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夜の街を走れ

元は布団から飛び起き素早く着替え、冷蔵庫に入っている作っておいたおにぎりを口に頬張り必要なものを持って学校へと向かった。元は今年の春から銃政高校に入学した。

学校に向かう途中、高校の友人、不知火真保呂(しらぬいまほろ)稲束翔介(いなつばしょうすけ)に出会った。

「おはよう、元」

「ああ、おはよう」

真保呂と翔介はとても優しい。元が高校に入学してすぐの頃、周りから孤立していた時に話しかけてくれた。共通の話題があって、話も弾み、今ではもう親友である。そして、そんな二人だから元の様子が少しでも違うとすぐにわかる。

「どうしたんだ、元。今日はいつにも増して目の下のクマが酷いぞ。」

「どうせ昨日も夜中までゲームしてたんだろ?」

「ああ、そうなんだよ。」

(この二人には悪いけど本当のことは言えない。ましてや有名企業の一人娘を誘拐犯から助けてたなんて言えるはずがない。そもそも昨日遅くなったのはミルクがしくじったせいだ。)


仕事の依頼内容は有名企業の社長から、殺し屋から娘を守って欲しいと言うものだった。

しかし蓋を開けてみれば一人娘を"殺す"のではなく"誘拐して身代金を頂く"というのがのが犯人の狙いだったらしい。

ミルクが今回の依頼を請け負ったのだが、そこの食い違いがあったために、少しのズレが生じ、モタモタしている間に攫われてしまったのだ。

その結果、犯人を捕えるのに時間が掛かり、寝るのも遅くなったのだ。そもそも元やミルクの仕事内容は殺し屋から人を守るというのがおもな仕事内容で、今回の依頼内容は専門外なのだ。



夜、あの後二人の話によると、授業中はずっと寝ていたらしい。先生に何度か注意されていたらしいが全く記憶にない。


(こちらから言わせれば授業中が一日を通して唯一静かに眠れる時間なのだ。邪魔しないで欲しい。)


元は布団の上で横になるとそのまま仮眠を始めた。

それからかなりの時間が過ぎて時間は深夜11時。

築30年以上の古い一軒家に大きな音を立てながら一人の女が入ってきた。それに気づいた元はズボンと服の間に挟んであったマグナムを取り出し、元がいる部屋のドアの前で様子を伺った。

「ゲン!仕事の時間だぞ!起きろ!」

女はドアを蹴破り中に入った。ドアの前で待機していた元は蹴破って入ってきたせいで大きく吹っ飛んだ。

「なんだゲン、起きてるなら返事ぐらいしろよな。」

「うるさいぞミルク、今何時だと思ってるんだ!近所迷惑とか考えないのかお前は。」

「それよりも今日は組織から直々の依頼だぞ!」

ミルクが言っている組織というのは犯罪対策組織、通称"X"。

コードネーム"ミルク"こと木村玖留未(きむらくるみ)はその組織の一員で、よく元に依頼を持ってくる仕事仲間だ。

ミルクには仕事の時に使っている名前"ゲン"と呼ばれている。元は組織によく仕事を貰ったりしているが組織の人間ではない。あくまで組織から依頼を受けているだけである。

「それで今回の依頼内容はなんだ?」

「今回の依頼内容は有名企業の技術者河口美奈子(かわぐちみなこ)を2週間護衛することだって」

「河口美奈子って言えば、世界で注目されている不正アクセス対策ソフトを開発している人だったな」

世界で注目されている不正アクセス対策ソフト"reflection”は最新のAIを内蔵しており、今まで起こった大規模なサイバー攻撃などをAIに記憶、学習させ、あらゆるサイバー攻撃を防ぐプログラムを実行させるソフトで、多くの情報を持っている国際機関への導入を検討されているなどで有名だ。

「それで、河口を狙っているのはどんな奴だ」

「それが、"Black Spider"って言う組織らしいんだけど、ゲンは何か知ってる?」

「なに!?Black Spiderだと!?」

Black Spider、拠点は主に東南アジアに持っているブラックハッカー集団で、一度の依頼額はハッキングが簡単なものは日本円で数千万、難しいもので数億と値段設定はまちまちだが、金さえ払えば国をも相手にするという危険なハッカー集団だ。

「なるほどな、Black Spiderが河口を狙っている目的がわかった。

 簡単に言えば河口が邪魔なのさ。自分たちの仕事にな」

「どういうこと?」

ミルクはいまいちわかっていなかったようなのでもう少し詳しく内容を伝えた。

「つまりはBlack Spiderの仕事はデータをハッキングするのが仕事だ。

 それを防ぐソフト"reflction"が完成したとすれば商売上がったりってことだ。

 そしてあのソフトを作る技術を持っているのは河口だけだから河口一人で作っている。

 だから河口がこの世から消えさえすれば不正アクセス対策ソフト”reflction”は一生完成することはな  

 くなるってわけだ。」

「だからBlack Spiderは河口さんをこの世から消したいってことだね。」

「そういうことだ。」

ここまでミルクにBlack Spiderの事を話して少し引っかかるものがあった。

「だがBlack Spiderはブラックハッカー集団だ。そんな奴らに河口を殺すことができるすべはないはずなんだが。」

「そう、だから主犯格はBlack Spiderなんだけど

”ボン・リッチ”、

李閑雲(リ・カンウン)”、

”トグロ”っていう三人の殺し屋を雇って河口を殺そうとしているという情報を組織が掴んだの。」

(なるほど、殺し屋を雇ったのか。Black Spiderはハックすることだけなら右に出るものはほとんどいないがその他はてんでだめだから、Black Spiderが人を殺そうとしていることが信じられなかったがそれなら合点がいく。)

「いま河口さんはここから車で30分程のところにあるホテルで待機中らしいわ。今から行くわよ。外に組織の車停めてあるから。」

「少し待ってくれ、準備する」

「わかった」と言ってミルクがそのまま部屋から出ようとしたので、ゲンは「ドア、直してくれよお前がぶっ壊したんだからな」と言うとミルクは「いつか直す」と言ってそのまま部屋を後にした。

そんなドアが外れた部屋でゲンは使い込まれた黒い中折れ帽、闇に溶け込みやすい黒いスーツを着て、マグナムをズボンと服の間に挟み家を出た。

家の外で待機していた車にはすでにミルクが乗っており、ゲンも乗り込んだ。ゲンが車に乗り込むと、黒光りする車は目的地に向かって走り出した。



車内にてミルクから今回の依頼の詳細な話を聞くことにした。

「それでなんで二週間なんだ?狙われているなら危害が及ばないようになるまで護衛をするんじゃないのか?」

「河口さんから言われたんだけど、今作ってるソフトが後二週間で完成するらしいわ。だから完成さえしていしまえばどうとでもなるからその完成までの二週間守ってほしいらしいわ。」

「なるほど、それで殺し屋の方はなにか情報はないのか?」

「トグロだけはほとんど情報がないんだけど残り二人は大体わかっているわ。

まず”ボン・リッチ”、彼はアメリカ出身で陸軍に入っていたわ。

主に使用するのは自動式拳銃(オートマチック)のSIG SAUER M17で、アメリカではかなり有名な殺し屋で裏社会で生きる人間で知らない人はいないぐらい有名よ。

次に"李閑雲"、彼は中国出身で、彼が独自に編み出した"死殺狼牙(しさつろうが)拳法"を使う拳法の達人だわ」

二人の殺し屋の情報の他に、ミルクは二人の写真をゲンに渡した。

「トグロの情報が何もなかったのは少し妙だな、なんの情報もないやつをBlack Spiderが雇うとも思えん。こいつが一番厄介かもしれない」



ミルクと今回の情報整理をしていると目的のホテルについたようで、車がブレーキを掛けた。

「ついたよゲン、ここに河口さんがいるわ」

河口さんがいる部屋の前まで行き、ミルクは扉を叩いた

「河口さんのお部屋であってますでしょうか、ミルクです。河口さんの護衛に参りました。」

ミルクが丁寧な口調で尋ねると、ゆっくりとドアが開き中から赤縁メガネを掛けて伸びた髪の毛を首の後ろで結んだ女性が出てきた。

「あんたが河口だな」

「はい、そうですけどあなたは誰ですか?」

「俺は、今回ミルクと同じく護衛の依頼を受けることになったゲンというものだ」

ゲンのぶっきらぼうな言い方に河口は少し戸惑っていたが、ドアの前で立ち話もあれだからとゲンとミルクは河口が泊まっている部屋の中に入った。

この三人の様子を盗み見る男がいた。



「なんであんたは俺達に今回依頼したんだ?」

二人が部屋に入り、扉が閉まるとすぐにゲンは河口さんに話題を振った。

「実は依頼したのは私ではないんですよ。」

「それはどういうことですか?」

ミルクが河口に疑問をぶつける。

それに対して河口が言う話によると、以前にも河口は変な男に付け回されたりされたことがあったようで、そのことを気にかけた会社の社長がソフトが完成するまでの間、護衛を任せる人を探していたようで、今回偶然ミルクが入っている組織”X"を見つけたので依頼したとのこと。

「私は大丈夫だと社長に入ったんですけどね。

 これでも私昔は柔道を習っていたことがあったんですよ。

 いざとなったら投げ飛ばせばいいんですよ。

 それに護身用の催涙スプレーだって持ってますし。」

納得仕掛けたミルクに対してゲンは「あなたは何もわかっていない」と反論した。

「あなたは何もわかっていない。

 今回あなたのことを狙っているのはそんじょそこらのチンピラじゃないんだ。

 歴とした殺し屋だ、そんなものが通用する相手ではない。」

このゲンの強めの口調で言った説じみた話に河口は怒った。

「あなた見たところかなり若いわよね、私はあなたなんかより長生きしてるの!!

 若造の分際で私に指図しないでくれる!!

 今すぐこの部屋から出てって!!」

河口に言われたようにゲンはすぐに部屋を出て、そのままホテルの近くにあるコンビニに飲み物を買いに行った。

そのあとゲンはコンビニで買った好物のあたりめと炭酸飲料を持ってホテルの下で待機していた。



ゲンが部屋を出て三時間ぐらい立った頃、ホテルの下で待機していたゲンは少し仮眠を取っていた。

そんなとき突然ミルクから電話がかかってきた。

「どうしたミルク?なにかあったか?」

「それが、私が少しトイレを借りている間に書き置きを残して河口さんがいなくなったの!!」

ミルクの焦った声にゲンは嫌な汗を掻く。

「書き置きにはなんて書いてあった?」

ミルクの話では、書き置きには『こんなホテルじゃソフトを完成させることはできないから研究施設に戻ります』と書いてあったようで河口は会社の研究施設に向かったようだ。

「くそっ、殺し屋に狙われてるって言っただろ!!

 ミルク、会社の研究施設はここからどっちの方角だ?」

「ホテルの出口を西に向かった方にあるわ。」


(ホテルの西側は治安が良い方ではないし夜は大通りは明るいが少し小道に入るとかなり暗くなる)


「俺は今から河口さんを追いかける。

 ミルクはホテルの西側にある図書館前に車を待機させるように組織に連絡してくれ。

 そこに河口さんを連れて行く、そこで合流だ。」

「了解!!」

ミルクに指示を出した後、ゲンはホテルの西側に向かって走り出した。



ゲンとミルクが行動し始めた同時刻、河口は研究施設に向かって大通りから少しズレた小道を歩いていた。 

「ここの道、研究施設に行くまでの近道なんだ。」

河口さんはスマホの地図アプリを頼りに暗い小道を歩いていた。

「そこの若い人、こんな薄暗いところになにか用でもあるのかい?」

暗がりからフードを被った男が河口さんに話しかけてきた。

河口は突然のことで少し驚いていたが冷静にフードを被った男に返答した。

「いいえ、ここに用はないのよ。

 この先にある場所に行きたくてね。」

「そうかい、ここには要はないのかい。でも、、、」

というと男はフードを取って言った。

「俺はあんたに用があるんだがな」

男は河口の腕を掴んで来たため、河口は男を投げ飛ばそうとした。しかし

「どうして!?」

河口は男を投げることは出きず、逆に河口は男に投げ飛ばされた。

「何をしようとしたのか知らないけど、

 あんたみたいなひょろっとした女に俺を投げ飛ばすことはできないぜ。」

そう言うと男は懐から拳銃を取り出し河口に銃口を向けた。

「アンタには恨みはないが死んでもらう、これも仕事なんだ許してくれよ」

男は河口に向かってそのまま引き金を引こうとしたその時だった。

「頭を下げろ!!」

どこからか河口に向けて言った声が聞こえた。その声に従うように河口は頭を下げた。

「ぐわぁっ!!」

河口の後ろから発射された弾丸は男の拳銃にあたり、拳銃を男の後方へ弾き飛ばし、その衝撃で男は声を上げた。

「河口!!こっちだ!!」

河口が声の方を向くと、そこには先程ホテルの部屋から追い出したゲンが経っていた。

なぜこんな小道にゲンがいるのか疑問を浮かべた河口に対してゲンは河口に「急げ!!」と声を荒げて言ってきたので河口はゲンに素直に従って、ゲンの方へと走った。



先程の小道から少し離れた場所で一度ゲンと河口は立ち止まり、走って浅くなっていた呼吸を整えた。

「ここから少し先にある図書館に仲間の車を止めてある。

 今からそこまで走るが大丈夫か?」

「はい、少し休んだので大丈夫です、それにしてもあの人何なんですか?

 突然私の腕を掴んできたから投げ飛ばそうとしたら逆に投げ飛ばされるし、拳銃は持ってるし。」

今起こっている状況がうまく飲み込めず河口は困惑している。

ゲンにあの男がなんなのか説明を求めてきた。

「さっきも言っただろ、あれがお前のことを狙っている『殺し屋』だよ。」


(あの殺し屋、ミルクに見せてもらった殺し屋の写真の男、ボン・リッチだ。

 河口が一人になるのをずっと狙っていたのか)


先程の男について考えていると河口の腕を弾丸がかすめる。河口は弾丸がかすった腕を抑えてその場でうずくまった。

「チッ、外したか。だが次ははずさねぇぞ。

 そいつの心臓を撃ち抜いてやるよ。」

「おい!大丈夫か?」

「私は大丈夫です。

 でも、ここからどうすれば」

「あんたは先に図書館へ向かってくれ。こいつは俺がなんとかする。」

河口さんはゲンの指示に小さく頷き、図書館へと走り出した。



「ボン・リッチ、お前の相手は俺だ、銃を構えな。」

「お前、俺に銃の腕で勝てるとでも思っているのか?

 無理は言わない、やめておけ」

笑いながらリッチは言う。しかしそれで食い下がるゲンではない。リッチに対してさらに挑発する。

「それはどうかな、俺からすればお前なんて素人と同じさ」

「わかった、そこまで言うならやってやるよ。

 蜂の巣にしてくれるわ!!」

リッチは怒りのあまり顔が真っ赤になり銃を発砲しながらゲンとの距離を縮めた。

しかし、怒りのせいで照準が定まっておらず、ゲンに当たることはない。

ゲンはリッチとの距離をうまくとって銃弾をかわし、リッチの球切れを待った。



カチッ、カチッ、カチッ

「くそ、球切れか!!」

球切れのため銃を撃つのが止んだその一瞬のすきを突いてゲンは二回銃を発砲。

その二発はちょうどリッチの真上にあった吊り下げ看板の吊るしてある部分を撃ち抜き落下。

落下した看板はそのままリッチの頭を直撃し、その衝撃でリッチは気絶した。

「危なかった、だが河口を守ることができたから、良しとするか。」



いつ目を覚ますかわからないリッチからゲンは距離をとり、携帯を確認するとミルクから無事河口を保護したとのメールが届いていた。

ゲンとリッチの初戦はゲンの勝利で幕を閉じた

書いていたら思ったより長くなってしまいました。

読みづらいとは思いますが少しずつ改良していくのでご了承ください。

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