狙撃手を見た者はいるか
時刻は22時を回った頃、森の中にある廃墟に明かりがついている。廃墟内には複数の人影があった。
その中の一人は手足が縛られた状態で椅子に座らされていた。
「そろそろ話す気になったか小河原。アンタがお前の親父から受け継いだ財産はどこにある?」
一人の男が椅子に座らされている小河原という男に話しかける。
「何度も言うが親父から受け継いだ物はなにもない、さっさと俺を開放しろ。今なら警察には通報しないでやるから」
小河原俊彦は小河原の父であり、投資家で成功を収めている小河原真司から莫大な遺産を受け継いだと言われている。
俊彦本人は「受け継いだものなんて一つもない」と言っているがこの噂は後を絶たない。
現にその噂を信じて俊彦を拉致して遺産の場所を聞き出そうとする輩もいる。
「強情なやつだな。おい、やれ」
男が指示を出すと男の仲間は大きく振りかぶり俊彦の顔を殴った。
「痛いだろ?俺だってこんなことはしたくないんだ、お前がさっさと遺産の場所を言えば済む話なんだ、わかるだろ?」
男の話を聞いても俊彦が口を割ることはなかった。
ミルクは男たちと俊彦のこれまで起きたことをスコープ越しに見て状況を把握した。
「椅子に座らされているのが今回助け出す小河原俊彦ね?」
ミルクは隣りにいた背中に銃を背負った長身の男に話しかける。
「ああ、これから一度本部と連携して今回の作戦を伝える。お前はそのままそこで待機だ、何か動きがあったら無線で連絡しろ」
「わかりました!!森下さん!!」
森下重蔵52歳
犯罪対策組織”X"の一人でミルク直属の上司だ。
”X"の頭脳と呼ばれ、森下が作り出した作戦の成功率は97%を超える。
ミルクが今いるのは廃墟から約300m離れた木に囲まれた小屋。
ミルクは愛用銃レミントンM700のスコープから廃墟の様子を伺っている。
ミルクから少し離れた場所まで行き、森下は携帯を取り出し、とある男に電話をかけた
「今回の作戦はこのようなもので行こうと思ったのですがどうでしょうか」
「お前がそう考えたんだったらそれで大丈夫だろう」
重々しい声が返ってくる
「問題はミルクです。俺があいつの上司になったのはここ最近です。彼女の実力を私は知りません」
「ミルクの実力は見ればわかるよ、瞬きしてると見逃すかもな」
男の言い方に少し疑問を抱いたが森下はそのまま電話を切った。
森下が男に電話をかけている間、俊彦を拉致している男たちに新たな動きがあった。
「くそっイライラさせるな!!さっさと金の場所を言えよ小河原!!」
俊彦が何も喋らないまま時刻はそろそろ23時を回る。
「どうします?こいつ何やっても金の場所を吐来ませんよ?」
男の仲間が話しかける。
「こうなったら最終手段だ!!あれを用意しろ!!」
男の指示にその場にいた男の仲間達は大慌て俊彦に機械をつけ始めた。俊彦につけられた機械から長く伸びた紐状の物体は男がどこからか持ってきた機械に繋げられた。
「準備できました!!」
男の仲間たちは機械の準備が終わるとその場からすぐさま離れた。
その様子を見たミルクはこれから何が行われようとしているのか全く見当がつかず頭の上には疑問符が浮かんでいた。
「いったいこれから何をしようって言うの?」
男たちの行動に終始無言を貫いていた俊彦も流石に眼の前で起こっている異様な光景に口を開いた。
「おい、お前ら俺に何をしようってんだ?まさかとは思うがバラエティーでよく見る電気ショックってやつか?」
俊彦の問に男は答える
「ああ、そのとおりだ!!だがこいつをあまり甘く見ないほうがいいぜ!!こいつは元々バラエティーで使われているやつの威力を3倍にしてあるんだ!!」
そういうと男は手元の機械のスイッチを入れた。
スイッチを入れた瞬間あたりにはまばゆい光が発生、機械の信号を受け取り電気ショックが俊彦を襲った。
「ぐわぁぁぁ」
あまりの痛みに俊彦はうめき声を上げた。
「どうだ小河原、金の場所を言うきにはなったか?」
男は一度スイッチを切りもう一度俊彦に問う。
「だから何度も言っているがそんなもんはない!!」
俊彦は力強く言い放つ。しかしそれを聞いた男はもう一度機械のスイッチを入れ電気ショックが俊彦を襲った。
ピリリ、ピリリ
ミルクの無線に森下から通信が入った。
「聞こえるか?ミルク、そっちの状況は変わりないか?」
「それが、、、」
ミルクは今まであったことを森下に伝えた。
「何!?やつらそんなことを!?」
今まであったことを聞いて森下は少し考えミルクに指示を出した
「これから小河原の救出を始める!!俺の合図でお前は廃墟内にある電気を流している機械を撃ち抜け!!そうしたらあいつらは動揺してその場から少しの間動けなくなるその隙に奴らの足を撃ち抜け!!
今奴らの人数を確認したが5人いるようだ。できるか?」
「了解ー。」
ミルクは無線をそばに置き深く呼吸をし標準を合わせた。
月が雲で隠れ少しあたりが暗くなった
「今だ!!」
森下からの合図が無線から聞こえたその瞬間ミルクは引き金を引いた。
雲が晴れ、月の明かりが廃墟内を照らしたとき、廃墟内の電気は消えて、男5人のうめき声が響き渡っていた。
森下は眼の前で起こった光景を疑った。
(あいつがいた場所からこの廃墟まで距離は約300m、あいつの使うレミントンM700の射撃距離は300が限界だ。だがその300m離れた物体を撃ち抜くには技術が必要になる、、、
しかもその後暗闇の中で正確に5人の足を撃ち抜くなんて、、、)
森下はため息を付く
「どうやらアイツのことを甘く見ていたようだな」
ミルクは引き金を引き弾丸が着弾する前にすでに次の標的へ狙いを定め男たちの位置を確認し5発発射した。
この間わずか10秒素早い動きで男たちの動きを封じたのだった。
今起こったことがわからず俊彦は混乱していたがその後すぐに森下が廃墟内に入り、男たちを拘束し俊彦の救出に成功した。
すべてのことがか終わったとき、すでに0時を回った後だった。
今回はミルクの話を書きたかったので書いてみました。