弾丸は宙を舞う
この小説に興味を持っていただきありがとうございます。
一般の人間は寝静まった深夜、薄暗い郊外に銃声が響いた。そんな郊外に人影が二つ。一つは白色のドレスを着た幼い少女。もう一つは目出し帽を被り拳銃を持った大男、おそらく誘拐犯だろう。一見、幼い少女を誘拐犯が追いかけているように聞こえるが真実は違う。誘拐犯はどこからか飛んでくる弾丸から逃げており、少女は突然の出来事に混乱しているだけである。
「クソ、どうなってやがる!!このガキを誘拐してガキの親から大金を巻き上げるはずだったのに、どうしてこうなった!!」
誘拐犯は叫ぶ。思い通りにならず腹が立っているようで、手を強く握りすぎて血が出ている。
「こうなったらこれでどうだ!!」
誘拐犯はそういうと幼い少女を捕まえ少女のこめかみに拳銃を突きつけた。
「おい!!さっきから発砲してきてるやつ!!このガキがどうなってもいいのか!!撃つのをやめないとこのガキを撃つぞ!!」
誘拐犯の脅しで宙を舞っていた弾丸は止んだ。そして暗がりの中から一人の男が出てきた。使い込まれた黒い中折れ帽、闇に溶け込みやすい黒いスーツを身につけ、その手には黒光りする6発装填型のマグナムが握られている。
「お前か!!さっきから俺の邪魔をするやつは!!」
スーツの男は言葉を返すことはない。
「お前の持っている銃をこっちによこしな!!」
しかしスーツの男は反応しない
「お前聞いているのか!?」
誘拐犯が声を荒げたその時だった。スーツの男は0.5秒という速さで誘拐犯が持っていた拳銃をめがけて発砲し、拳銃を後方へ弾き飛ばした。拳銃を弾かれた衝撃で誘拐犯は腕を抑えてうずくまり、その隙に少女は誘拐犯のそばから離れた。
「てめぇなにしやがる!!」
誘拐犯は面を上げ再びは声を荒げた。しかしそこにスーツの男はいなかった。しかし
「少々黙ってくれねぇかね。今は夜中なんだ、近所迷惑になるだろう。まぁこんな郊外に家なんかないんだが一応な。」
突然背後からした声に誘拐犯は慌てて後ろを振り返った。そこにはあのスーツの男が銃を向けて立っていた。その光景が理解できず誘拐犯はただその場でスーツの男を見つめることしかできなかった。
「質問だ。俺はあまり殺しはしたくないんでね、あの少女に手を出さないって言うならお前さんをロープでくくってここに放置するぐらいにしといてやるんだがそれでも少女に手を出すって言うならお前の頭に風穴が開くがどうする?」
「ふざけるな」と言おうとした犯人の頭に銃口を強く押し当て威圧的で殺意むき出しでスーツの男はこう続けた。
「お前に無駄口をたたけと言った覚えはないぞ。もう一度問う。ロープでくくられるか、頭に風穴が開くか、どちらかを選べ。おまえに『どちらもNo』という選択肢はない。」
事態の深刻性がわかったのか、誘拐犯はすっかり戦意をなくし、スーツの男に怯えきった声で「ロープでくくられる方で」と言った。
誘拐犯をロープでくくった後、スーツの男は誘拐されていた少女に駆け寄った。少女は先程の誘拐犯とのやり取りを影で見ていたようで少女も怯えきっている様子だった。そんな少女に対してスーツの男は優しい声で喋りかけた。
「怯えなくていい。少なくとも俺はお前の味方だ。俺はとある人からの依頼であんたのことを守るように言われている。まぁいわゆるボディーガードだ、安心しな。」
少女はまだ少し怯えているが敵でないことがわかったのか緊張の糸が切れてその場で泣き出した。この少女の行動にスーツの男は動揺し、困り果ててしまった。
「あ〜あ、"ゲン"ってば女の子泣かせたの?サイテー。」
スーツの男を批難しながら近寄ってきたのは頭にヘルメットを被り、黒いレザースーツを着ている女。その女はスーツの男"ゲン"の横を通り過ぎて泣いている少女に話しかけた。
「大丈夫よ、お嬢ちゃん泣かないで。私もこのおじさんもあなたの味方よ。」
そう言うと彼女は被っていたヘルメットを脱ぎ顔を出した。
「お姉さんとおじさんは誰?」という少女の質問にゲンは訂正を入れた。
「おじさんというのは違うぞ。これでも俺はまだ10代だからな。そこのところを間違えないでくれ。あと"ミルク"も俺のことをおじさんと言うな。」
この訂正に対してミルクと呼ばれた女は「それは違う」と言って、言い返した。
「あなたの顔しぶすぎてとても10代には見えないわ。そりゃおじさんって言われてもしょうがないわよ。しかもあなたが被ってる帽子のせいでさらに顔がわかりにくくなってるんだもん仕方のないことでしょ?」
「なんだと?」、「本当のことを言ったまでよ!」と言い合いをしている二人を見て、二人への警戒がなくなった少女は言い合いしている二人を見ていて可笑しくなったのか笑い出した。その光景を見たゲンとミルクは少女に笑顔が戻ったのを確認してホッと胸をなでおろした。
「泣いて笑って、忙しいやつだな。」
「いいじゃない。子供はそんなものよ。」
と言って二人も顔を見合わせて笑った。
「じゃあ私はこの子を家へ送り届けるわ。そっちの誘拐犯はよろしくね。」
「わかってるさ。こいつはこのまま警察にでも突き出しておくよ。」
そう言ってミルクは待機させていた仲間の車に少女と一緒に乗って、走っていった。そしてゲンは誘拐犯をこの郊外から一番近い交番に連れていき、身柄を引き渡した。
最初なので今回は短めにしました。まだまだ文章を作るのは下手くそですが頑張っていこうと思います。