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チェックメイトは試合の前に(前編)

EPISODEⅠの主要人物紹介を活動報告の方に移動しました。

 8時43分ゲンは大阪に降り立った。今日、ゲンは依頼のため学校を休んで大阪に来ていた。今回の依頼内容は「今日から明日の10時に開催予定のチェスの全国大会まで依頼人の娘を守る」というもの。その娘の名前は姫野京香(ひめのきょうか)15歳、FIDE(国際チェス連盟)が認定するチェス界の最高位に当たる称号”グランドマスター”を最年少で与えられたスーパー中学生である。依頼時に一緒に写真を渡されているのでどんな人物なのかはわかるのでゲンが今いる駅内で姫野と落ち合うことになっている。

 ゲンは今一度姫野の写真を確認する。整った顔立ちでとても中学生とは思えないほど大人びている印象を受ける。自分がこれぐらいの頃はこんなに大人びていただろうかとゲンは考え込む。

 遠くを見つめながら考えていると、見つめていた先に身に覚えのある少女が鞄を持って立っているのに気がついた。依頼人の娘がそこに立っている。ゲンはすぐに少女のところへ向かい話しかけた。

「アンタ、姫野京香であっているな?」

「はい、、、私は姫野京香ですけど、、、」

「俺はアンタの両親に頼まれて今日から明日の大会までの護衛をするものだ」

 姫野は顎に手を当ててゲンを隅々まで見た後、何かを思い出したかのように手を叩き、その後鉄仮面を被ったかのように真顔になった。

「両親がどんな理由であなたを雇ったかわかりませんが私の邪魔だけはしないでください。明日は大事な試合が控えているので。それでは私はこの後予定があるので」と言って彼女はその場を後にした。

 彼女が最初に向かったのは有名なコーヒーチェーン店。詳しいことはよくわからないが呪文のような言葉で注文をして飲み物を受け取った後、店内のイートインスペースで買った飲み物片手にかじりつくようにパソコンを見ている。

 30分程で店から出てくると次に図書館へ向かった。図書館に着くと一直線に一つの本棚へと向かっていき、4,5冊の本を持って図書館内にある椅子に腰掛けて熟読を開始した。本を読んでいる途中、鞄からペンと紙を取り出し何かをメモし始める。メモを終えるとその本を閉じて次の本を開きメモを取ってまた閉じる。これを持ってきた本全てで繰り返し行い、メモを取り終わった彼女は本を元の棚に戻して図書館を出た。

 現在の時刻は11時を過ぎており、少し小腹がすいてくる時間である。彼女は図書館を出た後、公園に向かい、木で日が遮られているベンチに腰掛けてサンドイッチを食べている。サンドイッチを食べているのを見ているとこちらもお腹が空いてくる。

 ゲンは姫野と別れた後、仕事に取り掛かった。護衛という仕事は必ずしも対象の横にべったりついていなければいけないわけではない。相手からは見られず、何かあったときにすぐ駆けつけることができるように準備するのも立派な護衛である。彼女がコーヒーチェーン店に行ったときは店の向かい側にある裏路地から、図書館に行ったときは図書館利用者に扮して、そして現在はベンチに腰掛けて本を読んでるふりをして彼女の護衛をしている。

 11時半を過ぎた頃、少女は昼食を食べ終わってスマホを見ていたところに電話がかかってきた。電話の相手になんと話していたかわからないが電話が終わると少女は荷物をまとめてすぐに公園を出た。それを追うようにゲンも後を追った。

 30分程歩いた末に少女は目的の場所へ到着した。そこは明日開催予定のチェス大会の会場であった。この会場で少女を待っていたのは中年の男で、少女は男にあってすぐ深々と頭を下げ、二人は話し始めた。会話が聞こえるようにゲンはさり気なく二人に近づき聞き耳を立てた。

「やぁ姫野くん、明日に向けての準備は整っていかい?」

「はい、明日に向けた準備はすでにできています。荒井さんも出場されるので対策もしてきました。」

(こいつが姫野夫妻の言っていた荒井か)

 荒井は、姫野夫妻がこの仕事を依頼する際に言っていた要注意人物で、チェスの最高位に当たる称号”グランドマスター”を与えられており、チェスの強さは折り紙付きである。しかし”荒井が出場する大会の優勝候補は何らかの理由で当日大会に出場しない”という噂があり、荒井が裏でなにかしているのではないかと囁かれている。

「私が出場した大会にはなぜか優勝候補と呼ばれる人が当日来なくてね。君は今回の大会の優勝候補だ、気をつけたほうがいいよ」

 荒井は不敵な笑みを浮かべている。

「大丈夫です。こちらには頼もしい”味方”がいますから」

 姫野はこちらに少し目を向けて荒井に返した。

(まさか気づかれてる?)

 荒井は姫尾と少し話した後、どこかへ去っていった。そして鋭い眼差しで彼女はこちらに向かって歩いてきた。

「あなたさっきからずっと何してるんですか?隠れているようでしたけど私からしたらかなり不審者ですよ?」

「俺は仕事をしているだけだ。」

「そう、これから私は今日泊まる予定のホテルに行きますが部屋に入ってきたりしないでください。

護衛するにしてもホテルの前とかでお願いします」

 と言って怪訝そうな顔をして彼女はホテルへと向かって歩き出したのでゲンもその後ろについていく形であるき出した。少ししたところで彼女は後ろ振り返った。

「アナタ、いつまでついてくるんですか?そろそろホテルつくんですけど?」

「ありがたいことにあんたの両親は俺が泊まる分も出してくれていたみたいでな。俺も今日そこのホテルに泊まる予定だ」

 姫野は内心"こんなやつにそこまでしなくてもいいのに”と両親の行動に少し腹を立てたがホテルに到着したためチェックインを済ませてゲンと別れ部屋のベットにダイブした。



目を覚ますと時刻は夜の19時を回っていた。

「私、ホテルについてすぐ寝ちゃったんだ」

 姫野は今日あった出来事を思い返してみる。お父さんとお母さんが話していた護衛の人”ゲン”とかいう変なやつに朝早く出会った。だけどそんなことは気にしないで大会前のルーティーンのためにまずコーヒーチェーン店に行ったらさっきの護衛の人がこっちを見ていることに気がついた。護衛といってもついてきているとは思ってもいなかったので正直とても驚いた。見ているのがバレないようにチェスの情報収集のために開いていたパソコンに隠れながら護衛の人を観察した。30分しても護衛の人に動く気配がなかったのでこちらから動いてみることにした。次の目的地であった図書館に向かう途中チラチラと確認してみたが護衛がどこにいるのかはわからなかった。見間違ったのかと思いその後は特に気にせず図書館でチェスについての知識の再確認をして昼食を取るというルーティーンに戻った。しかし大会の会場前で荒井と話していたとき近くから視線を感じて目を向けるとそこには護衛の人がいた。その時やっぱり見間違いなんかじゃなかったのだと思い、荒井と別れた後に話しかけた。

 今日あったこと思い返していると誰かが姫野の部屋の扉を叩いた。姫野が扉を開けるとそこにはホテルの使用人が手紙を持って経っていた。

「姫野京香様ですね。とある方からお手紙が届いていますのでお渡しいたします」

 使用人は困惑している彼女に手紙を渡すと会釈してその場を去った。部屋に戻って手紙を見てから眠りについた。

 次の日ゲンが彼女の部屋に行くとそこには誰もおらず、机の上には手紙が置かれていた。


前回から書き方を少し変えてみました。これからも少しづつですが読みやすくできるように改善していく予定です。

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