロープウェイは使えない。ということらしい。


妨害の事実があろうが、報告が行こうが、それで大会運営がやり直しをしてくれるとは限らない、というか無いだろう。


「クソが………………」



大会調理ブースにて、


「ウィル君、どうしたんだろう。」


すでに開始から4時間、遅すぎる。ウィルなら2時間で終わるはずの狩猟が既に倍近くかかっている。後1時間以上遅れればユノの調理スピードでは間に合わない。


既に狩り側が到着している組も多い。あのウィルが魔物に負けたとは流石に思えないが、何かトラブルがあったのか、そう思っていると。


「西側のロープウェイが断線?!?!」


大会の運営委員から告げられた事実上の敗北通告、


「そんなぁ…なんとかならないんですか?」


逐次たる想いを込めて運営員に尋ねるが「申し訳ありません。」と意味のない謝罪を繰り返すばかりだ。


そうしている間にも時は進み、狩人側が続々と素材を持ち帰ってくる。


(この大会のため色んな準備や練習をして来たのに…)


家族には頼りたくなかったユノは、自力で狩りにも行ったし、色んな苦労をして来た。特に契約関係のウィルには沢山手伝って貰ったのに…


ユノは一瞬諦めてしまった。だが…


「おい、何だあれ?」


ふと、声が上がった。


「なになに?」


皆が西の方を見ている。何だというのだろう。ユノはしばらく顔を上げれなかったが、あまりに周りの人間が騒ぐのでやっと顔を上げて、みんなが見る方を見ると…


「おおおぉぉぉおおおおおおお!舐めんなぁあああああああああああああああああ!!!!!」


大きな物を抱えた人間が、こちらに向かって駆けている。ウィルだ。


ロープウェイの丈夫な()()()を頭上に抱えて、()()()で駆け抜けてくる。


その威容は相変わらず見るものに凄まじい違和感を与える。


「ウソでしょ?!?!」


一番驚くのはユノだ。あの荷物、ハウンド30匹分だとしたらどれだけの重量か!だが、現にやってのけている。大声を出して道行く人をどかしながら、駆ける駆ける。


「さっっっっすが、ウィル君!!!」



ウィルは駆けていた。駆け始めて、“約1時間”そろそろ発作が出てもおかしくない。だが、駆ける!


「負けてやるもんか!」


どれだけユノが頑張って来たと思ってる!


「負けてやるもんか!」


今日までユノがどんな想いでこの大会のために準備してきたと思ってる!


「絶っっっっっ対に、」


それを、実力じゃない、汚い“妨害”なんかをする奴に!


「負けてたまるかぁぁぁああああああああ!!!」


地を踏み抜く足に、負けてやるかという意思を、込める!



「「「ウソだろぉおおおおおおおお!」」」


上級冒険者をして想定外の速度とパワーで駆け抜けてくるウィルに一部の者たちが焦りを見せる中、ウィルは辿り着いた。


『ドスンッ!!!』


ユノのいるブースの地面に叩きつけられる荷台!


「ハアッ!ハアッ!ユノ、持って来たぞ!待たせて悪かったな!!!」


「さっすが、ウィル君だね!!」


歓喜するユノ、今にもウィルに抱きついて頭を撫でたいが、それは“今”やることではない。


「ヒュー、ッ!!俺は、少し休むぞ!」


流石に疲れたのだろう。ウィルは少し苦しそうだ。


「うん!ここからは、全部!わたしに任せてゆっくり休んで!必ず、優勝をわたしたちの手に!」


「おう…、頼んだ、ぞ。」


そういうとウィルは一瞬でどこかに消えてしまった。


「さあ!ここからはわたしの番!」



「ヒュー、ヒュー、ヒュー、クソッほんとに、ギリギリだった!」


走り続けて1時間を過ぎた時からいつ爆発してもおかしくなかった発作(爆弾)


「我ながら、ヒュー、よく持った、ヒュー、もんだ…」


ブースから離れ、会場から少し離れた物置に入り、一人必死に発作と向き合う。


「ヒュー、ヒュー、ヒュー。」


だんだんと体に力が入らなくなり、立っていられなくなる。体を横にして楽にして、呼吸を整える。


「フー、フー、フー。」


意識を手放しそうになるが、発作の際の失神はそのまま酸素が足りなくなって、“死”に直結する。


(「絶対に気絶するなよ!」)


「フー、分かってるよ。師匠。」


そうして時間をかけて何とか息を整えて、立ち上がる。


(大会は、どうなった…?)


先ほどの大疾走はなんだったのか、重く朧げな足取りで会場へと戻る。調理期間は終わり、評価の時間になっていた。


評価は運営の評論家3名の評価と会場の全列に吸われた200名の得票数で決まる。ちなみに評論家の票数は一人当たり50票あるらしい。


ウィルは参加者なので、試食する資格はない。


ユノのところに戻ろうか迷ったが、体はまだ全開ではないのだ。僅かにでも勘付かれるのは避けたい。


「少し、寝るか…」


そうしてウィルは会場内の離れた席に座ると、今度こそ目を閉じて意識を手放した。


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